AFCチャンピオンズリーグのグループリーグ第2戦に臨んだ横浜F・マリノスが、シドニーFC(オーストラリア)に4−0と勝利。これで2連勝とし、クラブ史上初となるグループリーグ突破へ大きく前進した。


シドニーFC相手に4−0と快勝した横浜F・マリノス

 強い。とにかく強い。

 そのひと言に尽きる、昨季J1王者の戦いぶりだった。

 横浜FMは、序盤からボールを保持して試合を進めるのはもちろんのこと、ボールを奪われても、素早い守備への切り替えでボールを奪い返し、相手にカウンターを許さない。それどころか、ほとんどボールを持つ時間を与えない。とくに前半は、シドニーの選手たちを自陣に閉じ込め、何もさせない時間を長く続けた。

 横浜FMがただ単に攻撃力だけに優れているのなら、つまり、ボールを保持したときのプレーだけに優れているのなら、相手にももっと打つ手があっただろう。

 しかし、この試合の横浜FMが出色だったのは、ボールを失ったあとの切り替えの速さと、ボールを奪い返すときの激しさ。ボールを失った瞬間に、1人目がプレスをかけ、それが外されても2人目、3人目と、次々に青いユニフォームの選手がボールへ襲いかかる様は、シドニーの選手に同情したくなるほどの迫力があった。

 と同時に、横浜FMのサポーターが、鮮やかなパスワークよりも、むしろ”ボールを失ったあとのプレー”に大きく反応していたのもよかった。スタンドが作り出す空気は、選手の足を動かすあと押しになっていたはずである。

 シドニーのスティーブ・コリカ監督も、「我々はベストのプレーができなかった」と悔やむ一方で、「横浜FMはボールを持っているか、いないかに関係なく、ハイテンポでプレーしていた」と、勝者に賛辞を贈った。事実、シドニーの選手は、横浜FMの足を止めないハードワークにまったくついていけなかった。

 これだけ一方的な試合展開に持ち込めば、横浜FMが攻めあぐむこともなかった。シドニーのディフェンスが耐え切れなくなり、得点が生まれるのも当然の流れだっただろう。

 前半12分にFWオナイウ阿道が決めた先制点を皮切りに、31、33分にはFW仲川輝人が立て続けに追加点を奪って、前半にして勝負を決定づけると、後半立ち上がりの51分にも、再びオナイウが決め、シドニーに引導を渡した。

「とてもいいパフォーマンスだった。ゲームをコントロールし、支配できた。韓国でのグループリーグ初戦(2−1で勝利した全北現代戦)はもっと得点できたはずだが、今日はそこを修正でき、たくさん点も取れた」

 横浜FMを率いるアンジェ・ポステコグルー監督は、満足げにそう語ると、再びかみしめるように、「今日のパフォーマンスはとてもよかった」と繰り返した。

 DFラインを高く保ち、コンパクトな布陣で攻守を繰り返す横浜FMのスタイルは、うまくハマれば相手を圧倒できる一方、その特性ゆえ、背後には広大なスペースを空けてしまうなど、対策されやすいと見る向きも少なくない。

 だが、「横浜FMは(DFラインが)ハイラインで、サイドにスペースがあることもわかっていた」と、シドニーのコリカ監督。それでも試合後は、「そこを突くことができなかった」と認めるしかなかった。

 昨季J1でMVPに選ばれた仲川は、「自分たちがやるべきこと、やらなきゃいけないことを徹底してやっているだけ」と事もなげに語るが、すでにチームは「自分たちがやるべきこと」を忠実に遂行する段階を終え、次のプレーを判断するスピードも上がり、チーム全体の連動性は昨季以上に高まっている印象を受ける。

 ポステコグルー監督も「全員がボールに関わることを目指している。全員が流動的に動くことが大事」と言い、「どう動けば、相手を崩せるか。選手主体で、一人ひとりが理解を深めて、動いてくれている」と選手を称える。

 もちろん、J1とACLを並行して戦う長いシーズンのなかでは、何が起こるかわからない。とはいえ、現状において、横浜FM対策を講じることは、簡単な作業ではなさそうだ。

 それは単に、昨季からのスタイルが継続強化されている、というだけではない。今季移籍加入した新戦力が、早々にフィットしていることも好材料となっている。

 この試合でも、徳島ヴォルティスから移籍のGK梶川裕嗣と、大分トリニータから移籍のオナイウがともに先発フル出場。オナイウが移籍後初ゴールを含む2得点を決めれば、梶川もまた、DFラインの背後を的確にカバーするだけでなく、試合終盤の決定的なピンチも防ぐなど、無失点勝利に大きく貢献した。オナイウが安どの表情で語る。

「早く(移籍後初ゴールを)取れるに越したことはない。それが今日取れたのはよかった」

 オナイウが試合を重ねるごとにチームに適応していることを強く印象づけたのは、チーム2点目のシーンである。

 前線のオナイウは少し引いた位置にポジションを移し、最終ラインでボールを持ったDFチアゴ・マルチンスからの縦バスを引き出す。と、その瞬間、オナイウは、右サイドから中央へ走り込んできていた仲川の動きを見逃さなかった。

「(自分に)DFがついてきているのがわかったので、自分が触るよりスルーしてみようと」

 ボールはオナイウの傍らをすり抜けると、ゴール前へ走り込んだ仲川の足元へピタリ。仲川はGKの動きを冷静に見極め、ループシュートを難なくゴールへ流し込んだ。

 昨季J1得点王の今季初ゴールを”アシスト”したオナイウは、「いいイメージを共有できている」と前置きし、こう続ける。

「でも、もっとよくなると思う。個人としても、チームとしても、もっと上にいけるようにしたい」

 オナイウがチームにフットしてきていることを感じさせたのは、このワンプレーだけではない。

 先制点の直前、オナイウは右サイドの仲川からのクロスにヘディングで合わせているのだが、このクロスは相手選手を抜き切らず、少しタイミングをズラすように上げられたものだった。それにもかかわらず、オナイウはドンピシャでゴール前に飛び込んでいた。ヘディングシュートは惜しくもバーの上を越えたものの、互いの呼吸は合っており、(決して結果論ではなく)得点を予感させるに十分なプレーだった。

 FUJI XEROX SUPER CUPで先発出場したときは、自分の役割を最低限こなすのに精一杯といった感じだったオナイウ。しかし、公式戦出場わずか3試合目にして、コンビネーションには明らかな変化が見られる。オナイウが語る。

「タイミングは合ってきていると思う。クロスを上げられる選手はたくさんいるので、相手と駆け引きしながら、(相手DFの)前なのか後ろなのかを考えながらやっていきたい」

 どのクラブにとっても、ACLとJ1の両立が難しいのは、過去の例から見ても明らかだ。それゆえ、昨季J1王者と言えども、下手をすれば、泥沼にはまると想像するのはさほど難しいことではない。

 しかし、我々の悲観的な想像を軽々と超えるだけの強さを、今の横浜FMは備えつつあるのかもしれない。そんなことさえ思わせる圧勝劇だった。