「いつも何者かに守られている──そんな実感があるからこそ、イリュージョニストという仕事を、長年、続けていられるのかもしれません。」(撮影:木村直軌)

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世界的に活躍するイリュージョニストのプリンセス天功さん。そのプロフィールは謎につつまれ、数々の伝説的なエピソードで知られています。一歩間違えれば死につながるステージを重ね、世界中のVIPたちを魅了し続ける秘訣とは──(構成=内山靖子 撮影=木村直軌)

【写真】「引田天功」を襲名するために出された条件は

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運を引き寄せる力は誰にも負けない

初代・引田天功の名前を受け継いでから、危険な脱出イリュージョンで命にかかわるような大ケガを、これまでに何度も経験しています。それでも現在も世界各国を回って、年間300回ものステージをお見せすることができるのは、我ながら運が強いのかもしれません。

ひょんなことから、幸運が舞い込んでくることもよくあります。たとえば、5年ほど前のこと。私のショーのスタッフやメンバー全員で宝くじを買おうという話になったんです。同じ宝くじ売り場に並び、1人1枚ずつ買って、運試しをしようって。そのときも、当たったのは私だけ。何等かはナイショですけど(笑)、買った瞬間に、「ああ、絶対に当たるな」と、その場でピンときました。

ちなみに、その宝くじを買ったとき、いつも連れているサイベリアンという種類の猫を抱いていたんです。その子の運もあるのかも。みんなから「その招き猫、宝くじを買うときに貸して!」と、ひっぱりだこになりましたね。

マジックショーの最中に、顔面に剣が突き刺さりそうになったとき、どこからか天使が舞い降りてきて、大きな羽をフワーッと広げて私を守ってくれたように感じたこともありました。

脱出イリュージョンで事故が発生し、地上20mの高さから真っ逆さまに落ちて地面にたたきつけられてしまったときも、肩の骨が粉々になることもなく、その後も後遺症はまったくありません。

いつも何者かに守られている──そんな実感があるからこそ、イリュージョニストという仕事を、長年、続けていられるのかもしれません。

「18歳まで生きられない」と噂をされて

そもそも、私が二代目・引田天功を襲名することになったのも、不思議な運命の流れから。生まれたときから体が小さかった私は、しょっちゅう熱を出したり、全身に湿疹が出たりして、外で満足に遊ぶこともできないほど病弱でした。

そのため、周囲の人たちは、成人するまで元気でいるのが難しいのではないか、18歳まで生きられないのでは……などと噂をしていて。私もそれに薄々気がついていました。

でも、「18歳までしか生きられないなら、自分の好きなことを存分にやりなさい」と母に励まされ、舞台女優になろうと決心。たまたま母の従兄弟が引田天功事務所の社長をしていたこともあり、そのツテをたどって、高校を辞めて新潟からひとりで上京したのです。

当初は舞台女優の勉強になるからと、初代のアシスタントとして一緒にステージに立つこともありました。その後、いちど事務所を離れ、アイドル歌手としてデビュー。ところが、そんな中、初代が心筋梗塞で突然亡くなってしまった。

いったい誰が後を継ぐのかとなったときに、「人にはカルマというものがある。あなたならできるから、天功の名前を継ぎなさい」と、ベテラン男性のお弟子さんたちを差し置いて、後援会の方々などからなぜか私が強く推されたのです。天功の名を襲名するにあたっては、先代が手掛けていた脱出ショーを引き継ぐというのが条件でした。

もちろん、とても怖かった。先代が亡くなる前に代理で出演した脱出ショーでは、大爆発したせいで両耳の鼓膜が破れちゃいましたからね。でも、もともと18歳までしか生きられない命だったのだと思えば怖くない。万が一、ショーの最中に死んでしまったとしても、みんなが私の名前を憶えていてくれるならそれでいいと覚悟を決めて、二代目を継ぐことにしたのです。

当時の私はまだ10代でしたから、「なぜ、あんな女の子が?」というバッシングや陰湿ないじめもたくさん受けました。楽屋に大道具を置かれて使えなくなったり、ステージで使うハトを殺されてしまったことも……。

歌と踊りとマジックを合体させた私のショーを見て、「歌手でも俳優でもないくせに。そんなのマジックとは認めない!」と、さまざまな方面から非難されることはしょっちゅうでした。でも、「私が二代目を継ぐ以上、これまでの日本のマジシャンとはまったく違うショーをやります」と宣言し、中国やエジプトのイリュージョンの歴史を学んだりもしました。

そんな私なりのステージが「独創的!」と、ディズニー社の目に留まり、ハリウッドにあるクラブ「マジックキャッスル」から招かれて、“プリンセス・テンコー”としてアメリカでブレイクしたおかげで、今日の私があります。

多種多様な価値観の人たちが暮らしているアメリカでは、なんでもストレートに自分の意見を言わなければ伝わりません。実力さえ伴っていれば、それで「生意気!」と言われることがないのも、私の性格にはピッタリでした。

ちなみに体調に関しては、いつの間にかすっかり健康になって。いまでは「内臓美人」と呼ばれるくらい。幸運と言えば、それももちろんラッキーなことですが、自分のやりたいことが自由にできるアメリカという国に出会えたことが、私にとっては人生最大のラッキーだったのではないかと思います。

100%の努力なしには幸運の女神は微笑まない

もちろん、今日の私があるのは単に運がいいからだけではないでしょう。ステージに関しては、毎回100%の努力で臨み、1年365日、1日24時間、常に新しいショーのことだけを考えています。

新しいショーのアイディアは、毎晩のように夢で見ています。それを枕元に置いてある紙に鉛筆で書き留めて、その夢をどうしたら具現化できるかをスタッフと話し合い、実際のショーとして創り上げていく。

水の上を歩いたり、空中に浮かんだり、なにせ元は夢ですから、現実化するのが難しい場合もしょっちゅうです。決して妥協はできません。アメリカのショービジネスの世界では、誰でも最大限の努力をするのが当たり前。それでもヒットするかどうかはわからない。

でも、結果はどうあれ、とにかく精一杯の努力をしなければ、幸運の女神は決して微笑んではくれませんからね。

ショーでは、子どもからお年寄りまで、また、どんな国や文化の人でも楽しんでいただけるように、常に多角的な視点からステージを見つめて構成を考えています。

「ここで動くはずだった機械が作動しない」など、万が一、予期せぬトラブルが起こった場合でも、「AがダメだったらB、BがダメだったらC」と、二重三重にトラブルを回避する手段を考えてあるので、絶対に失敗はありません。

ステージに上がる前に、他のマジシャンやイリュージョニストの方は地面にキスしたり、胸の前で十字を切ったりすることが多いですけど、私は何もやりません。ステージには左足から出たほうがいいなんて言われますけど、右足から出ても成功していますし(笑)。そもそも、人前に出ても「あがる」とか「緊張する」ということが、子どもの頃からまったくない性格なので、ジンクスは特に必要ありません。

その代わりというわけではないですが、世界のさまざまな土地に行ったとき、邪気を浄化してくれるような場所は訪れます。たとえばハワイではガイドの方に、観光客が行かないようなスラム街に連れて行かれて。そこには地元でも知る人ぞ知るという、パワーをもった樹がありました。両腕で幹を抱きしめてからステージに上がりましたね。

こうして、物理的にも精神的にもステージに力を注いでいることと、世界中の人から「最も縁起のいい日本人」と思われているおかげで、普通では簡単に会えないような方にも「一度会ってみたい」と言っていただけるのかもしれません。

「頑張っているから」と軍用犬をプレゼントしてくれたロシアのプーチン大統領、中国政府からは、「国を挙げて応援するから中国人にならないか?」と勧誘されましたし、パトリック・ルイ・ヴィトン(創始者ルイ・ヴィトンの5代目直系子孫)は、「脱出用の箱を設計してあげる」と申し出てくれたり……。アラブの王様の誕生日に、「テンコーのショーを観たい」と呼ばれたこともありました。

生きている限り、“プリンセス・テンコー”で

アニメのキャラクターやバービー人形にもなった“プリンセス・テンコー”のイメージを決して崩さず、生涯ステージに立ち続けるという契約をアメリカの会社と結んでいるので、この先も、生きている限りステージを降りることはありません。ケガをしたときなど、「もう、やめたい」と思うこともしょっちゅうです。でも弱音を吐こうものなら、「生涯契約があるでしょ!」と、アメリカのマネージャーに叱られます。(笑)

年齢とともに体力が落ちていくこともあるでしょうけど、世界中の訪れた先で、いいと言われる美容法や健康法はすべて試し、その中でベストだと実感したことを、日々、実践しています。

たとえば、お風呂に入るときはドイツの入浴剤を通常の2倍入れ、イギリスで教えてもらったオイルを全身に塗ってそのまま湯船に入り、体を洗うときにはイスラエルの石を使うとか。疲れたらすぐに栄養補給の点滴も受けますし。

そうそう、アメリカのプロアスリートの間では常識になっている、1日で骨がくっつく医療器具があって。先日ついに日本の大学病院にも導入されたんです。これで万が一、日本のショーの最中に骨折しても安心です。

ラスヴェガスの家で飼っているホワイトタイガーやサーバルキャット、マウンテンライオンなどのペットたちからもエネルギーをもらっています。ホワイトタイガーは赤ちゃんのときから飼っているのでちっとも怖くはないけれど、「お手!」と言うと、前足をものすごい力で私の手の上に振り下ろしてくるので、思わずひっくり返ってしまったり。それでも、パワフルな動物たちからもらえる元気は計り知れません。

それから、自宅の敷地内には自分で作ったパワースポットがあって。イタリアの別宅の敷地内には山があって、その中で太陽の光が集中的に当たる場所を見つけ、石で円陣を組んで、パワーを集めています。石は通販で購入しています。(笑)

世界中、行けるところにはほとんど行き、さまざまなことに挑戦してきましたが、これからやってみたいこともあります。まず、もし可能ならば火星に住んでみたい。火星の地下で暮らせる設備を作っているという話をペンタゴンのスタッフに聞いたので。

あとは、3年後くらいに、子どもを産んでみようと思っています。インドに70代で出産した女性もいると聞きましたが、私は20歳のときの卵子を凍結保存してあるので、そろそろ解凍してもいいかなって。

人生もショーも、いつも同じことを繰り返していたのでは、自分自身が飽きてしまう。常に新しい運を呼び込んでいくためにも、これまでに誰も経験したことがない人生を、この先も歩んでいきたいと思っています。