ご自宅の冷蔵庫は「在庫管理」ができる適正量になってますか? (写真:Stephen Waters/ Moment Mobile/Getty Images)

一向に収まる気配がないコロナウイルスの猛威。消費増税ショックにやっと慣れてきた日本経済へじわじわと悪影響を及ぼしつつある。

春節と重なったため、インバウンドに期待していた観光・運輸業には大打撃。百貨店の売り上げも前年と比べがた落ちだという。

中国に生産や販売拠点を持つ企業も影響は避けられず、日本全体が景気の下振れリスクにさらされている。オリンピック景気への期待はどこへやらで、2020年も「消費より生活防衛」の年になりそうだ。


この連載の記事一覧はこちら

生活防衛、つまり家計の節約を考える際には、“二頭立て”で見直すことが必要だ。ひとつは固定費、ふたつ目が流動費である。

固定費は毎月決まってかかるお金で、住居費や保険料、水道光熱費および通信費、教育費などが代表格。流動費はやりくり費とも言われ、食費や日用品費、レジャー費などを指す。

節約の手順にはセオリーがあり、見直し効果が大きいのは固定費で、次に流動費の中身を細かく見ていくものだ。しかし、そう聞いても、食費などの流動費から手をつけたい人は多い。

FPなどのアドバイザーがいくら固定費を見直しましょうといってもなかなか手がつかないのは、毎月引き落としの費用が多いため、止める手続きがおっくうだったり、通帳もカードもネット明細の時代で金額を見ていない(気づいていない)からだろう。

かくして「払っている意識がある」、目の前で財布から出ていく食費などのほうが簡単に減らせそうに見えるのだ。消費増税後に節約したい費目は? というアンケートを取ると、たいてい食費と外食費が2トップにくることになる。

そこまで需要があるのなら、主婦雑誌の食費節約記事を長年作ってきた筆者が、改めて食費節約の見直し方を述べてみよう。

節約できない原因は「買いすぎ」に尽きる

「買い物」「在庫管理」「使い切り」。これが食費節約の3大ポイントだ。適正量を買い、傷ませることなく管理し、使い切るトライアングルが成立していれば、食費のムダは出ない。

とくに、買い方が最も大事で、食費が節約できない家はズバリ「買いすぎ」ているからと言っていいだろう。必要な量以上に買っているからお金がかかり、それを適正に使いきれず、廃棄してしまえば、払ったお金も浪費になってしまうからだ。

では、なぜ買いすぎてしまうかと言えば、「節約したい」と考えているから。笑い話のようだが、さにあらず。

節約のために人はなるべく安い食品を買おうと考える。その日の特売品や値下げ商品といった「安く買える」ものを手当たり次第にカートに入れる。今日のメニューを作るのに必要かと考えるわけではなく、「安いから」という理由でどんどんカートに入れていくと、レジで合計金額を聞いた瞬間、想定以上に膨らんだ額にあぜんとするのだ。

次の買い物でも同じことが繰り返されるだろう。節約のために「安いから」買ったもので冷蔵庫があふれ、奥にしまい込んだまま朽ちていくことになる。

安いものを買って節約につなげるのは間違ってはいない。ただし、「安いし、いつか使うかも」となんとなくカートに入れるのが問題だ。これを防ぐには、モノではなく金額の縛りで買うようにするといい。多くの家庭では月の食費予算を決めているものだ。まずそれを日割り計算し、3日分買うなら×3、5日分なら×5の数字が財布に入れていい金額となる。

今日はこの金額以上は買えないと意識すれば、なんとなく買っておこうかという緊急度のないものは買わずに済む。必ず必要なメインの肉や魚を買ったうえで、後はその残りの金額内で安いものを探せばすっきりする。

安いものから買わないほうがいいのは、まだ頭の準備ができていないからだ。買い物に行く際に最初からがっちり何を作るか決めている人はそう多くない。当日の安い食材を買って、それを使って作れるものを今日のメニューにしようと考える。つまり、買い物を続けるうちに徐々にメニューのイメージが固まってくるので後半の買い物は無駄がないのだが、最初にカートに入れたものは必ずしもそうではない。「なくてもいいもの」がカートに残ったままレジに向かうと、ぎょっとする金額になってしまうわけだ。

それを防ぐためにも、レジに並ぶ前に再度、買う必要のないものが入ったままになっていないかチェックするのが大切だ。見つかったらおっくうがらずに売り場の棚に戻しに行こう。運動不足解消のウォーキング代わりと考えれば前向きになれる。

「割安買い」は節約のトラップ

安いからではなく、金額の縛りで買い物をすると、“割安買いトラップ”からも逃れられる。割安買いとは、業務用と言われる大量パックや、3品セット買いで割引になるという、おなじみのもの。確かにグラム当たり、1個当たりでは割安だ。しかし、その大量の食材は、わが家の何食分に当たるのか深く考えずに買っている人が多いのではないか。

家に大量のストックがあると、つい気が緩むものだ。しかも大量パックは冷蔵庫や収納庫を塞いでしまうため、できれば早く使い切ろうとする。結果、本来必要な量よりも多めに使いがちになってしまう。これでは割安で買っても食費節約になっているか疑わしいだろう。

また、セット売りは割引をエサに、買う気がなかった商品をプラス1〜2品買わせる手法にほかならない。むろん、予定していた以上に金額も膨らむ。トクしたのは消費者ではなく店側だ。

確かに、かつては大量の食材を割安で買い、1回分ごとに小分けして、きちんと下ごしらえをして――という節約テクがもてはやされたが、それは昭和の手間をかけるのが美徳の節約。たとえ割高になっても1回あたりの食費予算の中で納める買い方をすれば、食費が赤字になることはないはずだ。

貯まる家は冷蔵庫でわかる

適量買いが望ましい理由は、買った食材の使い忘れ防止にもつながるからだ。「買い物」「在庫管理」「使い切り」の食費節約トライアングルのうち、「在庫管理」がラクになる。

まとめ買いした食材でぎっしりの”魔窟冷蔵庫”では、一見して何がどのくらいあるかわからない。ないと思って買った食材が実はあった、奥のほうにいつ買ったか覚えていない「何か」が干からびていた――という悲劇が日々繰り返される。いくら安く買っても、使い忘れのせいで捨ててしまえばその代金も捨てたことになる。

着実に貯蓄できる人の家は総じてモノが少ないものだ。それは冷蔵庫も例外ではない。何がどこにあるかわかりやすく整理されてもいる。そのための「ゾーニング」は食費節約には欠かせない。ゾーニングとは冷蔵庫の中を位置決めすること。冷蔵室の棚ごとに、そこに入れるものや役割を決めるわけだ。

いちばん目につく棚は、消費期限が短い豆腐や納豆など、あるいは作り置きしたおかずなどを入れる棚にすれば食べ忘れが防げる。逆にみそや梅干しなど長持ちするものは上の棚でもいいだろう。目につきにくいいちばん上段は何を入れても取り出しにくいので、筆者はあえてそこにビールを横にして入れている。だからと言って減酒には役立ってはいないが……。

野菜室も、長持ちしない葉物は手前にまとめ、奥は根菜類というようにするか、緑のものは右、白いものは左――というように色別で分けてもいい。どこに何を入れるかのマイルールを決めることで、買ったものをしまう手間や在庫管理も楽になる。結果、二重買いや廃棄も減らせるだろう。

後は食材を使い切るための調理法だが、筆者が多用するのはカレー味とケチャップ味。この2つに共通なのは、大人も子どもも好きな味ということだ。すでにベースの味が決まっているので手間がかからないのもメリットだ。

今の季節なら、特売のカレールウを使ったカレー鍋が万能といっていい。モヤシや白菜など、カレーライスには絶対入らない野菜でも、この鍋にすると不思議とまとまる。肉が足りないときはちくわや油揚げなどの安い食品を加えるとボリュームが出せる。締めはカレーおじやにすればいいし、冷蔵庫の掃除メニューとして最強だと思う。

ケチャップは炒め物に使うのがお勧めだ。ウインナーソーセージやひき肉があれば、それと残り野菜を炒めると、なんちゃってナポリタン風になる。隠し味にソースあるいはしょうゆを加え、大人用にはコショウを効かせるといいだろう。

昨年2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)が施行された。食品ロスの発生元は、その約半分が一般家庭だと言われている。法律の要綱にも「消費者は(中略)、食品の購入又は調理の方法を改善すること等により食品ロスの削減について自主的に取り組むよう努めるものとすること」とある。

この「食品の購入と調理の改善」とは、これまで述べてきた食費節約のポイントそのものだ。買いすぎない、使い忘れを防ぐ在庫管理をする、そしてムダにせず食べきる。食費を節約したいという人はこのトライアングルをぜひ意識してほしい。