提供:週刊実話

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配給/キノフィルムズ 新宿ピカデリーほかにて公開
監督/成島出
出演/大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、木村多江ほか

 かつての巨乳タレントのころからタイプだったのが小池栄子。アホなバラエティーにもせっせと出ながら、本格女優として生き残った数少ない例だろう。元は、東京の下北沢のパチンコ屋さんのムスメ、っていうのも親近感十分でポイント高いね。

 そんな彼女、現在、第二次黄金期到来の勢い。ボクは親戚のオジサンのように目を細めるね。テレビ『俺の話は長い』での生田斗真との屁理屈VS理屈の姉弟トーク・バトルは最高だったし、CMにも多数登場している人気ぶり(中では『おナスさん……』ってのが、何だかエロチックな響きで好き)。そんな彼女が久々の映画主演作で本領発揮したのがコレ。

 終戦後3年がたったころ、妻子を疎開先に置いたままの文芸誌編集長・田島(大泉洋)は優柔不断のダメ男なのになぜか女にモテモテ。これではいかん、そろそろ愛人たちとグッドバイし、生活を改めようと決意する。闇市で泥まみれで働くキヌ子(小池栄子)が、泥を落とせばすごい美人だと知り、彼女をニセ女房に仕立て、愛人たちに会わせ、諦めさせる作戦に出るのだが…。

 原作は太宰治の未完の遺作で、太宰らしからぬ喜劇仕立てというのが売り物だろう。実は5年前にこの原作を独自の視点で舞台化し、そのときのヒロインが小池栄子で、今回再びの起用となっての映画版。すでにこの役を手の内に入れている彼女は、さらに磨きをかけている。

 何しろ、大食い、怪力、カラス声、ガサツでガメツい、というこのたくましき猛女が、ひと皮剥けば“絶世の美女”という落差は、彼女にしかできない! と断言したい。要するに、これは小池栄子版“マイ・フェア・レディ”なのである。当たり役と呼んで過言ではない。

 相手役の大泉洋も“愛されキャラ”の文科系ダメ男を絶妙に演じ、小池との駆け引き、丁々発止は絶妙にして絶品なり。ボクは、衣服の下に息づく“F巨乳”を妄想させる着飾ったドレスより、ボロ着て食いまくり、男を投げ飛ばす“美女レスラー”的小池ちゃんによりソソられる。そういえば、彼女の旦那は元プロレスラーだしなあ。

 この舞台版に惚れ込み、映画版を仕上げた成島出監督は『八日目の蝉』(11年)など、語り口のうまさでは定評のある才人だし、小池ちゃんとのタッグはこれで実に5作目。名牝と名伯楽みたいな関係だ。愛人たち相手にニセ夫婦を演じ続ける小池・大泉の“共犯”は成就するのか、破綻するのか? 相手役の女優たちもいずれアヤメかカキツバタ、大いに目の保養としながら、キツネとタヌキの行状を楽しもう。天国の太宰もきっと苦笑し、小池ちゃんを気に入るはずだ。
 《映画評論家・秋本鉄次》