昨年末に行なわれたふたつの2歳GI戦、朝日杯フューチュリティS(12月15日/阪神・芝1600m)ではサリオス(牡3歳/父ハーツクライ)が、ホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)ではコントレイル(牡3歳/父ディープインパクト)が、いずれも人気に応えて完勝。それぞれ、無傷の3連勝でGIウイナーとなり、今春の牡馬クラシックにおける有力候補として、揺るぎない存在となった。


朝日杯FSで驚異的な強さを見せたサリオス

 JRA賞の最優秀2歳牡馬には、多くの票を集めたコントレイルが輝いたが、両者のここまでの実績、レース内容ともに甲乙つけ難い。2頭の今後のスケジュールがどうなるかわからないが、最高峰の舞台での対決が見られることを期待したい。

 年が明けてからは、GIIIシンザン記念(1月12日/京都・芝1600m)、GIII京成杯(1月19日/中山・芝2000m)という注目の重賞が行なわれ、前者は牝馬のサンクテュエールが制したものの、後者はクリスタルブラック(牡3歳/父キズナ)が豪快なレースぶりで勝利を飾った。

 さて、それらに続いて、今週はGIIIきさらぎ賞(2月9日/京都・芝1800m)、次週にはGIII共同通信杯(2月16日/東京・芝1800m)と、クラシックへの登竜門と言われるレースが行なわれる。それらのレースを前にして、現時点における3歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックを目指す3歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。


 1位は、前回に引き続きコントレイル。GIホープフルSを快勝して、さらに1ポイント伸ばした。

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「(個人的に)あくまで”2歳王者はマイルで決めるもの”といった考え方があるので、投票権のあるJRA賞の最優秀2歳牡馬には、サリオスに投票しました。ですが、コントレイルが圧勝した昨年のGIII東京スポーツ杯2歳S(2019年11月16日/東京・芝1800m)で大敗した馬たちがその後、自己条件でしっかり走れていること、イコール、東スポ杯2歳Sはそれだけ厳しいレースだったことを鑑みれば、現状、同馬が世代トップの評価となります。祖母が米2歳牝馬チャンピオンということを考えると、ここからクラシックへ向けては、やはり成長力が問われるでしょうね」

土屋真光氏(フリーライター)
「東スポ杯2歳Sは、勝ちタイムが強烈すぎたので、逆に(その実力に関して)半信半疑なところがありました。そのため、東京・芝1800mとは求められる適性がまったく異なるホープフルSでどんな競馬をするのか、自らの中で(同馬の実力に対しての)答え合わせをするような気持ちで見ていましたが、コントレイルは、そうしたこちらの意図をはるかに超える競馬を披露。サッと好位に取りついて、直線ではやや時計がかかる馬場も気にせず、涼しい顔で難なく抜け出してきました。

 馬場の違いを苦にしない、というよりは、馬場に合った走りを会得しており、しかも地の能力が高い。そんな印象を受けました。その走りっぷりを見て、なんなら追加登録して『英国ダービーを目指してもいいのでは?』と思うほどでした」

 2位も、前回と同じくサリオス。同馬も朝日杯FSを勝ったことで、総合ポイントは4ポイント上昇。コントレイルとのポイント差を、前回よりも縮めた。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「阪神の芝1600mで施行される朝日杯FSの位置づけは、2歳馬にとって最大目標の舞台であることに変わりはないと思っています。クラシックのGI皐月賞が中山・芝2000m、GI日本ダービーが東京・芝2400mで施行されることを踏まえれば、経験値を高める意味合いも少ないと見ていいでしょう。まして、サリオスは関東馬。本来であれば、皐月賞と同じ舞台のホープフルSに出走するのが定石です。

 それをあえてしなかったのは、オーナーサイドによる使い分けや、ライアン・ムーア騎手が騎乗できるレースでの使用など、いろいろな理由が考えられますが、最も重視したのは、(2歳戦最高峰の舞台で勝ち負けできる)今の完成度を考慮した、という印象が強いです。そして実際、朝日杯FSでは圧巻のレースを見せてくました。

 超大型馬のハーツクライ産駒で、き甲(馬の首と背中の間にある膨らみ)などの抜けや、全体のバランスなどからしても、まだまだ良化途上。つなぎが短めで、適度に柔らかみがある分、一瞬の脚を使ったり、一気のギアチェンジに対応したり、という脚もまだ足りないように見えます。とはいえ、搭載エンジンがすばらしく、心肺機能が高いことは、朝日杯FSのラップが物語っています。

 前半4ハロン45秒4、後半4ハロン47秒6のハイペースを、好位3番手から早めにアクセルを踏んでいくレースぶりには『強い』のひと言。2〜4着馬が後方からの立ち回り、5、6着馬も中団だったことを鑑みれば、『怪物的な強さ』と評価していいでしょう。しかも、勝ちタイムは1分33秒0と秀逸。あと、長距離輸送でも舞い上がることなく、落ち着き十分に歩いていたパドックも好感が持てました」

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「朝日杯FSの覇者サリオスは、個人ランクでは3位としましたが、TF指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)は、上位2頭とわずか1ポイント差です。朝日杯FSは、2〜6着馬がすべて4角後方にいた馬で、ペースがかなり速く、明らかに差し、押し込み勢に有利な流れでした。ところが、サリオスは1頭だけ、3番手から競馬をして、早め先頭から押し切り勝ち。最優秀2歳牡馬のタイトルは逃しましたが、コントレイルと同じ、もしくは上という評価があってもおかしくないでしょう」

 3位もまた、前回と同じくマイラプソディ(牡3歳/父ハーツクライ)。同馬も、ここまで3戦3勝と無敗。ただ、2歳GIに出走しなかった分、上位2頭との差が広がった格好だ。

吉田氏
「サリオスと同じく、ハーツクライ産駒の大型馬。さまざまなコースに難なく対応しての3連勝は、素直に評価していいでしょう。レースを使うごとにスタートも良化し、GIII京都2歳S(2019年11月23日/京都・芝2000m)では、少しアオりながらも五分のスタート。枠の並び(8枠8番)と前半から無理をさせなかったため、後方からのレースになりましたが、勝負どころからスッとポジションを上げて、直線であっさりと抜け出すレースぶりには目を見張るものがありました。

 つなぎは通常の長さでも、クッションが適度にあって、胴長の馬らしく、大きいストライドで走れるのは魅力です。広いコース向きの印象がありながら、上手なコーナリングで、内回りの芝2000mで高いパフォーマンスを発揮できたのは、素質の高い証拠。2歳戦は無理せずに”ホーム(関西圏)”で戦って、年明け初戦でダービーへの布石となる(関東圏の)共同通信杯に挑む予定。クラシックをよく知る友道康夫厩舎らしいローテーションにも好感が持てます」

 4位も前回と変わらず、ワーケア(牡3歳/父ハーツクライ)がキープ。2戦無敗で臨んだホープフルSでは3着に敗れたが、選者の評価が急落することはなかった。

土屋氏
「ホープフルSは、スタートで他馬と接触する不利があって、現状のこの馬では、中山コースに適応し切れなかったこともあっての3着。まだまだ見限ることはできませんが、皐月賞では勝つイメージがしづらくなったことは事実です。ともあれ、距離面では2400mまでは優に守備範囲と感じられ、父が同じワンアンドオンリー(2014年のダービー馬)に似た雰囲気を感じます」

 5位にランクインしたのは、ヴェルトライゼンデ(牡3歳/父ドリームジャーニー)。2戦2勝で臨んだホープフルSでは、コントレイルに敗れたものの、1馬身2分の1差の2着に入って、一気に評価を上げた。

市丸氏
「皐月賞2着(2012年)のワールドエース、昨年の菊花賞馬であるワールドプレミアの半弟と、その血筋は悪くありません。ホープフルSの勝ち馬コントレイルと同点という評価をしたのは、TF指数は4角のコース取りも加味され、レース当日の馬場が、コントレイルが通ったインに比べて、ヴェルトライゼンデが通った外目のほうが不利だったため。たしかにレース内容はコントレイルよりも劣るかもしれませんが、1戦ごとに力をつけており、今後の成長次第では、大仕事をやってのける可能性も大いにあるでしょう」 クラシックに向けて、これから注目の前哨戦、トライアル戦が続いていく。ランキング上位を脅かすような馬が出てくるのか、注視していきたい。