北京市内の団地の前では体温がチェックされ、パスがないと出入りできない(2020年2月13日)

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新型コロナウイルス肺炎に対する判断基準が変化したこともあり、中国では新型肺炎の患者数が急増している。2020年2月14日現在、全中国で確定した感染者数が6万3932人(前日比5088人増)で、感染の可能性のある患者も1万109人(同2450人増)いた。一方、治療をうけて治った人は6761人だった。

そうした中、日本政府や企業、個人による中国への寄付などの情報がネットなどで流れると、病気と戦っている中国市民の中で、日本に対して親しみを感じる人が急増している。

自民党国会議員の寄付ニュースは2600万回のクリック

2月10日に「自民、党所属国会議員から5000円天引きして中国支援」というニュースが中国のSNSで流れると、瞬時に中国国内の各サイトのトップページに掲載され、こうした日本の与党の行動がネット上で絶賛される事態となった。

新浪ネットが運営しているミニブログだけでも関連ニュースにたいして10日の一日だけで2644.8万回のクリックがあった。その後もブームが継続している。

日本関係のニュースの下にはネガティブなコメントが多いが、今回については

「日本政府から民間まで中国への支援を心より感謝する」
「非常に感謝している」

など日本について感謝する言葉でほとんどと埋められている。中には、

「5000円は人民元にすると300元じゃないか。少ないね」

というコメントもあったが、その下には、

「金額の問題ではない。日本の政治家も中国が疫病と戦っているのを支援しているじゃないか」

などの反論のコメントが殺到した。

さらに、12日に中国版LINEといわれるWeChatのアカウント「牛弾琴」が

「日本はここまでやり、中国はどう返礼すればいいだろうか」

とつぶやくと、数時間で10万件を超えるクリックとなった。WeChatでは「日本国民の寄付」が多く言及されている。

民間企業も医療機器など続々支援

中国では、2008年に四川省で大地震が起き、その時も、日本企業は多額の資金を寄付した。今回の新型コロナウイルス肺炎では、まだ、診断するのが非常に難しく、医療機器に対する需要も極めて高い。

日立グループは1月25日からの春節休みにもかかわらず、武漢の新型肺炎の情報が入るとすぐ、中国の政府機関に問い合わせ、もっとも必要とする医療機器を同社の製品から選び、2月10日にコンピュータ断層撮影(CT)装置「Supria16(5M)」と関連の医療物資、さらに支援金を武漢に寄付した。

富士フイルムは2月7日にデジタルX線撮影システム、医療用レーザープリントなどをトラックに載せて湖北省のいくつかの市とその下にある県に運び始めた。

「これからどんどん湖北の病院などに医療設備を届ける。富士フイルムグループとしては総額1.1億円の設備や物資を寄付する」

と、富士フイルム(中国)投資有限公司広報部の史咏華部長は言う。

2月2日に東京から帰ってきたAGC中国総代表の上田敏裕氏は、2月10日に河北省承徳市豊寧県の県立病院で、空気感染防止に効果がある医療用「N95マスク」が不足していると聞き、日本から持ってきたN95マスク40枚全部を同県の病院に寄付した。

「今N95を必要とするのは私のような者ではなく、医療従事者だと思いますので、わずかな量ですが、できることをする、これが私なりの協力です」

と上田さんは筆者に言った。

政治家から日系企業、日系企業に勤務している幹部社員がそろって中国の疫病と戦う行動を支援が伝えられるたび、中国人の日本に対するイメージは数段と引き上げられている。WeChatの牛弾琴は、「かならず恩返ししなければならない」とつぶやいている。

(在北京ジャーナリスト 陳言)