主力を維持し、伸びしろある若手も豊富。“あの時”とは違う【J1クラブ展望/横浜FC】

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 4勝4分26敗。2007年のJ1における横浜FCの年間成績である。得点19、失点66、得失点差−47はリーグワーストで、5試合を残してJ2への降格が決まった。ニッパツ三ツ沢球技場での横浜ダービーの勝利と、最終節に首位・浦和を破ってその優勝を阻止した以外は、ほぼ何もできなかったシーズンだった。堅い守りからのカウンターを武器にJ2を制した戦い方はJ1では全く通用しなかった。そうしたイメージがあまりにも強いためか、今季もサッカー関係者の間では横浜FCをダントツのJ2降格候補として挙げる向きが強い。しかし、今年は違う。そこまで無残な結果にはならないだろう。

 2007年を迎えるにあたって、まず痛かったのは大エース・アレモン(24試合18得点。以下、カッコ内は2006年のJ2での戦績)と、左の攻撃的MFとして攻撃を牽引しアシストも多かったアウグスト(34試合6得点)が契約更新に至らずチームを去り、アレモンに次ぐゴールをマークした城彰二(43試合12得点)が現役引退と、チーム総得点の半数以上を挙げた3人がいなくなってしまったことだ。

 代わりに獲得した奥大介は2007年のJ1で16試合1得点、久保竜彦は8試合1得点と、故障もあってほとんど結果を残せず。期待された新たな外国籍アタッカーもアドリアーノがわずか3試合・38分の出場にとどまり、東京ヴェルディから加入したジウマール・シウバ(18試合9得点)もチームにフィットせず5試合無得点。攻撃は完全に停滞した。守備でも、センターバックの主力を担うことが想定されたアンデルソンがリーグ戦出場なしで、自慢の守備にも綻びが生じることに。

 しかし、2020年は事情が異なる。主力の流出は北爪健吾のみ。攻撃の核であるイバとレアンドロ・ドミンゲスはチームに残った。さらに彼らのポジションを脅かす存在として齋藤功佑や皆川祐介が台頭してきたのも好材料だ。斉藤光毅や中山克広、松尾祐介ら中盤の若手アタッカー陣も、3人とも6ゴールとJ2で実績を残している。近年はJ2で結果を残した若手がJ1でも活躍する傾向にあり、攻撃陣のすべてがJ1の壁に阻まれるとは考えにくい。2007年に獲得した攻撃陣に比べ、まだJ1での伸びしろがある若い選手がそろってる点にも期待していいだろう。

 何より、クラブは2007年の惨状を受け止め、数年がかりでJ1を見据えた準備をしてきた。ここ2、3年は主力級の流出を最小限にして、確かな戦力の上積みに成功。その背景として強化部が新たな選手の獲得に際し、そのパーソナリティとサッカーのスキルの二面において、それぞれ獲得基準を明文化したことは大きかっただろう。また、ユースチームは、高円宮杯 JFA U−18サッカープレミアリーグに昇格するなど、下部組織の底上げも図った。前述の斉藤光毅は昨年のU−20ワールドカップに17歳にして飛び級で出場し、チームの主軸を担ったことを覚えている方も少なくないだろう。彼もまた横浜FCアカデミーの出身で、2007年の当時にはそんな選手はいなかった。さらに、クラブの方針として「攻守ともに主導権を握るサッカー」を掲げ、それを体現するために就任した下平隆宏監督の手腕にも期待したい。昨シーズンのJ2において後半戦21試合に限れば15勝5分1敗とトップの成績を残したことも記しておこう。

 13年前よりも、チームとしてもクラブとしても強さを増した横浜FCのJ1での戦いぶりに注目してほしい。もちろんJ1のレベル自体もあの頃よりはるかに高くなっているのは承知のうえで。

【KEY PLAYER】FW 9 一美和成

 万能型の成長著しい若手FW。自身がストロングポイントとして真っ先に挙げるポストプレーのほか、2、3人のDFに囲まれてもドリブルで間を作り、相手を抜き去らずともフィニッシュに持ち込む決定力も魅力で、ただ合わせるだけのワンタッチゴールも少なくないなど、得点への嗅覚も併せ持つ。2月16日に行われたJリーグYBCルヴァンカップの初戦では、昨季36試合18得点でチーム内得点王のイバをベンチに退け、「現時点でのベストメンバー」(下平監督)の一員として先発出場した。この男がシーズンを通して何点取るかが、チームの浮沈のカギを握ると言っても過言ではないだろう。

 東京オリンピック世代でもあり、昨年12月にはU−22日本代表に初招集され、ジャマイカ戦で1ゴールを記録。今季は早いうちに結果を出し、オリンピック出場も果たしたいところ。一見するとクールで眼光鋭く近寄りがたい印象を受けるが、話しかけられれば実直に質問に答え、その姿からは真面目で誠実そうな性格がうかがえる。釣りが好きで、魚をさばくこともできるとのこと。また、Instagramでは食に関する投稿が少なからずあり、サラダやパスタにかける食用油にもこだわりを持つなどの一面も見せる。

文=二本木昭