着実に増す安定感と精度…タイトル圏内を狙う片野坂監督【J1クラブ展望/大分】

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「勝点55、総得点55、総失点35で6位を狙う」と明確な数値とともに目標を掲げた今シーズン。チームを率いて5年目となる片野坂知宏監督のもと昨シーズンの主力がほぼ残り、新戦力11人を加えてスタートした。戦い方に大きな変化を加えるつもりはなく、GKを含めた後方からのビルドアップで攻撃を組み立て、しっかりボールを保持して、相手を揺さぶり隙を突く“大分スタイル”をアップデートする。

 今シーズンは例年に比べ戦術の落とし込みが早かったのは、これまでブレずに目指すスタイルを追求した積み重ねによるもの。仕上がりは早く、ボールの流れはスムーズで、選手の動きに迷いがない。片野坂監督はチームが始動してから、「攻守でやるべきことを明確にした。状況に応じてどう攻め、どう守るのかも優先順位を提示した」と話すように、昨シーズンまでは状況によってある程度の判断を選手に託したが、「判断基準を明確にしたので、より共通理解ができるようになった」と手応えを感じている。

 ただ、ゴール前までの攻撃の形はできているがフィニッシュの部分に不安はある。得点力不足の課題は未解決。昨シーズンの得点源であった10得点のオナイウ阿道、シーズン途中に移籍した8点の藤本憲明の穴を埋め切れていない。J1での経験がある知念慶、渡大生に加え、昨季J3ザスパクサツ群馬で17得点の高沢優也を獲得したが固定できずにいる。片野坂監督はトップ下に位置取る2シャドーを加えた“前線のトライアングル”について、「周りの選手との組み合わせや対戦相手によって考えたい」と日替わりオーダーとなることもやむなしと考えている。

 守備陣はGK高木駿を含め、最終ラインの顔ぶれは変わらず、安定感は増すばかり。昨シーズンの総失点35を片野坂監督は「粘り強く体を張り、90分間集中力を切らさずに闘えている」と高く評価している。キャプテン鈴木義宜を中心に成熟度は増し、堅守を実現しうる体制が整っている。大崩れする心配がほぼないだけに、前線のトライアングルから2桁得点者が複数出れば6位以内は不可能ではない。いずれにせよ、「戦力は昨季より上。僕は開幕戦で負けたことがない」と話す片野坂監督の自信に満ちた顔を見れば、期待は高まる。

 昨シーズンは開幕アウェイの鹿島アントラーズ戦で勝利し、一気に勢いに乗った。得点力と打開力のある新戦力が躍動し、既存の選手との連係から決定機を作り出せば、得点力不足は改善されるはず。白星スタートで一気に勢いに乗りたい。

【KEY PLAYER】FW 27 三平和司

 ピッチの中外で抜群の存在感を放つ三平和司の仕上がりがいい。オフも体を動かし、食事制限、体調管理を徹底した32歳は、今季はロケットスタートを決め込む。「年齢は関係ないし、30歳過ぎても衰えを感じたことはない」とキレのある動きを見せ、先発候補に名乗りを挙げる。チーム在籍8年目、今季は最年長となったが、偉ぶることもなく、いつも明るい“サンペイ”の愛称で親しまれるムードメーカーは、練習中からチームを盛り上げ、新加入選手が孤立しないように気配り。練習後の取材、ファン対応では必ずひと笑いを加えて和やかな雰囲気を作り出す神対応。誰からも愛し、愛されるキャラは、27年の歴史を持つクラブのなかでもトップクラスだ。

 ピッチの中でも記録より記憶に残る三平は、得点やアシストなど数値に現れない働きぶり。前線のマルチプレーヤーとなり、ボールを引き出す動きや仲間のためのスペースメイクなど献身的なプレーでチームを支える。「得点以外でチームに貢献してくれる重要な存在」と片野坂監督の評価は高いが、本人は「チームの勝利に貢献することは重要だが勝利インタビューを受けたい。そのためには得点」と、そんな嘆き節さえ、楽しげな響きが混じる。16年、18年と二桁得点を記録し、今シーズンは隔年変動の当たり年。期待せずにはいられない。