転職する際、面接で言ってはいけない辞めた理由とは?(写真:artswai/PIXTA)

「年収アップを目的にしない」「急成長中の会社を選ばない」など、転職活動をスムーズにするために「やってはいけないこと」がいくつかある。こうした転職の成功率を高めるヒントを、『転職の「やってはいけない」』著者で、これまで3000人以上の転職・再就職をサポートしてきた郡山史郎氏が解説する。

厚生労働省の2018年の雇用動向調査によると、2018年1年間の転職者が前職を辞めた理由は、男性では「定年・契約期間の満了」が16.9%と最も多く、次いで「給料等収入が少なかった」の10.2%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」の10.0%の順となった。

女性では「定年・契約期間の満了」が14.8%と最大で、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が13.4%、「職場の人間関係が好ましくなかった」の11.8%、「給料等収入が少なかった」の8.8%の順である(男女とも「その他の理由(出向等を含む)」を除く)。これらから男女ともに、1割程度の人が「お金」を理由としているのがわかる。

また、日経キャリアNETが2017年に行った会員向けのアンケートによると、「転職で年収が下がるときにどう対応するか」との質問に対し、「年収が下がるなら転職しない」という回答が全体で3割弱を占め、「希望する仕事に就けるならば年収は多少下がってもよい」の3割強と大差がない結果となった。

さらに、グローバル展開する人材会社マンパワーグループが同じく2017年に世界各国の約1万4000人(18〜65歳)を対象に行った調査で、求職活動で重視する点について尋ねたところ、日本では84%、グローバル平均では59%の人が「給与」と回答し、いずれも最大となった。次に多かったのが「仕事内容」で、日本では82%、グローバル平均では53%の割合である。

「お金目的」で転職はしてはいけない

ここで強調したいのは、「転職の際は絶対にお金を理由にしてはいけない」ということだ。ましてや、志望動機を述べる場でそのことに言及するのはもってのほかである。

面接では、「なぜ今の会社を辞めるのか」「なぜ当社に来たいのか」などと、必ずといっていいほど聞かれるものだ。そこで「年収を上げたい」と口にすると、相手には「ほかにもっと金銭的に条件のいいところがあれば、そこに行くのだろう」と思われてしまうからだ。

志望動機については、あくまでも「その仕事がやりたい」と伝えるべきだ。給料を上げたいという動機では、よほど優秀な人材でない限り、99%失敗する。たとえ収入アップが自分の本音であっても、それを言うのはご法度なのだ。

ただし、絶対に譲れない条件というのはあるだろう。例えば勤務地、勤務時間、家族の意向などもそうだが、給料についても自分のなかでの最低限のラインはあるはずだ。そうした条件を踏まえつつも、志望理由としてはお金を前面に出さないようにすべきだ。

転職を成功させるためには、自分が新しい会社や仕事に向いているとか、やりがいを感じるという点が最も重要となる。「この仕事をやりたい。自分の能力を伸ばしてくれる。だからあなたの会社に入りたい」ということだ。

裏を返せば、「今の会社は私を十分に使ってくれない。このままでは私の能力が伸びない。だから転職したい」ということでもある。それこそが転職の最大の理由になるべきである。

人間関係を理由にしてはいけない

もう1つ、パワーハラスメントのような事態は例外としても、「嫌な上司、同僚がいる」といった人間関係を理由にした転職も避けなければならない。

どの会社にも、相性のよくない人はいるものだ。前述の厚労省の雇用動向調査でも、前職を辞めた理由を尋ねる質問ついては、「人間関係が好ましくない」という回答の割合が高かった。

だが、私の長年の経験から言わせてもらえば、「悪い上司ほどよい先生」とも言えるのだ。反面教師という意味合いもあるが、嫌いな上司といかにうまく付き合い、折り合いをつけられるかというのは、組織にいる人間にとっては必要不可欠な処世術だ。

転職には今の会社での待遇、人間関係への不満、ストレスといった要因が存在することはよくあるが、それを理由にしてしまうと、相手企業から採用通知が届くことはない。首尾よく転職できたとしても、新しい職場に相性のよくない上司や部下がいることは十分考えられる。人間関係が悪くても、それを我慢して克服できるタフな人でなければ、転職などおぼつかない。

日本生産性本部が大卒、高卒などの新入社員約1600人を対象に行った2018年度の「働くことの意識」調査によると、「仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる」と答えた人が70.7%に上り、5年前よりも4.5ポイント増加した。一方で「仕事を通じて人間関係を広げていきたい」と考える人は94.1%を数え、5年前より1.7ポイント増加した。

このように、若き新入社員は、新社会人としての新たな出会いに胸を膨らませると同時に、人間関係への不安も相当に抱えているようだ。

しかし、転職希望者はすでに社会人経験があるのだから、さまざまな人間関係の複雑さや難しさを乗り越えてきたとみなされる。「苦手な上司とどうやったらうまく付き合えるか」といった会社でのサバイバル術を心得ていて当然なのだ。いってみれば、世の中は十人十色の個性を持つ、変な人だらけだ。人間関係の困難が転職理由になるような人は敬遠されてしまう。

急成長中の会社には近づくな

急成長している会社を避ける――これも転職先を探す際の重要な留意点だ。売り上げを倍々ゲームで伸ばしているような会社は一見、羽振りがよさそうに見える。しかし、急成長したのであれば、急降下する可能性もある。一般論として、急成長企業は危険なので近づいてはいけない。 

東京商工リサーチの調査によると、2018年に倒産した企業の平均寿命は23.9年で、前年より0.4年延びた。産業別の格差は拡大し、最も平均寿命が長かったのは製造業の33.9年、最も短かったのは金融・保険業の11.7年で、22年以上の開きがあった。

2018年に倒産した企業のうち、業歴30年以上の老舗企業の割合は32.7%、業歴10年未満の新興企業の割合は24.8%だった。日本には長寿企業が多いと言われるが、それでも多くの企業がわずか20年強で立ち行かなくなっている現実がある。


一時的なブームで成長を遂げても、いつの間にか業績が悪化しているという企業のケースは、数えきれないほど多い。売り上げ低迷、投資の失敗や後継者不足など、その原因はさまざまだが、転職するのであれば、やはり長期にわたって業績が安定している企業を選ぶことが肝要だ。

例えば、さほど大きな規模でなくても、中途採用で50人も募集するような会社はたくさんある。そういう会社には注意を要する。無理して業績を伸ばしている場合が多いので、入った転職者は、後で相当に苦労することになる。

経営者と従業員が一丸となって地道に努力して、少しずつ儲かっていくというのが、会社の正しいあり方なのだ。そこで少し欠員が出てしまったから、その分を補充しようという会社が、転職先としてはいちばんいい。人さえたくさん入れば儲かる、というような会社は最初からよくない。急成長している会社は、往々にして社員を大事にしない傾向がある。そんな会社では、社員は使い捨てにされてしまうのがオチだ。