失敗したらアニメ界を去る――ノイタミナ躍進の15年間を支えた、制作陣の「覚悟」

「いつか月9でアニメを編成したい。そのためには“アニメはオタクのもの”というイメージを払拭する必要があった」

そう切り出したのは、フジテレビのアニメ開発部長であり、2020年に15周年を迎える「ノイタミナ」の発起人のひとりでもある松崎容子だ。

ノイタミナといえば、『ハチミツとクローバー』を皮切りに、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『PSYCHO-PASS サイコパス』など、深夜アニメの枠を超えて愛され続ける人気番組を送り出してきた枠。

そんなノイタミナの創設秘話から現在までの変遷と、放送作品の裏話を、松崎とともに振り返っていく。「一度だけノイタミナを終わらせようかと思った」「この作品がコケたらアニメから足を洗う覚悟だった」など、衝撃発言も飛び出した。

ノイタミナはいかにして、長寿番組枠となったのか。不動のブランド力を築き上げるための戦略とは? ノイタミナ15年の歩みのすべてが、今明らかとなる!

取材・文/岡本大介
©羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会 ©矢沢漫画制作所/祥伝社・パラキス製作委員会 ©1993,2006 INA,Inc./白泉社/獣王星製作委員会 ©安野モヨコ・講談社/働きマン製作委員会 ©二ノ宮知子・講談社 のだめカンタービレ製作委員会 ©モノノ怪製作委員会 ©水木プロダクション・墓場鬼太郎製作委員会 ©よしながふみ・新書館/西洋骨董洋菓子店製作委員会

「いつか月9でアニメを編成したい」から始まった

2020年は、ノイタミナが誕生して15周年です。改めて、立ち上げから関わっていらっしゃる松崎さんにノイタミナ誕生の瞬間を伺いたいと思います。
すべての発端は、金田耕司(現:株式会社フジテレビジョン 編成制作局マネージメント局長)が「月9でアニメをやりたい」と言い出したことから。2003年ごろの飲みの席で「俺には夢がある。いつか月9でアニメをやりたいんだ」と。最初は「このおっさんはいったい何を言っているんだろう?」と思ったんですが(笑)、でも話を聞くうちに「いいこと言うじゃん」って思って。

フジテレビのジャンルはバラエティ、ドラマ、報道、情報、スポーツ、ドキュメンタリー、アニメの7つに分類されるんですが、金田は「表現技法がアニメーションなだけで、アニメはドラマなんだ」と言うんです。だったら月9でアニメをやってもいいじゃんっていう論法で、その布石として作ったのがノイタミナなんです。
いつか月9でアニメを放送するために、まずは深夜帯に1クールの枠を作ろうと。
そのためには、まず「アニメはオタクのものである」というイメージを払拭する必要があり、とくに初期は女性層の取り込みを意識したラインナップになりました。
第1作の『ハチミツとクローバー』に始まり『Paradise Kiss』『働きマン』など、のちに実写化されたものも多く、これまでの深夜アニメとは一線を画す作品群でした。
ただ当時メディアから取材を受けた際に、私の言葉が足らなかったのか「ノイタミナは女性のために作られた枠である」と書かれたこともあって、「ああー、それは違うのに!」と思いました。
「アニメ=オタク」の図式を覆そうとしただけで、ピンポイントで女性をターゲットにしていたわけではないんですね。
はい。以降は「ノイタミナ=女性向け」というイメージが定着しないように意識して軌道修正しつつ、それでも実写ドラマとしても成立するような原作を選んでいきました。
▲松崎が作成した、ノイタミナの貴重な企画書の一部。『ハチミツとクローバー』『Paradise Kiss』のシンボルがあしらわれている。

社内の反応は厳しめ…それでも強引に突破した

「ノイタミナ」の語源は「Animation(アニメーション)」をローマ字で逆さに読んだものですが、どうしてこの名前になったんですか?
「それまでのアニメーションをひっくり返したい」という想いからです。当時、私と金田と、『run for money 逃走中』などを企画した高瀬敦也(現:株式会社ジェネレートワン代表取締役)の3人で、ホワイトボードが真っ黒になるまで延々と会議をしていたんです。

そのときに高瀬さんから出たタイトル案だったんですが、最初は「ひっくり返してノイタミナか。さすがにダサいっすかね、はは」なんて言っていたのが、その数時間後「これ、案外いいんじゃない?」という雰囲気になり、そのまま決まりました(笑)。
(笑)。24時25分という深夜帯にアニメ枠を作るというのは、当時のフジテレビ社内の反応としてはいかがだったんでしょうか。
やっぱり最初は渋られましたよ。当時アニメというのは一度始めたら数字が下がるまでやめられないものがほとんどで、1クール作品自体が珍しかったんです。しかもテレビ業界の常識としてアニメ、野球、まげもの(時代劇)の3つは広告が付きにくいジャンル。スポットCM(番組に関係なく、局が定める時間に挿入されるCM)でもこの3つは除外されるケースが多いですから。

ところが金田はブルドーザーのような人で(笑)、突破力がスゴいんですよね。金田が企画した番組に『B.C.ビューティー・コロシアム』があるんですが、女性の容姿をビフォーアフターで見せる内容なので女性陣から猛反発があったにもかかわらず、通しましたからね。
ノイタミナも金田さんの突破力で枠を勝ち取ったんですね。
もちろん立ち上げ当初からのパートナーであるSMEさんや電通さんなど多くの企業の協力あってこそですが、社内的には金田の力も大きかったと思います。
そして2005年4月にノイタミナ第1弾作品として『ハチミツとクローバー』(以下、『ハチクロ』)が放送されます。なぜ『ハチミツとクローバー』だったのでしょうか?
新番組の幕開けにふさわしい作品を探すためにスタジオさんを行脚しているときに、アスミック・エースさんが『ハチクロ』を2クール放送できるところを探しているという話を聞き、うまくマッチングした形です。

『ハチクロ』であればノイタミナのコンセプトにもぴったりだし、2クールならその後のラインナップの仕込みにも少しだけ余裕が生まれるので、これは願ったり叶ったりだと。
▲2005年〜2006年にかけて放送された『ハチミツとクローバー』。都内の美術大学に通う男女5人の恋模様を瑞々しく描いた青春群像劇。実写映画化、ドラマ化されるなど一大ブームとなった。
©羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会
スタジオ行脚をしていたんですね。
ほとんどすべてのスタジオさんやメーカーさんに伺って、ノイタミナの説明をしては「いい作品はありませんか?」とお願いして回っていました。ウチは2018年に新しく「+Ultra」というアニメ枠を立ち上げたんですが、同じようにスタジオ行脚をしていたら、ボンズの南(雅彦)さんから開口一番「ノイタミナのときのデジャブだな」って言われました(笑)。

ちなみに、その際に南さんから「よし、いいのがあるぞ」といただいたのが、「+Ultra」でやった『キャロル&チューズデイ』です。

『働きマン』ではネイルの色まで細かく指示

ノイタミナは立ち上げ当初から話題性も高く、クオリティの高い作品が多い印象ですが、松崎さんが作品に関わるうえでとくにこだわってきた部分はどんなところですか?
まずは「(深夜)アニメはオタクのものである」というイメージを払拭することが命題でしたから、一般層にも届くような話題作りや仕掛けにはかなり力を注いだつもりです。たとえば『Paradise Kiss』はファッションがとくに重要な作品だったので、デザイナーの田山淳朗さんに衣装デザインをお願いして。

紫(ユカリ)のキャストを山田優さんにお願いしたのも、あの青いドレスを着こなせる人は誰だろうって考えた結果なんです。
制作発表会見では、実際に山田優さんがドレスを着て登壇しましたね。
なんとしても山田さんにあのドレスを着てほしいと思って、それで会見をファッションショーにしたんですよ(笑)。
▲2005年放送の『Paradise Kiss』。原作は、『NANA-ナナ-』の矢沢あいによる人気漫画。ショーモデルにスカウトされた女子高生と、ファッションデザイナーを目指す青年が夢にまい進する。
©矢沢漫画制作所/祥伝社・パラキス製作委員会
俳優起用という点では、4作目の『獣王星』もKinKi Kidsの堂本光一さんや小栗旬さんがキャスティングされていますよね。
私は樹なつみ先生の作品が大好きなんですけど、アニメでやるならSFの『獣王星』だろうと思って選んだんです。でも広く一般層にまで届かせるためには少し地味だと感じて、堂本光一くんや小栗旬くんにお願いしました。堂本くんにはご自身のソロデビュー曲(『Deep in your heart』)まで主題歌として提供してもらって、おかげでかなり視聴率も取れました。
▲2006年放送の『獣王星』。謎の惑星に落とされた双子が、過酷なサバイバルに身を投じる。堂本光一が演じるトールの少年期を、高山みなみが務めた。
©1993,2006 INA,Inc./白泉社/獣王星製作委員会
ファッションという点では『働きマン』も印象的です。
これはもう、めっちゃこだわりました。私物のシャネルのジャケットやボッテガ・ヴェネタのバッグなどをアニメーターさんに渡して「これで描いてください」って(笑)。原作者の安野モヨコ先生からも「そこはちゃんとやってくれないと原作は渡せないよ」と言われていたこともあり、徹底的にやりました。
▲2006年放送の『働きマン』。週刊誌で働く編集者の女性を中心に、仕事に情熱を燃やす人々の奮闘を描く。松崎は、キャラクターのネイルの色の指定まで行ったという。
©安野モヨコ・講談社/働きマン製作委員会
服だけでなく、靴やネイルアート、アクセサリー、小物まで凝っていますよね。
アニメーターさんは本当に大変だったと思います。衣装関係の作画はもちろんですが、「ウィダーinゼリー」や「おかめ納豆」など、実在の商品をアニメでしっかりと描写することもなかなかないですから。でも最後の最後まで粘って頑張ってくれたおかげで、当時の最高視聴率を記録し、高い評価をいただくことができました。
『働きマン』に限らずですが、とくに初期のノイタミナ作品は普通のアニメでは目を付けないところにこだわっている印象があります。
それは私の担当作品の特徴かもしれません。『西洋骨董洋菓子店 〜アンティーク〜』では作中に登場するスイーツをすべてToshi Yoroizukaのシェフ・パティシエ、鎧塚俊彦さんに作っていただいたりもしましたし。鎧塚さんのスタジオでブツ撮りをして、それを資料にしてアニメで描いたんです。
アニメオリジナルのスイーツなんですね。
そうです。原作からのインスパイアもありますが、12話すべてでオリジナルスイーツを用意しました。この作品も5.8%という最高視聴率を取りました。
▲2008年放送の『西洋骨董洋菓子店 〜アンティーク〜』。さまざまな事情を抱えた男性が働く洋菓子店の日常ドラマ。原作は、『大奥』『きのう何食べた?』などで知られるよしながふみ。
©よしながふみ・新書館/西洋骨董洋菓子店製作委員会
お伺いしていると、こだわるポイントが実写的な印象を受けます。松崎さんは実写畑の出身だったんですか?
いえ、もともとはバラエティ志望だったんですが、アニメばかりやっているんです。『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』、『ONE PIECE』といった作品にも長く携わってきました。

でも私自身はアニメオタクではなくて、どちらかといえば漫画オタクなんですね。『ちびまる子ちゃん』も『ONE PIECE』も、原作漫画が大好きだったので「やらせてください!」と手を挙げてきたんです。
松崎さんの担当作品に漫画原作が多いのはそのためなんですね。
ただそれとは別に「いつかは実写化できないようなオリジナルアニメを作りたい」という気持ちもありました。もちろん最初からオリジナルができるわけもないので、ずっとチャンスを狙っていて、ようやく実現したのが『東京マグニチュード 8.0』でした。
©東のエデン製作委員会 ©東京マグニチュード8.0委員会 ©イラスト/中村佑介 ©四畳半主義者の会 ©「C」製作委員会 ©ANOHANA PROJECT  ©「UN-GO」製作委員会 ©ギルティクラウン製作委員会 ©小玉ユキ・小学館/「坂道のアポロン」製作委員会

ヒットには「ダメだったら死んでもいい」覚悟が必要

『東のエデン』に続く、ノイタミナとしてはオリジナル第2弾作品ですね。
実写でやったら最低でも10億円はかかるじゃないですか。でもアニメなら他の作品と同程度の予算でできるし、何よりこういうジャンルの作品をずっとやりたかったんですよ。
思い入れの強い作品なんですね。本作はファンのあいだでも根強い人気を誇っていますし、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門では優秀賞も獲得しましたよね。
ありがたい限りです。作品を作るにあたっては、脚本の高橋ナツコさんとボンズの南さん、ウチのプロデューサーでフジテレビ(港区台場)から成城(世田谷区)までを実際に歩いてロケハンしたんです。すごく暑い日で、大変だったのを覚えています。
それがあのリアリティにつながったんですね。取材協力も東京消防庁、海上保安庁、陸上自衛隊と多岐にわたっています。
内閣府や東京大学の地震研究所にも相談しましたね。もし実際にマグニチュード8.0規模の地震が起きた場合、東京タワーは増上寺(港区芝公園)側に倒れるとか、地盤も含めてすべて調べて作っています。
▲2009年放送の『東京マグニチュード8.0』。未曾有の震災に見舞われた東京で、幼い姉弟が生き延びようともがく。ニュースキャスター役で滝川クリステルの起用も話題に。
©東京マグニチュード8.0委員会
作中では名称がぼかされていますが、レインボーブリッジも崩壊していますね。これも調査をされたんですか?
相談はしたんですが、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の「レインボーブリッジ封鎖できません!」のときのように、関係各所の確認で一向に前に進まずで(笑)。

それで建設を請け負った会社に連絡をしてみたところ、地震への耐久に関してはマグニチュード7.8まではシミュレーションしていることがわかり、それを上回る8.0なら落ちる可能性はあるよねと。それでマグニチュードを8.0に設定したんです。
なんとしても描いてやる!という強い情熱を感じます。
ずっとやりたかった企画ですからね。私としては、もしこの作品がコケたら、金輪際アニメから足を洗うくらいの気持ちで臨んでいましたから。
そこまでの覚悟だったんですね。結果的には初回平均視聴率としては最高の5.8%を記録しましたよね。
いやあ、本当によかったです(笑)。作品作りって、誰かひとりは強い想いを持っていないとダメ。理屈でもって「こうすれば当たるだろう」で作られた作品は絶対に当たらない。
それはご自身の長年の経験から感じることですか?
そうです。我々はテレビ屋ですから、もちろんマーケティングを抜きに考えることはできませんが、やっぱり情熱が先に来るんですよね。「これがダメだったら死んでもいい」と思うくらいの情熱と覚悟を持った人が作品全体を背負うことって、ヒットには欠かせない条件なんだなと感じます。
▲ノイタミナ初のオリジナルアニメであり、初の映画化作品にもなった『東のエデン』。ノイタミナの第1作『ハチミツとクローバー』の原作者・羽海野チカがキャラクター原案を務めるなど、当時の総決算的作品ともいえる。
©東のエデン製作委員会
©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会 ©2015 丸戸史明・深崎暮人・KADOKAWA 富士見書房/冴えない製作委員会 ©森博嗣・講談社/「すべてがFになる」製作委員会

一度だけ、ノイタミナを終わらせようとした

15周年を迎えた今、ノイタミナのブランドは確固たるものになりましたが、ブランドを確立できた要因はどんなところにあったと思いますか?
作品そのものの力を別にすれば、わりと早い段階でクリエイターたちから注目を集めたことじゃないかと思います。というのも、現在は昨年MBSさんが深夜に全国ネットのアニメ枠を始められましたが、全国17局ネット、人口カバー率90%という深夜アニメの枠はほかになかったんですよね。

クリエイターの方々が、地方に住む家族に自分の仕事ぶりを見てもらうためには『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』といった国民的アニメに関わる以外になかったんです。
なるほど。だからクリエイターさんたちのほうから「ノイタミナでやりたい」と思ってくれたんですね。
今は他局もかなり広くカバーしてきているのでアドバンテージはないんですが、10年前くらいまではそれが強みでした。とある打ち上げで「上京してから地元に帰っていなかったんですが、この作品でクレジットが流れたことで地元の友人から連絡がきました」という話を聞いて、思わずもらい泣きしそうになりましたね。

かつてはノイタミナを終わりにしようかと考えたこともあったので、「ノイタミナはこの先も続けていかないといけないな」と強く感じた瞬間でした。
え? ノイタミナを終わらせようと考えたことがあったんですか!?
一度だけありました。部署全体に制作費削減の波が押し寄せてきた際に、ノイタミナの予算ってバカにならないなと思って。

部長という立場上、予算管理もしなくてはならないので、それも選択肢のひとつかなとポロっとこぼしたら、社内外の各方面から「ノイタミナを終わらせるなんて、お前はバカなのか?」とすごいバッシングされて(笑)。それで結局引っ込めることにしました。
そんなことがあったんですね…。しかし長く継続してきたことで、しだいに作家性の強いクリエイターたちが思いっきり腕を振るうことのできる枠に成長しました。
立ち上げてから5年くらいの創成期は「ノイタミナ作品が好き」と公言しても周囲から「え?」って思われない作品にするために、ビジュアル的にもエッジの効いたものを狙っていたんです。『モノノ怪』や『墓場鬼太郎』など「現代アートみたいでオシャレじゃない?」っていうような。
▲2007年放送の『モノノ怪』。2006年に放送された『怪〜ayakashi〜』の人気エピソードから派生した作品で、謎の薬売りを案内役に、5つの怪談が紡がれる。色彩豊かでトリッキーな映像表現が人気を呼んだ。
©モノノ怪製作委員会
従来のアニメに対するイメージを、意識的に変革しようとされてきたんですね。10周年の際に発行されたムック『ノイタミナクロニクル』でも、『怪〜ayakashi〜』や『モノノ怪』をお気に入りに挙げるクリエイターさんが多かった印象です。
それが成熟期に入ってくると、今度はビジュアル面だけでなく、作家性に特化した作品も増えてきたという印象ですね。
強烈な個性と付き合うプロデューサーとしてはかなり苦労されたこともあったと思いますが、振り返ってみていかがですか?
イレギュラーなスタイルに戸惑うことは多かったかもしれません。たとえば『Paradise Kiss』では、本打ち(シナリオ会議)をさせてほしいと何回言っても、小林治監督は「僕は本では伝わらない演出をしてしまいますから」と拒否られたり(笑)。
それを容認するプロデューサーサイドもなかなか器が大きいと思います。
ほかにも湯浅政明監督の『ピンポン』も本打ちがなかったです。湯浅さんが原作を独自に解体して、直接絵コンテで11話に仕上げているんです。いろいろとスゴいですよね?
▲『四畳半神話大系』の湯浅監督と再び組んだ『ピンポン THE ANIMATION』(2014放送)。『坂道のアポロン』(2012年)と『残響のテロル』(2014年)の渡辺信一郎監督など、ノイタミナは、クリエイターとの再タッグも多い。

『PSYCHO-PASS』はヒットの“勘”から生まれた

これまでに放送された68作品の中で、とくにターニングポイントになったと感じる作品はありますか?
個人的な思い入れが強いのはやっぱり『東京マグニチュード8.0』なんですが、いちばん意外だったのは『冴えない彼女の育てかた』ですね。それまでのノイタミナの作品群とはテイストが違っていて、いわゆるハーレム系ラブコメ。内心、視聴者の方はどう感じるんだろうとヒヤヒヤしていたんですが、思った以上に好意的に受け入れられたんです。

むしろ「ノイタミナもやっとここに来たか」とか「ようやく門戸を開いたな」という声も多くて(笑)。そのときは、これはひとつ壁を突破したなという感覚がありましたね。
▲2015年に第1期、2017年に第2期、2019年には劇場版が制作された『冴えない彼女の育てかた』。松崎の当初の不安を覆し、人気コンテンツに成長した。
©2019 丸戸史明・深崎暮人・KADOKAWA ファンタジア文庫刊/映画も冴えない製作委員会
「ノイタミナらしさ」という概念の枠を広げた作品ですね。
枠を広げたという意味では、初のBL作品となった『ギヴン』もそうかもしれません。じつは2008年に放送した『西洋骨董洋菓子店 〜アンティーク〜』も原作にはライトなBL要素があったんですが、当時は男性同士のベッドシーンはもちろん、キスシーンですら局の考査を通らなかったんですよ。

そのときのモヤモヤもあり、今度はしっかりと描写してやろうと取り組んだら、これがバズって映画化にもつながりました。
▲2019年放送の『ギヴン』。音楽を通して交流するようになったふたりの男子高校生が、互いの好意に気づいていく。春には、テレビアニメの続編となる新作映画が公開予定。
©キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
つねに挑戦し続けることが「ノイタミナらしさ」なのかもしれませんね。近年でいえば『PSYCHO-PASS サイコパス』という人気シリーズの誕生も大きなトピックスだと思います。
『PSYCHO-PASS サイコパス』のヒットは、そこから先のノイタミナの方向性を変化させました。それくらいインパクトのある作品なのは間違いないですが、じつはこれもビジネスありきで作られた企画ではなかったんです。
『踊る大捜査線』の本広克行さんを引っ張ってきたこともあり、大ヒットを宿命づけられていたものと思っていました。
もともとは亀山千広(現:株式会社BSフジ代表取締役社長)のアイデアで、「ウチの財産といえば本広さん。アニメをやればきっと面白いものになる」と、本広さんとProduction I.Gをお見合いさせたのが最初なんです。

本広さんはもともと大のアニメ好きで、すでに作品の構想も持っていたんですよ。それをそのまま具現化したのが『PSYCHO-PASS サイコパス』です。最初からビッグビジネスを考えていたわけではなく、言ってしまえば亀山の勘ですね。ウチの会社って、けっこう勘の産物が多いんです(笑)。
▲最新シーズンとなる『PSYCHO-PASS サイコパス 3』より。2012年の第1シーズン放送開始から8年、ノイタミナ作品の中で最も長く続くシリーズとなった。
©サイコパス製作委員会
2019年初頭には3部作の劇場版が公開され、10月にはテレビアニメ第3期が放送、さらに今春にはさらなる新作が劇場公開されるなど、依然として驚異的な勢いですね。
私も編成としていろいろな作品を見てきましたが、レギュラー放送の最終話に伏線を残して劇場版へ引っ張ったときに、ユーザーが怒ることなく、「そういうことか」って納得してくれるのってけっこう珍しくないですかね?(笑)

劇場展開も含めて受け入れてくださっているというか、みなさんがとにかく優しいなと。春公開の劇場版については、楽しみにしておいてくださいとしか言えません(笑)。
そこをあえて、一言だけ願いします。
うーん、去年公開された3部作映画の『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』にもまだ伏線が残っているんですが、今回の映画ではそれが回収されるかもしれません。ファンの方は「そんなことはわかってる」と思うかもしれませんが、これ以上は絶対に言えません(笑)。
©キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会 ©サイコパス製作委員会 ©ソニー・クリエイティブプロダクツ/「うちタマ?!」製作委員会

この15年で、視聴者の中に「ノイタミナらしさ」が醸成された

立ち上げから関わり、これまでに多くの作品を送り出してきた松崎さんから見て、「ノイタミナらしさ」というのはどんなところにあると思いますか?
自分ではよくわからないんですよね。世間ではこれはノイタミナらしいとか、逆にノイタミナらしくないとか、そういった概念が存在するのが不思議ですが、つまり視聴者側にそれぞれの「らしさ」が形成されているということですよね。

でも考えがそこに至ったときに「それってもはや月9じゃん」と思ったんです。月9もさまざまなタイプの作品を放送しては月9っぽい、月9っぽくないと言われ続けていますから。

だから視聴者さんの中に「らしさ」が醸成されてきたことがありがたいですし、それが参加するクリエイターさんたちのモチベーションにもつながっているのかなと思います。
クリエイターさんたちにとっては、まさにアニメ版の月9を手がける感覚に近いのかもしれませんね。
でもノイタミナを立ち上げた金田はいまだに「月9でアニメを流したい」という野望を持ち続けていますからね(笑)。アニメ版の月9から、いつか本当の月9になる日がくるかもしれません。
月9とノイタミナというのは、フジテレビのドラマ部門においての両輪になりつつある感じがありますね。
子ども時代に『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』を観て育った人が、「フジテレビのアニメって安心して観れるね」と思ってくれて、そのままノイタミナにきていただけたら最高だなと思っています。私はノイタミナのファンを増やすことがフジテレビのファンを増やすことになると信じてやってきましたから。

深夜アニメのビジネスモデルは視聴率からパッケージ、配信へと変化してはいますが、これからもその想いだけはなくしたくないです。
▲松崎が「個人的な思い入れが強い」と語る『東京マグニチュード8.0』。ノイタミナは、作り手たちの“野望”の受け皿であり続ける。
©東京マグニチュード8.0委員会
松崎容子(まつざき・ようこ)
1970年9月11日生まれ。東京都杉並区出身。O型。フジテレビ総合開発局メディア開発センターアニメ開発部長。テレビプロデューサー。『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』、『ONE PIECE』といった国民的アニメに企画や開発として携わったほか、ノイタミナの創設に尽力。以降、ノイタミナの名物プロデューサーとして数々のノイタミナ作品をプロデュース。

作品情報

TVアニメ『うちタマ?! 〜うちのタマ知りませんか?〜』
フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送中
https://uchitama.com/
©ソニー・クリエイティブプロダクツ/「うちタマ?!」製作委員会

クリアファイルプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、松崎容子さんよりアニメ『うちタマ?! 〜うちのタマ知りませんか?〜』のクリアファイルを抽選で2名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年2月14日(金)12:00〜2月20日(木)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/2月21日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
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