ウォールドガーデンは広告主の背筋をゾッとさせる概念だ。Google、Facebookなどのプラットフォーム企業が消費者の個人情報を「ウォールドガーデン」で保護しており、広告主はその権限を譲らざるを得ないためだ。

GoogleはChromeブラウザでのサードパーティCookieの使用を段階的に廃止する計画を立てており、広告主は広告ターゲティングの精度を維持するため、ほかの情報源に詳細なオーディエンスデータを求めはじめている。これらを総合すると、パブリッシャーは独自のウォールドガーデンを作るのに有利な立場にある。誰かがコンテンツを見るためにログオンするたび、認証済みのオーディエンスデータを収集できるためだ。そして、広告主は関心を示している。

独自のウォールドガーデン

消費者に関する質の高いデータが減れば、データの価格が上昇する可能性もある。パブリッシャーはウォールドガーデンを築くため、認証・登録戦略によってアドレサブルなオーディエンスを増やそうとしている。ベルギーのDPGメディア(DPG Media)のように、独力で挑戦しているパブリッシャーもいれば、オゾンプロジェクト(Ozone Project)などのアライアンスに参加するパブリッシャーもいる。オゾンプロジェクトはプラットフォーム企業のウォールドガーデンに代わるものをつくるため、2018年に立ち上げられたパブリッシャーアライアンスだ。

オゾンプロジェクトの最高売上責任者クレイグ・タック氏は、参加パブリッシャーの営業幹部たちは「よりプライベートな環境」の需要が高まっていることに言及していると話す。タック氏によれば、オゾンプロジェクトはパブリッシャーのコンテンツの読み込み時間を短縮し、より関連性の高い広告が適切な頻度で表示されるようにすることで、広告主にとっての価値を創出しているという。また、さまざまなパブリッシャーのウェブドメインでユーザーの同意を得られることが強みだと、タック氏は言い添えている。

パブリッシャー主導の代替的なウォールドガーデンでは、プラットフォーム企業による従来のウォールドガーデンと異なり、広告主がその権限を譲ることなく、匿名化された個人情報を共有できる。たとえば、オゾンプロジェクトの場合、広告主が要求すれば、ウォールドガーデン内のデータを第三者が監査できる。

DPGメディアは独自の技術とデータでカスタマイズソリューションを開発し、広告主に販売したいと考えている。最高売上責任者のスティーブン・ハビック氏は「パブリッシャーグループはアイデンティティを巡る現状と供給の統合を踏まえ、メディアバイヤーにとっての玄関口としてどのように振る舞うべきかをもっと明確に考えなければならない」と話す。

広告主たちの最新動向

DIGIDAYが取材した複数の広告主は、パブリッシャーが独自の閉じたエコシステムをつくることを熱望している。ユニリーバ(Unilever)のグローバルメディア担当シニアバイスプレジデント、ルイス・ディコモ氏は「パブリッシャーがクロスプラットフォーム測定を強化すれば、広告エコシステムの助けになる」と語る。ユニリーバは広告の購入先を選定するため、信頼できるパブリッシャーのネットワークを構築しており、ディコモ氏はその支援を行っている。ディコモ氏はユニリーバ版ウォールドガーデンと表現し、ほかの広告主にも参加してほしいと呼び掛けている。

Google、Facebookなどのプラットフォーム企業は消費者の購入に関するデータを大量に管理しているが、パブリッシャーと異なり、大量のコンテンツは所有していない。そのため、人々とコンテンツとの関わりについては、プラットフォーム企業はパブリッシャーほどデータを収集できない。大きな顧客データベースを持つ広告主にとっては、自前のデータをパブリッシャーの豊かなデータセットと照合する方が確実かつ効果的だ。上質なオーディエンス情報が減少している市場ではなおさらだ。

アメリカン・エキスプレス(American Express)をはじめとする一部の広告主は、ニュースター(Neustar)のようなアドテクベンダーに協力を求めている。ニュースターの製品マーケティングディレクター、デボン・デブラシオ氏は「Google、Facebookといった従来型のウォールドガーデンにとどまりながら、測定可能なパートナーのエコシステムを構築するチャンスが広告主にはある。パートナーには広告の購入先である大手パブリッシャーも含まれる」と話す。デブラシオ氏によれば、ニュースターはパブリッシャーとの関係を生かし、パブリッシャーと広告主のデータの同期を進めているという。

エージェンシー勢も期待

このように、ウォールドガーデンと総称される閉じたエコシステムのバリエーションは徐々に拡大している。ひとつのアカウントで複数サイトに登録できるログインアライアンス、広告主が自身のデータを複数パブリッシャーのデータと照合できるオゾンプロジェクトのようなパブリッシャーアライアンス、プライバシーが保護された状態で、広告主とパブリッシャーがデータを共有できるデータクリーンルームなどだ。

メディアエージェンシーもパブリッシャー主導のウォールドガーデンにチャンスを見出している。さまざまなウォールドガーデン(小さなものからGoogle、Amazonのようなものまで)で共有されるデータの最適化には投資が必要となるため、メディアエージェンシーの幹部らは、彼らがさらに複雑化するエコシステムのナビゲーターになると見ている。

ピュブリシスメディア(Publicis Media)傘下のエージェンシー、スターコム(Starcom)でマネージングパートナーを務めるポール・カサミアス氏は「断片化が進めば、リーチの量は小さくなるが、質は高くなり、ガーディアン(Guardian)の読者、バイス(Vice)のオーディエンスなど、特定層の関心を引きやすくなる」と話す。「エージェンシーは今後、複数の保証型プログラマティック取引を重ねられるような計画を立てることになるだろう。ひとつだけではクライアントのKPIを押し上げることができない」。

パブリッシャーがやるべきこと

アドテクベンダー、インフォサム(InfoSum)で営業担当バイスプレジデントを務めるスチュアート・コールマン氏は、代替的なウォールドガーデンが成功を収めるには、パブリッシャーはユニークビジターの数だけでなくアドレサブルオーディエンスの深さを売り込まなければならないと指摘する。コールマン氏によれば、パブリッシャーはこれまで、ウォールガーデンにあるデータの長所をうまく伝えることができず、広告主がほかに資金を投じる口実を与えてきたという。

「結局、ウォールドガーデンの成功は、そのうえに構築されたアドレサブルなオーディエンスに懸かっている」と、コールマン氏は話す。「パブリッシャーがやるべきことは、サイトに登録し、コンテンツにアクセスする人を増やすことだ」。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)