入社が難しい有名企業ランキング。1位は三菱地所、2位三菱商事、3位東急不動産。

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2019年卒版「入社が難しい有名企業ランキング」のトップは三菱地所。本社は東京・大手町の大手町パークビルにある (写真:Ryuji/PIXTA)

就活スケジュール」でいけば、3月から就活生への広報活動が解禁となり、本格的な就活が始まる。

しかし、昨年から各社が力を入れるインターンシップがすでに始まっている。企業は学生とのつながりを持ち、つなぎとめてきている。


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学生の間では「○○社が内定を出した」などという噂が飛び交う時期でもあるという。企業の採用支援を行っているワークス・ジャパンの清水信一郎社長は「今は各社とも広く学生を囲い込む時期で、学生にきついことは言わずに集め、学生は就職先の業界を絞っていく。ところが、企業は3月末頃になると採用者を絞り始め、選に漏れた学生は焦るということになる。いってみれば就活のこれからが佳境」と言う。

大学選びも将来の就職を意識

学生にとって就職は大きなことだが、大学・学部選びをする受験生や保護者にとっても同じだ。今は入試の真っ最中だが、就職状況を見ながら、大学・学部を選んでいくのは当たり前のことになっている。高校でもキャリア教育が行われ、就職への意識は高い。その中で、有名企業にはどのようなレベルの大学から入社しているのだろうか。

それを知るため、「入社難易度」という指標を作った。これは、大学通信が各大学にアンケート調査を行っている「有名企業419社への就職者数」の結果に、駿台予備学校が実施している模試難易度をあわせて算出している。419社は日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定している。

算出方法は次の通りだ。まず、各大学・学部(医学部と歯学部を除く)の難易度を平均した値で各大学の難易度を算出する。仮にA社の就職者が東京大6人、上智大4人、早稲田大5人だったとする。東京大の学部平均難易度は69.4で、全大学でもっとも高い値だ。上智大は62.7、早稲田大は64.8になる。

A社の平均入社難易度は、(東京大69.4×6人+上智大62.7×4人+早稲田大64.8×5人)÷(東京大6人+上智大4人+早稲田大5人)=66.08になる。表記上は、小数第2位を四捨五入し、66.1が入社難易度だ。

なお、ランキングは就職判明者が10人以上の企業に限っている。また、慶應義塾大は3人以上の就職先しか公表していないため集計対象からは除外している。同率で順位が異なるのは小数点第2位以下の差による。

その結果、トップは三菱地所で、入社難易度は65.2となった。昨年の3位からトップに躍り出た。大学別就職者数を見ると、トップは慶應義塾大の8人、次いで東京大、京都大、早稲田大が各5人、一橋大4人の順だ。65.2というと、京都大の66.2と国際基督教大の65.0の間になり、かなり高い。

1位三菱地所、2位三菱商事、3位東急不動産

2位は昨年トップだった三菱商事の64.1、3位が東急不動産の63.7で、昨年の29位からの躍進だ。4位が日本経済新聞社の63.7、5位は伊藤忠商事の63.5となった。不動産会社と総合商社が強い。5大商社の内、4社がトップ10に入り、丸紅は15位だった。5大商社を受ける難関大の学生は全社受けている可能性が高く、どこかに就職できていると見られるため、入社難易度も揃っているようだ。

一方、躍進した東急不動産について、清水社長はこう分析する。

「デベロッパーは総合商社の就活の構図に似ていて、志望する学生は三菱、三井、住友、東急、野村などはみんな受ける。その中で東急不動産は電鉄系で、インフラ系企業を受けながら駅中心の街作りも考える学生など、幅広い希望者が受けていると見られる。しかも若者に人気の渋谷の再開発を行っていることや、採用が少なく、転勤がなさそうなことも人気で、難関大からの就職者が多くなったと思われる」

マスコミも人気の高い業種で、入社難易度の高い傾向にある。新聞社では日本経済新聞社が4位で昨年と変わらず新聞社トップ。次が39位の読売新聞社、84位の朝日新聞社の順だ。出版では講談社が7位、KADOKAWAが18位だ。テレビ局ではTBSテレビが10位、テレビ朝日が12位、日本テレビ放送網が14位だった。

一方、学生の人気に陰りがみられる銀行の入社難易度はそれほど高くない。ただ、昨年よりは入社難易度が上がっている。トップの三菱UFJ信託銀行が60.6で昨年の114位から54位、三井住友銀行が60.1で昨年の121位から67位、商工組合中央金庫が59.9で、昨年の182位から76位に躍進している。採用数を減らしたことで、優秀な学生の入社割合が高くなったためと見られる。

業種ではマスコミの難易度が高い

総じて入社難易度が高くならないのがメーカーだ。採用人数が多く、いろいろな大学から幅広く採用していることも影響している。


清水社長は注目企業としてニトリを挙げる。この3年で282位→223位→102位とアップしている。清水社長は「500人前後採用している中、順位が上がってきている。難関大からの採用も増えていると思われる。入社すると、すぐにアメリカ研修があるのも魅力。製造・小売業だが、創業者の似鳥昭雄氏を慕う学生も多く人気企業になっている」と言う。

採用している大学を見ると、早稲田大40人、立命館大36人、北海道大30人、中央大と関西大27人など。東京大11人、京都大10人おり、旧7帝大から合計で130人採用している。旧7帝大を130人以上採用しているのは、他にトヨタ自動車日立製作所など日本を代表するメーカー7社だけだ。

次に業種別の入社難易度を見てみよう。企業別の表に出てくる企業の中でも、業種としては出てこないところもある。対象を4社以上の業種に限っているためだ。

トップは昨年2位の放送だ。2位が新聞、3位が広告で、4位が商社、5位が出版となっている。マスコミが上位を占めているのは、採用が少ないうえに、筆記試験が課されることが大きい。企業の中には採用が特定の大学に偏ることを避けるが、マスコミにはそれがないことも難関大からの採用者が多いことにつながっているようだ。

409社の平均難易度は56.7と高く、これ以上の大学は47校しかない。みんなが入りたいと思う企業は、まだまだ難関大からの採用が多いということにほかならない。





【表の見方】
大学の就職者数は、各大学へのアンケート調査と企業からのデータを使用した。未回答の大学は掲載していない。また、一部の大学は大学院修了者の人数を含んでいる。有名企業419社は、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に大学通信が選定した。社名はアンケート上の名称。

難易度は、駿台予備学校全国マーク模試(合格可能性80%)を使用した。全データから、2部・夜間主コース、医学部医学科、歯学部歯学科、私立大センター利用入試を除いた難易度の平均を学部平均難易度とし、その平均値を各大学の平均難易度とした。ただし、センター利用入試のみの私立大はセンター利用入試のデータを使用した。

企業難易度は、大学の平均難易度×その大学からの就職者数を企業ごとに合計し、その企業の就職者数の合計で割り算出した。同じ難易度で順位が異なるのは、小数点第2位以下の違いによる。