セキュリティの確保などのハードルにより実現には至っていない

  高速道路の通行料をノンストップで支払うことのできるETC(エレクトリック・トール・コレクション システム)が日本で広く使われるようになったのは21世紀になってからだが、いまやETCユニットを装備していないクルマは、だいぶ少数派となっている。

  運用上では安全のために料金所では速度を落とすように言われているが、システムの能力としては、それなりの高速走行でも料金の収受ができる高性能なものであり、その決済システムを道路通行料以外にも活用しようという声は、導入初期から存在していた。

  たとえば、ガソリンスタンドやコインパーキングでの支払いなどに利用すれば、より便利になるという具体的なアイディアも提示されていた。ただし、高度なシステムゆえのセキュリティの確保などさまざまハードルがあり、実現には至っていない。

  しかし、そうした状況に変化が生まれている。キャッシュレス社会を推し進める政策もあって、令和になってからETCの多目的利用は大きく動き始めているのだ。

ワンストップ型実証実験が始まった!

  令和元年11月11日、国土交通省は「ETC多目的利用の利用に関する要綱」を定めた。これによりETCの多目的利用のガイドラインが生まれ、その活用の広がりが期待されている。

  そのキーとなるのが「ネットワーク型ETC技術」だ。国土交通省の定義によると『遠隔地に設置したセキュリティ機能を有した情報処理機器と駐車場等における複数の路側機を通信ネットワークで接続し、 路側機で取得した情報を集約させて一括処理することで、ETCカードを用いた決済の安全性を確保する技術』のことで、ETCカードの情報を使ったキャッシュレス決済につながるものだ。

  この技術を利用した社会実験が、3月22日から神奈川県の本町山中有料道路ではじまる予定だ。この実験で注目すべきは「ワンストップ型ETC」と呼ばれる、ETCを利用した新しいキャッシュレス決済システムが使われていること。

  通常のETCはノンストップで料金所を通過するが、ワンストップ型は名前の通り、料金所で一旦停止が必要となる。

  ノンストップのETCに対してメリットがないようにも思えるが、前述したネットワーク型 ETC 技術を利用することで、送受信機の設置などの初期費用や維持管理費用が安価になるというのがメリット。このワンストップ型であれば、コストやセキュリティに面で二の足を踏んでいた事業者もETCを利用しやすくなることが期待できる。

  キャッシュレス化を後押しする風潮と、ネットワーク型ETCによる導入コストの低減により、2020年はETCシステムを利用した決済が拡大することだろう。