森喜朗元首相

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森喜朗元首相の新財団は負のレガシー(2/2)

 東京五輪組織委員会の森喜朗会長が「一般財団法人日本スポーツレガシー・コミッション」なる組織を設立する背景には、「東京五輪終了後の剰余金の受け皿にするのではないか」(文科省関係者)との見方がある。その額は数百億円とも目される。自らを最高顧問に置くことで、五輪終了後も影響力を「レガシー」として引き継ごうとしているのか。

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【写真】週刊新潮が文科省関係者入手した内部資料

 文科省関係者いわく、この組織の立ち上げは、森氏がかねてより提唱する日本オリンピック委員会(JOC)と日本スポーツ協会(JSPO)の統合も見据えた動きであるという。

「現在はJOCが差配している各競技団体への強化費なども新財団がグリップすることになれば、巨大スポーツ利権集団が完成します」

森喜朗元首相

 設立を巡る一連の内部文書(前回参照)では、実は、「五輪」や「オリンピック」という単語は一切使われていない。例えば、〈事業〉の欄には〈国際大会等のレガシー活用促進〉といった記述があり、あえて「五輪」という単語を避けているようにすら見えるのだ。

「新財団の事業の欄に『オリンピックレガシー』と書けば、東京都の小池百合子知事の存在を無視して財団を作るわけにはいかなくなる。オリンピックという単語を使わないことで、小池さんに余計な邪魔をされることなく財団を作ろうとしているのでしょう。この新財団の構想自体、小池さんには全く知らされていないはずです」

 この点、小池知事に取材を申し込んだところ、

「都としては、ご質問の新財団の設立について、具体的な目的や設立日程などの詳細は承知していない」

 東京五輪マラソンの「北海道・札幌開催案」が国際オリンピック委員会(IOC)から提案された際にも露骨な「小池外し」が行われたが、同じことが繰り返されているわけだ。

 一連の経緯について森会長にも取材を申し込んだが、

「各スポーツ大会の経験をレガシーとして承継することを真剣に考えておられる方々が『日本スポーツレガシー・コミッション』を設立しようとされていることは承知しております」

 との回答が寄せられたのみであった。

「誰から誘われたのか」

 新財団の評議員となる予定の組織委の武藤敏郎事務総長に聞くと、

「遠藤さん(※理事長に就くとされる遠藤利明元五輪担当相)がやるのでよろしくっていう話はありました。それだけ。だからどんなものになるのか詳しくは聞いてないの。そのうち聞けるんだろうとは思うんだけれど、今は聞いてない。まだそこまでの状態になってないんじゃないかな」

 そう話すので、誰から“遠藤さんがやるのでよろしく”と声をかけられたのかを問うと、

「知らない」

 と、ごまかす。

 理事候補となっている味の素の伊藤雅俊会長にも、誰から誘われたのか聞いたが、

「ちょっとそれも……。まぁ、(日本)スポーツ協会の会長をしていますからね。その流れで。まあ、同じような団体がありますからね」

 やはり口を濁すのだ。

 評議員候補として名前が挙がっている日本財団の尾形武寿理事長にも同様の質問をしたところ、

「えーと、関係者とでも。その人の名前ってのは、私、別に隠すつもりはないのですが、まだ漠とした話なので。別に私は隠しているわけではなくて、その程度の話しか聞いていませんので」

 皆、一様に「誰から誘われたのか」を明かそうとしないのである。一方、新財団の関係者に、財団の設立は森会長が中心になって行われるのかどうか問うと、

「あー、たぶん」

 と認めた上で、新財団が五輪の剰余金の受け皿となる可能性についても、

「あるかもしれません」

 そう言うのだ。

 スポーツライターの玉木正之氏は、

「私は五輪後の『レガシー』を扱う組織、団体を作ることは否定しません」

 としながらも、

「ただ、そもそも森さんは組織委の会長を2018年で辞めるという旨の発言をしていたにもかかわらず、未だに続けている。そんな人が五輪後の『レガシー』までやると言い出しているわけでしょ? 『レガシー』自体は大事なことだけど、森さんが一体何をしたいのか、首を傾げざるを得ませんよ」

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏も憤慨する。

「今回の五輪は最初から最後まで森さんの独断専行型の企みが底辺にあった。そういう流れの中で、今度は五輪後の『レガシー』を謳って新財団の設立ですか。もういい加減にして欲しい。お金の流れを曖昧にしたまま、五輪後の剰余金を好き放題に使うなんてことは絶対に許されない。それこそ森さん自身が『負のレガシー』。これ以上その『負のレガシー』を継承し続けてはいけないのです」

 新型肺炎が五輪に与える影響も心配だが、その前にまず森会長を“封じ込める”必要がありそうだ。

「週刊新潮」2020年2月13日号 掲載