南アでチャリティーマッチを行ったフェデラー(後方)とナダル(C)ロイター

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武田薫【スポーツ時々放談】

神宮球場の一塁側ベンチで野村監督が語った“理想の死に方”

 テニスのカリスマ、ロジャー・フェデラーは、全豪オープン準決勝の敗戦後、「南アでのエキシビションができるだろうか」と案じていた。38歳は股関節を痛めていた。

 母親が南ア出身という縁で、アフリカ南部の子供たちの教育基金を立ち上げ、今月9日にケープタウンで盟友ナダルとのチャリティーマッチを企画していた。

 週明け、この試合がテニス史上最高の5万人以上の観客を集め、3億8400万円がファンドに寄付されたというニュースが流れた。

 先の全豪オープンも寄付の話題が続いた。豪州南部の山火事被害がひどく、1月末までに北海道の面積に匹敵する1100万ヘクタールが焼け、死者33人、コアラなどの野生動物10億匹以上が焼死した。この事態に選手が立ち上がった。

 地元ニック・キリオスは、マッケンローが「天才」と絶賛する24歳だが、素行が悪い。ラケットを叩き折るどころか、中国では客席にベンチを放り投げて出場停止まで食らった。その悪童が「オレ、エース1本ごとに200ドル寄付」と言い出すや、選手が次々に支援に名乗り出た。

■コーチをにらむたびに100ドル

 ナダルとフェデラーが2人で25万豪ドル(約1850万円)はともかく、女子の4強に入ったハレプはコーチをにらむたびに100ドルと約束、準決勝まで100回にらんだと自己申告して1万ドル寄付した。

 驚いたのはアレキサンダー・ズベレフだ。期待されながら4大大会で結果を出せなかった22歳は、「1勝ごと1万ドル、優勝したら賞金を全額寄付する」と発言した。優勝賞金は約3億1000万円だ。初のベスト4に進出したコート上で、寄付の詳細を確認するインタビュアーのマッケンローへの答えに会場は涙を流した。

「ぼくにも大金です。でも、お金は銀行に置いておくものじゃない、世の中を変え、良いことをするために使うものだと親に教えられてきました」

 ズベレフは準決勝で敗れたが、セカンドサーブを時速210キロで叩く“ダブルファースト”で戦う姿に割れんばかりの拍手が寄せられた。キリオスは大会最高の150本(単複)のエースを決め、大会の寄付金総額は581万8861豪ドル(約4億3000万円)だった。

■カネの問題を避ける傾向が

 米国の4大スポーツの選手は教育、医療機関、美術館など文化施設への寄付に積極的で、その行為は大きく報じられる。

 日本でもスポーツの社会貢献はよく言われ、今回の豪州の火災でもテニス界では西岡良仁が1万ドルを寄付し、国内では藤原里華がイベントを呼びかけて約180万円を被災地に届けた。

 それでも、寄付行為を表沙汰にしない傾向がある。

 税制の違いや控えめな国民性だけでなく、プロスポーツが社会的に未成熟なのではないか。

 日本の競技団体は依然としてアマチュア体質で、良くも悪くも、金の問題を避ける。古い仕組みが、選手たちのせっかくの気持ちを遠い話にしている。

(武田薫/スポーツライター)