堀江貴文氏が「物々交換」との類似点を指摘するクラウドファンディングとは?(写真:SNS media&consulting)

「お金を貯めるな、信用を貯めろ!」

このように語るのは、現在進行形でさまざまなビジネスを手がける堀江貴文氏だ。

「1万円札」に「1万円分」の価値があると信じて疑わない日本人は大多数だろう。しかし、お金の「本質」を知らずにいては、必ずバカをみる。

今回、堀江氏が解説するのは「クラウドファンディング」。この広い世の中にはお金が余って仕方がない、という人もたくさんいる。そういう人たちからポンポン「投げ銭」してもらい、面白いビジネスにチャレンジしよう、というのだ。

氏の最新刊にして、マネーの教科書ともいうべき著書『99%の人が気づいていないお金の正体』から一部を抜粋して紹介する。

ニューヨークの街を歩いていると、どこの公園でもジャズミュージシャンやダンスユニット、パントマイムのパフォーマーなどがストリートショーをやっている。アメリカには寄付文化が根づいているから、通行人はニコニコ顔で1ドル札を投げ銭する。地下鉄に乗っていると、アコーディオンを弾きまくりながら車両から車両へと渡り歩き、なかば強引に投げ銭をもぎとろうとする猛者までいる。

日本では長らくこうした投げ銭文化が途絶えていた。

クラファンで集めたお金でロケットが空を飛ぶ

しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに、全国各地で募金や寄付がさかんになった。被災地を復興させるため、東京から移住して現地にNPO法人を立ち上げた起業家も大勢いる。

活動資金を集めるために、クラウドファンディングという手法も使われた。活動方針に賛同したネット上の群衆(crowd)から投げ銭を募ったのだ。見返りとして、「メールマガジンを配信」「地域の特産品をプレゼント」といった特典が贈られることもあった。

2013年には、津田大介さんと東浩紀さんがチェルノブイリ原子力発電所を取材しにいくプロジェクトを立ち上げ、600万円以上もの取材資金がクラファンで集まった。取材費が乏しいフリーランスのジャーナリストや、インディーズ(独立)系の映画監督が、ネット上で100万円単位の資金を集めて記事を書いたり作品を作ったりできるようになったのだ。

僕が北海道大樹町(たいきちょう)で挑戦しているロケット打ち上げプロジェクトでも、クラファンを利用して資金を集めている。「打ち上げに失敗して炎上したロケットの破片をプレゼント」(5万円)というシャレのきいたコースを設けたら、これがけっこう人気を集めた。「ロケット発射ボタンを押す権利」(1000万円)にも申し込みがあった。本当にありがたいことに、2000万円を超える金額が集まった。

「価格自由」という、変わりダネのクラファンもある。

2019年5月、幻冬舎の名物編集者・箕輪厚介君が、光本勇介さんというイノベーターの新刊『実験思考』を発売したのだが、紙の書籍は原価の390円で売り出され、電子版はなんと無料で公開された。そして、本の最後に載っているQRコードにスマートフォンをかざすと、投げ銭のページにジャンプする。この方式で、光本さんはなんと1カ月で1億円を集めたのだ。

2019年7月には、僕も『ハッタリの流儀』という本(これも箕輪君の編集だ)を発売して「価格自由」をやってみた。返礼品として「一緒にマージャンする権利」(10万円)、「ホリエモンチャンネル出演権」(50万円)、「LINE交換」(100万円)、「1日密着権利」(300万円)、「結婚式に参列してもらう権利」(1000万円)などを設定したところ、約1億5000万円が集まった。

クラファンや「価格自由」が当たり前のように世の中に浸透すれば、イノベーターやクリエイターが面白いことにどんどん挑戦できる社会にきっと変わっていく。

お金が余っている人にカンパを「おねだり」

「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」というクラファンのサービスを立ち上げた家入一真さんが、2017年に「polca(ポルカ)」という面白いサービスを始めた。通常のクラファンは顔の見えない不特定多数を相手に投げ銭を呼びかける。対するpolcaは、募集のURLを知っている人だけがアクセスできるため、支援者が友人知人に限られる。つまり「フレンドファンディング」というわけだ。

たとえば「北海道大樹町でスナックを開業したい。まずは現地を視察したいから応援してください」と呼びかけて、100円でも200円でもいいから投げ銭してもらうのだ。

お金が余っている、という人がこの世の中にはいくらでもいる。頑張っている青年がいれば、ノリで1万円、2万円をポンポンとカンパしてくれたりする。


「価格自由」を成功させた箕輪君は、渋谷のスクランブル交差点のド真ん中に本が置かれている様子をイメージしているのだという。本の周りに集まった何千人、何万人という読者が1冊の本を読み終えて「テンション爆上がり」しているというのに、そっと本を閉じておしまい、というのではもったいない。寄席で大笑いした客がステージにオヒネリをバンバン投げるように、その興奮が冷めやらぬうちにこちらからチップをもらいにいこう、というのだ。

ネットという技術革新によって、顔の見えない者同士が直接つながる「ピア・トゥ・ピア」が実現した。クラファンで1000万円単位の資金が集まるとなると、上場企業や投資ファンドの存在意義は遅かれ早かれ消えてなくなる。

ネットの本質の一つには「中抜きを省く」というものがある。なるほど、ネットが個人と個人をダイレクトに結びつけてくれたおかげで、お金も手間も省けるようになった。

そして、この風景にはどこか既視感がある。そう、僕たちは「物々交換」という商取引の原点に再び立ち返っているのだ。