今季のJ1はどこが制するのか

 昨季のJ1は、川崎フロンターレのリーグ3連覇なるかに注目が集まっていたが、その川崎はシーズン当初から勝ち切れない試合が続いて、早々に優勝争いから脱落。代わって、FC東京、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスが熾烈な争いを見せた。

 そして激戦の末、最後に頂点に立ったのは、横浜FM。前年の2018年シーズンは12位と低迷し、決して評価は高くなかったが、その前評判を見事に覆して戴冠を遂げた。

 一方、残留争いも昨季は大激戦となった。半分以上のチームがその争いに巻き込まれて、どのクラブがJ2に降格するのか、土壇場までわからない状況にあった。

 そうした混戦模様は、今季も変わらないだろう。そして今年も、そんな大激戦のJ1における全順位を、識者5人に全力を尽くして予想してもらった――。 

昨季より上積みがあるFC東京が初の戴冠か。
ドウグラス加入の神戸に躍進の期待

杉山茂樹氏(スポーツライター)

1位 FC東京
2位 横浜F・マリノス
3位 ヴィッセル神戸
4位 川崎フロンターレ
5位 鹿島アントラーズ
6位 セレッソ大阪
7位 ガンバ大阪
8位 サンフレッチェ広島
9位 柏レイソル
10位 ベガルタ仙台
11位 北海道コンサドーレ札幌
12位 名古屋グランパス
13位 浦和レッズ
14位 大分トリニータ
15位 清水エスパルス
16位 サガン鳥栖
17位 湘南ベルマーレ
18位 横浜FC

 勢力図は、昨季とそう変わらないと見る。優勝は、横浜F・マリノスか、FC東京か。横浜FMは、左利きの左ウイング、FWマテウス(→名古屋グランパス)が抜けた穴が大きい。

 一方、FC東京は昨季後半、アウェー戦が続くなかでよく健闘。最後は逆転されたが、横浜FMとの差はわずかだった。今季は、その横浜FMより上積みされた要素が多いとみる。4−3−3への布陣変更も吉と出そう。

 少し前まで、優勝を争う関係にあった川崎フロンターレと鹿島アントラーズは、横ばい。布陣を変えて、イメチェンを図る川崎は、FWレアンドロ・ダミアンの活躍が浮沈のカギ握る。

 鹿島は、高卒ルーキーのMF荒木遼太郎(東福岡高→)、MF松村優太(静岡学園高→)が楽しみ。成績は、アントニオ・カルロス・ザーゴ新監督の采配次第だが、両サイドバックが活躍しないと優勝は望めない。

 その川崎、鹿島の間に割って入りそうなのが、ヴィッセル神戸。

 昨季終盤からいい流れにあることと、Jリーグナンバー1ストライカー、ドウグラス(清水エスパルス→)が加入したことが大きい。順位を上げる起爆装置となるはずだ。また、両ウイングハーフ、DF西大伍、DF酒井高徳の高度で安定感のあるプレーも見逃せない。

 昨季後半、じわじわと順位を上げたセレッソ大阪は、優勝はともかくAFCチャンピオンズリーグ出場圏内に入る可能性あり。ガンバ大阪も同様に、いい流れの中にいる。

 マックス値が、この大阪の2チーム以上、と思われるのが、昇格組の柏レイソル。補強も上々で、うまくハマれば、最高で5位以内はありそう。

 サンフレッチェ広島、北海道コンサドーレ札幌は、横ばい。ベガルタ仙台は上がり目ありと見る。

 名古屋グランパス、浦和レッズは、力はそれなりにあるはずだが、相変わらずクラブとして機能していない様子。ジャンプアップは見込めそうもない。

 昨季前半のリーグ戦を沸かせた大分トリニータは、息切れした後半の流れを断ち切れるか。攻撃力、得点力が上がらないと苦しい。

 横浜FMでヘッドコーチを務めていたピーター・クラモフスキーを新監督に迎えた清水エスパルスは、戦力的に大きな問題を抱えるが、サッカーは面白くなった。降格候補から抜け出せるか。

 サガン鳥栖は、14位(2018年)、15位(2019年)とギリギリの戦いを繰り広げた過去2シーズンと、状況に変わりはないと見る。

 昨季、J1参入プレーオフを戦った湘南ベルマーレは、選手の出入りを見る限り、悪い流れに歯止めはかかっていない印象。持ち前のしぶとさが頼りか。

 昇格組の横浜FCは、サッカーそのものは悪くないが、戦力的に苦しい。

上位争いに加わるカギはふたつ。
それを併せ持った横浜FMが優位

小宮良之氏(スポーツライター)

1位 横浜F・マリノス
2位 FC東京
3位 鹿島アントラーズ
4位 川崎フロンターレ
5位 セレッソ大阪
6位 ヴィッセル神戸
7位 大分トリニータ
8位 ガンバ大阪
9位 サガン鳥栖
10位 サンフレッチェ広島
11位 北海道コンサドーレ札幌
12位 柏レイソル
13位 浦和レッズ
14位 名古屋グランパス
15位 横浜FC
16位 ベガルタ仙台
17位 清水エスパルス
18位 湘南ベルマーレ

 昨シーズンは混戦模様を呈したが、今シーズンも拮抗した状況はほぼ変わらない。ひとり、ふたりの主力の移籍やケガで、戦力バランスは大きく変わるはずだ。

 たとえば昨季は、FC東京はMF久保建英(マジョルカ)のスペイン移籍の穴を、最後まで埋めること能(あた)わず、失速。一方で、横浜F・マリノスはFWエリキ、FWマテウスの補強で加速がついた。

 ヴィッセル神戸はふたりの監督を”更迭”しながら、DFトーマス・フェルマーレン、MFセルジ・サンペール、DF酒井高徳ら大物選手を次々に獲得し、天皇杯を奪い獲った。

 今シーズンも、単純な戦力差は出るだろう。主力が最後まで戦えるか。適時な補強ができるのか。東京五輪があるせいで、前半が過密日程となるなか、選手層ややりくりが勝負を左右しそうだ。

 そういう意味では、ふたつの点がカギになるのではないか。

 ひとつは、チームを束ね、決断する指揮官の力量である。セレッソ大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督、FC東京の長谷川健太監督は、戦いの土台を作る能力に優れ、麾下(きか)選手に迷いがなく、ボスの風格が見える。

 また、大分トリニータの片野坂知宏監督、サガン鳥栖の金明輝監督というふたりの指揮官も注目。トレーニングでポジション的優位を高め、選手が力を出し切れる状況を作り出せるし、相手を研究し、勝機を見出せる。

 もうひとつのカギは、チームとしてのプレースタイルの定着度。鹿島アントラーズ、川崎フロンターレは、チームとして伝統的に”かくあるべき”という戦い方が根づいている。立ち戻るべき形があるだけに、大崩れはない。スカウティングも、チームスタイルから逆算して行なわれているだけに、本質的な強みがあるのだ。

 そのふたつを兼ね合わせているのが、横浜FMか。3年目のアンジェ・ポステコグルー監督は、エキセントリックな攻撃サッカーでスタートし、当初はノッキングすることもあった。

 しかし、昨シーズンは相手のプレーも分析しつつ、自分たちのよさを出す戦い方にシフト、着地点を見つけた。守りに強いチームの伝統を革新。DFチアゴ・マルチンスは、まさに戦術の体現者と言える。

 新シーズンは、戦術を回す役としてMF水沼宏太も獲得し、選手層も厚くなった。

 最後に、Jリーグ最大の見どころは、神戸のMFアンドレス・イニエスタかもしれない。イニエスタが見せるプレーは、ひらめきや驚きにあふれ、別格。日本で彼を見られるのは、幸福の至りである。

新陳代謝が期待できる川崎を1位に。
「読めない」鹿島はどっちに転ぶのか…

原山裕平氏(サッカーライター)

1位 川崎フロンターレ
2位 セレッソ大阪
3位 横浜F・マリノス
4位 サンフレッチェ広島
5位 ヴィッセル神戸
6位 FC東京
7位 鹿島アントラーズ
8位 浦和レッズ
9位 ガンバ大阪
10位 柏レイソル
11位 北海道コンサドーレ札幌
12位 名古屋グランパス
13位 大分トリニータ
14位 清水エスパルス
15位 ベガルタ仙台
16位 横浜FC
17位 湘南ベルマーレ
18位 サガン鳥栖

 まずは、昨季のおさらいから。

 松本山雅FC、ジュビロ磐田の降格予想は、順位こそ違えど正解。13位の名古屋グランパスはピタリ賞で、7位予想のサンフレッチェ広島(実際は6位)、12位予想のベガルタ仙台(実際は11位)、17位予想のサガン鳥栖(実際は15位)あたりは、いいところを突いたのではないでしょうか。

 もっとも上位予想の3チーム(1位川崎フロンターレ→4位、2位ヴィッセル神戸→8位、3位浦和レッズ→14位)は、いずれもカスリもせず。何より、節穴っぷりを露呈したのが、優勝した横浜F・マリノスで、恥ずかしながら14位と予想しておりました……。

 気持ちを切り替えて、2020年シーズン。懲りずに、今年も川崎を優勝に。やや凝り固まっていたチームに、若手の台頭による新陳代謝が期待できるから。4−3−3への新システム変更で、さらなる攻撃力アップも見込まれる。

 2位としたセレッソ大阪は得点力不足が課題とはいえ、難攻不落の堅守を備えているのが大きい。長いシーズンにおいて、その安定感はやはり強みとなるだろう。4位とした広島も、同様の見解だ。

 3位は横浜FM。継続性もあり、選手層も増している。ただし、ハードスケジュールと他チームの対策を乗り越えられるか。昨季にはなかったこのテーマが連覇を遠ざけそうだ。

 タレント軍団の神戸も、主力の高齢化を考えれば、AFCチャンピオンズリーグとの”並行線”はマイナスに働くと見る。前線をバージョンアップさせたFC東京にも、似たイメージを抱く。

 読めないのが、鹿島アントラーズだ。アントニオ・カルロス・ザーゴ監督を迎え、新戦力も数多く補強。戦力的には優勝に推してもいいチームだが、方向転換による弊害が生まれてくる可能性も否定できない。改革による痛みが伴うシーズンとなるかもしれない。それは、監督が代わった清水エスパルスや仙台にも当てはまることだ。

 下位予想は横浜FC、湘南ベルマーレ、鳥栖とさせていただいた。

 横浜FCは、ルヴァンカップの広島戦を見た印象は悪くなかったが、やはり戦力値と経験値が物足りない。湘南は、戦力流出のダメージは避けられないと見る。

 鳥栖は”残留請負人”の金明輝監督が、シーズン最初から指揮を執ることに、逆に不安を抱く。もし仮に、悪い方向に転んだ時に方向転換できるのか、という意味で。すでに切り札を出し切っちゃった感があるだけに、ズルズルと行ってしまう可能性も否定できない。その意味で、前半戦の戦いがカギを握りそうだ。

 と、つらつらと偉そうなことを綴ってきましたが、なにせ私、優勝チームを14位に予想した男ですから。みなさん、ご安心を!(何を?)

長谷川監督がFC東京の歴史を変えるか。
大穴は2度目の奇跡を狙う柏

中山 淳氏(サッカージャーナリスト)

1位 FC東京
2位 鹿島アントラーズ
3位 柏レイソル
4位 横浜F・マリノス
5位 川崎フロンターレ
6位 セレッソ大阪
7位 ヴィッセル神戸
8位 浦和レッズ
9位 ガンバ大阪
10位 北海道コンサドーレ札幌
11位 サンフレッチェ広島
12位 名古屋グランパス
13位 大分トリニータ
14位 ベガルタ仙台
15位 清水エスパルス
16位 横浜FC
17位 サガン鳥栖
18位 湘南ベルマーレ

 昨季は、無印だった横浜F・マリノスが優勝したように、今季も戦国時代。優勝候補の実力もかなり拮抗している。そんななか、布陣変更を行なって、MFレアンドロ(鹿島アントラーズ→)、MFアダイウトン(ジュビロ磐田→)ら即戦力外国人の加入で攻撃力を増した、FC東京が有力候補だ。

 過去2年はソリッドなサッカーで、終盤に失速して涙をのんだが、百戦錬磨の長谷川健太監督が自らの殻を破るべく、新たな挑戦に踏み出したことで、クラブの歴史が変わりそうな予感だ。

 優勝候補の常連である鹿島アントラーズは、オフが短く、チームに疲労感が蔓延しているのが不安要素だが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でプレーオフ敗退。その分、リーグ戦に集中できる環境が整った。

 アントニオ・カルロス・ザーゴ新監督が、即戦力を大量補強した守備を整備できれば、後半戦の躍進に期待が持てる。

 大穴は、FWオルンガ、FWクリスティアーノを擁する、J2からの昇格組となる柏レイソル。ネルシーニョ監督は、2011年にも昇格1年目にチームを初優勝へと導いた経験を持つ。J2を制した昨季の主力をベースに、有力なバックアッパーが加わったことも好材料だ。

 王者の横浜FMは、慣れないACLを戦うことで、歯車が乱れる可能性が大。選手層も決して厚くはなく、2年連続の優勝は困難か。

 また、安定感のある川崎フロンターレは、補強が少なく、戦力は現状維持。攻撃陣の高齢化を考えると、王座奪還への見通しは厳しい。

 J2への降格が予想されるチームは、戦力を大量に失った湘南ベルマーレがその筆頭か。残留のためには、前指揮官が長年植え付けてきたスタイルからの脱却がカギとなる。

 戦力ダウンが否めないサガン鳥栖も、近年はジリ貧状態が続いており、金明輝監督の采配次第では、J2降格の可能性は十分にある。

 とはいえ、横浜FC、清水エスパルス、ベガルタ仙台、大分トリニータも”危険水域”にいることは間違いなく、残留争いも大混戦になりそうだ。

ACLの掛け持ちが順位浮沈のカギ。
それでも、V最右翼は横浜FM

浅田真樹氏(スポーツライター)

1位 横浜F・マリノス
2位 川崎フロンターレ
3位 鹿島アントラーズ
4位 セレッソ大阪
5位 FC東京
6位 ヴィッセル神戸
7位 ガンバ大阪
8位 サンフレッチェ広島
9位 柏レイソル
10位 大分トリニータ
11位 北海道コンサドーレ札幌
12位 浦和レッズ
13位 ベガルタ仙台
14位 名古屋グランパス
15位 横浜FC
16位 清水エスパルス
17位 サガン鳥栖
18位 湘南ベルマーレ

 J1の順位予想、とくに優勝予想をするうえで軽視できないのは、AFCチャンピオンズリーグを掛け持ちすることの負担である。

 過去5シーズンを振り返ると、ACLに出場した各4クラブのうち、必ず半分の2クラブがACL出場圏外の順位(5位以下)に終わっている。なかには、昨季の浦和レッズ(14位)や一昨季の柏レイソル(17位でJ2降格)のように、大幅に順位を落とすケースまであるほどだ。

 過去10シーズンにサンプルを広げると、さらに状況は悪化し、少なくとも2クラブが5位以下に終わっているばかりか、2012年、2014年シーズンは、ACL出場の4クラブすべてが6位以下。加えて、2012年はガンバ大阪が、2014年はセレッソ大阪が、いずれも17位でJ2降格の憂き目に遭っている。

 昨季の上位クラブ(今季ACLに出場するクラブ)を、素直に上位(優勝)予想しにくい理由である。

 とはいえ、優勝するクラブはというと、ACLを掛け持ちしながらJ1を制したクラブが過去5シーズンで延べ3つもある(2ステージ制の2016年で年間勝ち点トップだった浦和を含む)。過去10シーズンまでサンプルを広げても、延べ4クラブあり、思ったほど低い確率ではない。

 ただし、その4クラブの前シーズン順位は1位か2位。つまり、過去の例に照らせば、今季ACL出場組のなかで優勝の可能性があるのは、横浜F・マリノスか、FC東京。そうでなければ、優勝はACLに出場しないクラブということになる。

 巻き返しを狙う川崎フロンターレ、鹿島アントラーズにとっては、ACL出場の負担がない今季は大きなチャンス。鹿島の屈辱的なACLプレーオフ敗退も、J1でのタイトル奪回を考えれば、むしろ幸いだったかもしれない。

 しかしながら、川崎、鹿島とも現在過渡期を迎えている印象で、巻き返しどころか、昨季以上に苦しいシーズンになる可能性もありそう。それを考えると、昨季終盤に完成された強さを見せつけた横浜FMが、やはり優勝候補の最有力か。

 穴候補なら、C大阪。目立った補強はないが、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督2年目でさらなる上積みが期待できそうだ。

 また過去、天皇杯優勝でACL出場の権利を手にしたクラブは、J1で大きく順位を落とすケースが目立つ。これに該当するのはヴィッセル神戸だが、神戸の場合は、夏に大型補強もありそうで安易に見限れない。

 いずれにしても、優勝候補は上位6位までに予想した6クラブ。ここから優勝クラブが生まれると見る。

 J2降格を含めた下位予想は、上位以上に難しい。どこが残留争いに巻き込まれても不思議はないが、そのなかでも昨季終盤に不安定な戦いが続き、しかも主力流出の穴を埋め切れていない湘南ベルマーレ、サガン鳥栖、清水エスパルスが最も苦しい戦いを強いられると予想した。