偉大な“新記録”達成まであと1試合に迫った遠藤(中央)。横浜戦でも妙技を連発し、チームを快勝に導いた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大

[J1リーグ第1節]横浜 1−2 G大阪/2月23日/日産ス

 40歳にして到達した大記録にも、飄々とした口調で想いを明かした。

 日曜日のJ1リーグ第1節、横浜F・マリノスとのアウェーゲーム。ガンバ大阪の元日本代表MF遠藤保仁はスタメンに名を連ね、新記録となる21年連続での開幕戦先発出場を果たした。そしてこの日達成したJ1通算631試合出場は、元日本代表GKの楢崎正剛氏と並ぶ史上最多記録だ。

 はたして次節のベガルタ仙台戦(3月1日)で単独首位の金字塔を打ち立てるか。本拠地のパナソニックスタジアム吹田は、鉄人の偉業達成を称える一大セレモニーとなるだろう。ちなみに横浜戦で公式戦出場は1014試合目となり、国際Aマッチ出場は152試合。どちらもそう容易くは破れない、日本人最多記録である。

 待ち受けた大勢の報道陣を前にヤットは、「これだけ試合に出る大変さは、僕と正剛さんにしか分からない。正剛さんに並ぶことができて光栄です」と真摯に語り、「まだまだ充実したサッカー人生を送りたいし、いい準備をしていかないと、若い選手も出てくるのでね。それに負けないようにやっていきたい。サッカーが好きだし」と続けた。

 横浜戦で、90分フルタイムを駆け抜けた名ボランチ。的確な散らしのパスが冴えれば、アンカーとして周囲を巧みに使いながらボールを絡め取るなど、攻守両面で異彩を放った。なにより興味深ったのは、前半28分の場面だ。プレーが途切れた際、さっとタッチライン際に駆け寄った遠藤は水分補給をしながら、宮本恒靖監督に身振り手振りを交えてなにやら語りかける。

 進言したのはシステム変更。こんな内容だった。

 
「相手の9番(マルコス・ジュニオール)の運動量が多くて、彼が横に動くので、そこに僕が付いて行ったら(真ん中の)スペースが空いてしまう。だったら井手口(陽介)もいたほうがいいとなって、(4−3−3から4−2−3−1に)システムが変わったんです」

 試合中になかなか指揮官に切り出せるものではないが、そこは長きに渡って僚友として苦楽を共にした間柄。分厚い信頼関係で結ばれている。遠藤は「言えるか、言えないかは勇気の問題。去年とかは自分たちで判断するのが少なかったんで、選手からもっと発信してもいいと思っていた」と言い、宮本監督は「ピッチ内でこういう風に思うということを選手から伝えてもらった。こうやりたいんだと。それに対してゴーサインを出しました」と振り返る。

 中盤での役割分担をより明確にして守備を立て直したチームは、その後2点目を奪ってリードを広げた。
 遠藤自身は「40歳ですから体力的に厳しいところはあるし、フルタイム出場だったんで疲れた」と冗談めかして本音を漏らしたが、その“頭脳”はG大阪においていまだ、代えの利かない拠り所だ。

 試合後の記者会見で宮本監督は、「ヤットがピッチにいることで試合が落ち着くところがある。今日もそれを存分に発揮してくれた。90分間は難しいかなと思ってましたけど、彼なりにしっかり試合を締めて、経験をもって試合を進めてくれた」と労った。そして宇佐美貴史は「一緒にやってるときは分からないんですけど、ヤットさんの場合はピッチからいなくなったときにその存在の大きさを実感する。やっぱりリズムが変わりますから。僕ら前の選手は本当にやりやすい」と称える。

 J1王者相手の快勝劇で、次から次へと妙技を披露し、日本中のサッカーファンを唸らせたヤット。そのプロ魂と人懐っこいパーソナリティーもまた、プロデビュー当初から変わっていない。

取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

【遠藤保仁PHOTO】栄光と苦難のキャリアを厳選フォトで振り返る