古き良き時代の新聞では、重要な調査活動や、話題性には乏しいが社会に不可欠なトピック(教育、環境など)にかかる費用を支えていたのは、スポーツやライフスタイルのページだった。そしていま、報道活動にあてるための助成金や寄付金を慈善団体に求める営利新聞が増えている。

ガーディアン(The Guardian)もそんななかの一紙で、一部の報道プロジェクトへの資金提供を読者に呼びかけている。同紙は現在、複数の慈善団体(ビル&メリンダ・ゲイツ財団[Bill & Melinda Gates Foundation]、バンド財団[The BAND Foundation]、ウィス財団[The Wyss Foundation]など)から資金提供を受けて、国際開発や生物多様性など、さまざまなトピックを報道している。シカゴ・トリビューン(The Chicago Tribune)は昨年秋、ピューリッツァーセンター(The Pulitzer Center)から助成金を獲得し、それを使って、気候変動がエリー湖の産業と生態に今後どのような影響を及ぼすのかを読者に伝えた。

こうした助成金のほかにも、一部の新聞は人材を雇い、彼らに慈善団体とのこうした関係を築くという特別な任務を課すようになった。カルフォルニアの新聞社であるマクラッチー(McClatchy)は昨年11月下旬、同社初のコミュニティーファンディング担当ディレクターにローレン・ガスタス氏を任命。カリフォルニアとアイダホ、ワシントン各州のエディターも兼任するガスタス氏は、2020年の目標のひとつとして、アメリカ国内8カ所にニュースラボを発足するのに必要な財源の獲得を掲げている。これらのラボは、マクラッチーが発行するフレズノ・ビー(The Fresno Bee)が昨年10月にオープンした、教育に焦点を当てたラボに似たものになる見込みだと、同氏は話す。各ラボには最低4人のレポーターが配属されるという。ガスタス氏はまた、これらマーケットのニュース編集室に、報道プロジェクトのための資金を地元慈善団体から集める方法も教えている。

慈善団体による支援に興味を示している営利新聞は、マクラッチーだけではない。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は昨年6月、シアトル・タイムズ(The Seattle Times)で幹部を務めたシャロン・チャン氏を新設の慈善団体担当バイスプレジデントに任命したと発表した。同氏に託された役割は、大手慈善団体とパートナーシップを構築し、財源を確保することだ。ソルトレイク・トリビューン(The Salt Lake Tribune)は非営利収入を求めて、さらに踏み込んだ策に出た。同社は昨年10月、米内国歳入庁の承認を獲得して、非営利団体への転身を果たしたのだ。

営利を目的とするその他の出版業界の経営陣も、報道プロジェクトための助成金を独自に集めるように、自社のレポーターやエディターに奨励している。ノースカロライナ州ローリーを拠点とするニュース&オブザーバー(The News and Observer)は先日、レンフェストインスティチュート(The Lenfest Institute)が実施するプログラム「テーブルステークス(Table Stakes)」への参加の一環として、助成金を求めるジャーナリストやエディターをサポートするためのガイド(全11ページ)を発表した。

ここ数年で、着実に増加

助成金や寄付金の確保には、特別なスキルが要求される。そしてこれにより、少なくとも一部の非営利団体のニュース編集室では、レポーターたちのあいだに利益相反のおそれに対する不安が形成されてきた。一方、新聞および慈善団体の幹部たちは、ジャーナリズムを支えるための寄付金が増えることを期待していると、米DIGIDAYの取材に対して述べている。また一部のエディターは、財団から支援を集める行為を実験やプロジェクトをサポートするための主な手段とみている。

「宣伝部門や流通部門ばかりに頼って会社の未来の進路を決めているような気がして、居心地が悪かった」と、アリゾナ・デイリー・スター(The Arizona Daily Star)のエディターを務めるジル・ジョーデン・スピッツ氏は語る。同紙は2016年、報道プロジェクトの資金を調達するための一手段として、さまざまなコミュニティーグループとの協働を開始した。「資金を得るために役立つ方法に思えた。継続するだけではなく、新しいポジションや新しいプロジェクトの資金を調達できる手段がなかったからだ」。

アメリカ国内における寄付金の提供者や使い道を追跡する機関誌、ギビングUSA(Giving USA)でマネージングエディターを務めるアンナ・プルイット氏は、ジャーナリズムやニュース(それが営利目的の出版物であれ、非営利であれ)をサポートするために、非営利の資金提供者がいくら出しているのかを詳しく調査している研究者はほとんどいないと話す。理由のひとつは、こうした寄付金に対しては多種多様な分類が可能だからだという。ギビングUSAでは、ラジオ放送局への寄付を芸術や文化、人文科学に対する援助と分類することもあれば、ジャーナリズムスクールの報道プロジェクトへの寄付を教育を支援するための贈与と分類することもあると、プルイット氏は述べる。

ただし、ジャーナリズムを支援するための寄付金の総額は「ここ数年」着実に増加しているという。理由のひとつには、助成金の申請件数が増加していることがあげられる。ピューリッツァーセンターでシニアエディターを務めるトム・ハンドリー氏は、サポートを求める営利目的のニュース編集室や幹部の数はここのところ増加傾向にあると話す。同センターが2019年に提供した助成金188件の大半は、個々のプロジェクトのレポーターもしくはエディターに与えられた。こうした助成金の一部は、非営利または営利目的の出版物に記事を発表する予定のフリーランスのレポーターに与えられたという。

特別なスキルが要求される

助成金を申請したり、非営利団体のネットワークを迷うことなく進んだりといったことには、リポーターやエディターとしての活動からは習得できない、異なったスキルセットが要求される。とはいえ、メディア企業で働いたことのないグラントライター(助成金申請書の執筆者)や非営利開発のプロが、ニュース企業で自身のスキルを容易にいかせるかというと、必ずしもそうではない。

アリゾナ・デイリー・スターのスピッツ氏は、資金調達のエキスパートにメディアの倫理的・実務的な特異性を説明するのに膨大な時間を費やさなければならなかった。そのため、自分でやったほうが簡単だと思うようになったという。「この仕事をこなせる人材は見つかったが、この仕事ができて、なおかつジャーナリズムのバックグラウンドがある人材は見つからなかった」と、同氏は語る。

歴史を振り返ると、助成金や寄付金の多くは非営利のニュースパブリッシャーに与えられてきた。理由のひとつは、一部の慈善団体は営利目的の企業に寄付することを禁じられているためだ。この障害を避けるために、ガーディアンは2017年、独立した非営利部門のtheguardian.orgを立ち上げた。

いまのところ、一部には、リソースをめぐって争わなければならなくなることに不安を抱いていない非営利のニュースパブリッシャー幹部もいる。「彼らの姿勢は『来るものは拒まず』であって『どちらか一方』ではないと、私は思っている」と語るのは、非営利のテキサス・トリビューン(Texas Tribune)でCEOを務めるエバン・スミス氏だ。「このようなところには潤沢な資金がある。『手元には2ドルしかないが、この2ドルをどのニュース編集室に寄付しようか?』といった類の話ではない」。

予算や計画に根付くのか

はっきりしないのは、寄付金や助成金がニュースパブリッシャーの予算や計画のなかにいつまでも根づくのかどうかという点だ。ひとついえるのは、多くの場合、助成金や寄付金がカバーするのは短期プロジェクトである。たしかに、一部の出版企業は複数年にわたるプロジェクトへのサポートを確保してきた。だが、その一方で、非営利基金の助成金の大半がサポートするのは、期間わずか数カ月のプロジェクトだ。ガーディアンは今年1月、ロックフェラー財団が6年にわたって支援してきたプロジェクト、ガーディアンシティーズ(Guardian Cities)を終了すると発表した。ガーディアンのある関係者は、単一プロジェクトに対して6年にも渡って行われてきたこの資金提供を「ほとんど先例がない」と述べている。

マクラッチーのガスタス氏によれば、同氏のチームは自分たちの仕事を、自社出版物の持続可能性の実現に向けた橋を作ることと認識しているという。「これはその橋の一部なのか、将来のモデルの一部なのか? この質問への答えを出したとは、私は思っていない」と、ガスタス氏は語った。

Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)