加入3年目を迎える安田。チームの攻撃陣を引っ張る存在だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 東京都社会人サッカーリーグ1部3年目を迎える2020年の南葛SC。新たに就任した島岡健太監督は、クラブの代表である高橋陽一氏が描く漫画『キャプテン翼』に出てくる有名なフレーズ、『ボールはともだち』にもなぞらえ、「ワクワクするサッカー」を方針として掲げた。

 では一体、具体的にどのようなアプローチで「ワクワクするサッカー」を実現しようとしているのか。チームが始動して間もないタイミングで練習場にお邪魔し、そのヒントを探った。

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 宿願の関東サッカーリーグ昇格を目指す南葛SCの2020年の取り組みが、徐々に具体化してきた。現在は、東京都社会人サッカーリーグ1部開幕を前に東京カップ(東京都社会人サッカーチャンピオンシップ)を戦っている。一次戦は昨年末から始まっており、初戦となる2回戦を勝利した南葛SCは1月26日に行なわれた3回戦から島岡健太新監督が指揮を執り始めた。

「今はチームとして“何か見えてきた”というより、自分たちが“何を見るか”の方を重視しています。同じ物差しを使ってみんなの“目”を揃えていくのが大事だと考えているので」

 そう島岡監督は言い切る。前回のインタビューで語っていた「みんながワクワクするサッカー」実現のために必要となる“止める・蹴る・運ぶ・受ける”の絶対的な技術。そして目で繋がること。それを具体的に落とし込んでいくのに、まずやろうとしていることが「同じ物差しを使ってみんなの“目”を揃えていく」=統一した基準を設けることだ。しかも、かなり厳密に。

 島岡監督が言う技術とは「ボールをどれだけ思うように操れるか」ということだ。

「そこを厳密に。今までなんとなくできていたことを『いや、それではできたことにならないよね』と指摘する。そして、なんでできていないかを示していく。それをどれだけ伝えられるか、変えられるか。そこが僕のトライだし、責任だと思っています」
 
 もっと具体的に知りたくて、南葛SCの練習を見に行った。この日の練習で盛んに響いていたのは「正確に!」という言葉だ。特に、ボールを止めることと運ぶことに対して頻繁に声がかかる。ボールを止めるとは「ボールが静止していること」。トラップしたボールが少しでも動いていたら、それは止めたことにならない。

 ボールを運ぶとは「ボールが足元にあり、次のアクションに向けコントロールできる状態で前進すること」。ボールが身体から離れて次のアクションが行なえない状態は、単にボールを追っていることになる。

 そこに「なんとなく」はない。正確にできるかできないか、2つに1つだ。基準を厳密にしなければならない理由がある。正確さは次のアクションへ的確かつ速く移行するのに必要不可欠な技術、つまりこれから目指すチームの強みの前提になるからだ。ここを疎かにしては、その先がすべて不安定なものになってしまう。

「ボールを止める。運ぶ。これらができれば、いつでも誰でも思ったところに行けるし、出せる。これらができれば、受け手も相手が見ていないものを見ながら、ここというタイミングで合わせられる」

 言葉を明確に定義づけすることは、個々の微妙な認識のズレを矯正することにもつながる。明確な基準がチームの共通認識になることで、あるプレーに対してそれがトライなのか、ミスなのかがはっきりと分かる。だから自分も周囲も指摘をしやすくなる。結果として声も出やすくなる。

 新シーズンから新たにキャプテンとなった東大樹は言う。
「これまでは選手の個の特徴でなんとかしようとしていたところもあったのですが、正確に止める、蹴るといった言葉の定義づけがあることで、チームとしての統一が図れるんです。この方法はすごく勉強になっています」