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まるでデルタ・インテグラーレ

路面に追従しながらも見事にその起伏をいなすというこの能力によって、このクルマはクラス最高の1台であるとともに、今回のテストでもベストな存在であることを証明している。

この点で言えば、TロックRはまるで古のランチア・デルタ・インテグラーレのようであり、ボディコントロールだけで見事に路面不整を処理してみせる。

まさに相応しい組み合わせだった。BMWが4WDのホットハッチを創り出したのはこれが初めてであり、フォルクスワーゲンのR GmbHがクロスオーバーモデルを手掛けたのは、5.0Lの排気量を持つV10ディーゼルエンジンが86.7kg-mの大トルクを発揮していた2008年のトゥアレグR50以来だったのだ。いまならそれほど多くのドライバーを惹きつけることは出来なかっただろう。

最高のモーグルスキーヤーの滑りを見れば、わたしの言いたいことが理解できるはずだ。

だからこそコーナーにも速いペースを保ったままで進入することが出来るのであり、それこそがTロックRのパフォーマンスでもっとも驚かされる点となっているが、それもBMWには及ばないかも知れない。

見事な回頭性を見せるこのクルマでは、アルミニウム製のフロントサブフレームと新たなエンジンマウントが間違いなく効果を発揮している。

さらに、この優れたコーナリングパフォーマンスは、驚異的なオフセンターでのレスポンスを返すステアリングによって、なんの乱れも感じさせることなく達成されているのだ(このステアリングもゴルフR譲りであり、この可変レシオを持つステアリングラックは常に見事なギア比を感じさせる)。

スタンダードなサスペンションセッティングであってもほとんどロールを見せることはなく、フォルクスワーゲンのトレードマークとも言える見事な中立性を味わわせてくれる。

素早くコーナーへ侵入したかと思うと、落ち着きを保ったままそのままのペースでスムースに脱出してみせるこのクルマで問題を指摘するのは難しい。

2地点間の速さ

だが、M135iへと乗り換えてみると、高いスカットルと低いルーフラインに低重心を組み合わせたこのクルマのキャビンは、より包み込まれている様なフィールを感じさせてくれる。

さらに、乗り心地はまさにホットハッチのそれだが、決して硬すぎるという訳ではない。

残念ながら、Tロックのインテリアはゴルフのレベルに達していない。

TロックRに比べればステアリングは間違いなく路面からの影響を受けやすく、そのクイックだが弾性を感じさせるフィールは慣れるまでに時間を要するが、タイヤとドライバーとの間にある介在物が少ないことで、よりダイレクトな感触を伝えて来る。

この2台のコーナリングを比べてみれば、TロックRでは入力に対するレスポンスに遅れがあることに気が付くだろう。

その車高の高さにもかかわらず前方視界に優れる訳ではないが、その分自信を持ってコーナーへと突っ込むことが出来る。

特にダンパーをもっとも柔らかいセッティングにした場合、TロックRのほうがより長距離移動には適したところを見せる。

さらに、キャビンへと乗り込むのもより容易であり、後席の住人はM135iよりもつねに高い快適性とリラックス感を味わうことが出来るだろう。

実際、グリップとトラクションを使い切るようなドライビングでも試さない限り、2地点間の移動において、T-Roc Rの方がM135iよりも速かったとしても決して驚きではない。

それでも、ラゲッジスペースに関しては予想に反してクロスオーバーの圧勝という訳ではない。その差はわずか12Lであり、深さではハッチバックのほうに分がある。

ホットハッチという魔法

では燃費性能はどうだろう?

予想通り、重量と前面投影面積の点でクロスオーバーの方が不利であり、ハッチバックのライバルが12.5km/Lを記録した一方、TロックRは11.5km/Lに留まっている。

フォルクスワーゲングループが誇るお馴染みのEA888型エンジン。

TロックRがほとんど何の違和感もなく日常生活に溶け込むモデルであることに間違いはなく、そのB級路での能力は深い印象を残すだろう。だが、その点ではM135iも決してひけをとらない。

では、毎日をともに過ごすことの出来るパフォーマンスカーからも刺激を求めるドライバーにとって、より相応しいのはどちらのモデルだろう?

その答えはBMWということになる。

活気に溢れたステアリングを備え、そのシャシーは自然な機敏さを見せるとともに、今回のテストでは真の実力を発揮する機会はあまりなかったかも知れないが、ドライバーの要求に対してこのクルマのドライブトレインは見事に応えてくれる。

ホットハッチとは非常にシンプルなレシピから創り出されたモデルだからこそ、他のカテゴリーで再現することは難しいのだ。

一般的なドライバーにとって、TロックR とM135iの間に違いなどほとんどないだろう。

だが、そうではないわれわれのようなクルマ好きにとって、クロスオーバーの余分な車高と重量は、魔法の力を失わせるに十分なのだ。

各車のスペック

BMW M135i xDrive

価格:3万6430ポンド(517万円)
エンジン:1998cc直列4気筒ターボ
パワー:306ps/4500-6250rpm
トルク:45.9kg-m/1750-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
乾燥重量:1525kg
最高速:249km/h(規制値)
0-100km/h加速:4.8秒
燃費性能:12.2-12.5km/L(WLTP値)
CO2排出量、英国道路税率:182g/km(WLTP値)、35%

フォルクスワーゲンTロックR 4モーション

価格:3万8450ポンド(546万円)
エンジン:1984cc直列4気筒ターボ
パワー:300ps/5300-6500rpm
トルク:40.8kg-m/2000-5200rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチオートマティック
乾燥重量:1575kg
最高速:249km/h(規制値)
0-100km/h加速:4.8秒
燃費性能:11.5km/L(WLTP値)
CO2排出量、英国道路税率:176g/km(NEDC基準)、37%

1位:スペースと快適性ではTロックに一歩譲ものの、よりドライバーとの一体感を感じさせる。最高のホットハッチではないが、最高のクロスオーバーのライバルを退けるだけの実力は備えている。 2位:部分的には素晴らしく多才なモデルだが、決してその見た目以上の実力を発揮することはなく、インテリアもダイナミクス性能もその価格を正当化するものではない。

番外編:ホットハッチのライバルたちを振り返る

ルノー19シャマド16V(1990年)

ゴルフGTIとエスコートRS200を上回るドライビング性能を備えているとも言われる、このホットハッチをベースにしたサルーンモデルは、驚くほど平凡なスタイリングの1070kgのボディに144psのエンジンを組み合わせて前輪を駆動していた。

ハンドリングも素晴らしく、BTCCにも参戦しているが、ハッチバックモデルほどの人気を得ることは出来なかった。

ヴォクゾール・ザフィーラVXR(2005年)

ルノー19シャマド16V

「ザフィーラVXRとは、オートマティックギアボックスを積んだランサーEvo以来、もっともその登場した目的が分からない1台だと言えるだろうか?」

240psを発揮するエンジンに6速マニュアルギアボックスを組み合わせたこのヴォクゾールが創り出したホットなMPVに対するロードテストは、見事なサプライズとなるはずだったが結果は違った。

まるで馬車の時代からそのままやって来たような野蛮な乗り心地に加え、シャシーも期待されたほどの能力を感じさせることはなかった。

プジョーRCZ R(2014年)

シャマドよりも魅力的なフランス製ホットモデルの1台だ。

270psを発揮するRCZ Rはプジョー史上もっともパワフルなモデルとして、ダブルバブルルーフに代表されるひとも羨むような見事なスタイリングを与えられていた。

乗り心地は硬いがLSDによって自由自在に楽しめる正確なハンドリングに加え、サイズは小さいもののふたつの実用的なリアシートまで備えている。