栃木との練習試合で2ゴールを挙げた一美。新シーズンへ向け、順調な仕上がりだ。写真:松尾祐希

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 東京五輪世代の点取り屋が虎視眈眈とU-23代表入りを狙っている。

 今季、ガンバ大阪から期限付き移籍で横浜FCに加入した一美和成。最大の持ち味は身体能力の高さを生かしたプレーだ。その強みが生かされるのは、ボールキープやゴール前の局面。課題だった決定力も向上し、昨季は京都で36試合・17得点の活躍を見せた。そのパフォーマンスが評価され、年末に行なわれたジャマイカ戦でU-22代表入り。昨季のJ2において、大ブレイクした選手のひとりと言っても過言ではない。13年ぶりにJ1へ挑む横浜FCの前線は34歳のイバを筆頭に中堅からベテランの選手が多いだけに、22歳の一美には大きな期待が寄せられている。

 宮崎県の日南市で実施しているキャンプでも好調を維持。4日に35分×4本で行なわれた栃木SCとの練習試合では1本目と2本目に出場すると、開始早々の3分にCKから頭でネットを揺らした。以降は正確なポストプレーで攻撃の起点となり、ペナルティエリア内でも積極的にクロスに飛び込みゴールに迫る。

 アグレッシブなプレーで存在感を示すと、次の見せ場は2本目の30分だ。齋藤功佑のスルーパスに反応すると、ペナルティエリアのやや右からゴールを狙う。「練習から自分を見てほしいと伝えていて、あのタイミングで功佑が持った時に前に入れば『行ける』と感じていた」と話した一美の言葉通り、鮮やかな連係から追加点を挙げた。3本目からはベンチに下がったが、目に見える形で下平隆宏監督にアピールしたのは間違いない。

 この日の出来について、本人も手応えは十分。「(加入してから)練習試合で得点がなかった。この試合で2点取れたことは自分の中でもホッとしました。結果を残せたことは良かったと思います。これを続けて行くことが大事」と、新天地でのファーストゴールに頬を緩ませた。

 もともと、一美は早くから将来を嘱望されてきたストライカーだ。大津高の2年次にCBからFWにコンバートされると、転向1年足らずで世代別代表に招集。高校3年次にはU−19アジア選手権予選に出場し、当時桐光学園の小川航基(現磐田)と並んで高校年代屈指のストライカーと称されていた。しかし、G大阪に加入後はプロの水に慣れず、苦戦を強いられる。「FW歴が短く、動き方やパスの受け方を分かっていなかったんです。勉強すべき点が多かった」とは一美の言葉。ルーキーイヤーはU-23チームでJ3を戦ったものの、29試合で3得点に終わり、常連だった代表からも遠ざかった。

 迎えた2年目。「J3で試合に出ていくうちに、どんどん理解して、自分の中でゴールの形が見えてきたので良かった」と話した通り、25試合で8得点。プロの舞台で戦える自信を掴むと、プロ3年目の2018年はJ3で21試合・8得点を記録するだけなく、念願のJ1デビューを飾るまでに成長を遂げた。

 地道な積み重ねを続けた結果、昨季は京都でエースストライカーとして活躍。1年を通じて安定したパフォーマンスを見せ、前述の通り昨年末にはU-18代表以来の日の丸を背負った。
 
 この3年間のステップアップを振り返り、一美はこう話す。

「2年目にJ3で8得点取ったのが大きかった。ゴールを奪える感覚が生まれ、3年目はJ1の試合に出場できた。得点感覚が磨かれたし、京都に行ってからは我が出るようになった。特に昨季は生き残らないといけないという想いが強く、試合に出るためには得点を取るしかないと感じていたんです。最初の頃は試合に使ってもらえない状況が続いていたので、点を取らないと生き残れない。そこから得点への欲が出てきたと思います」

 地道な努力とハングリーな精神で、ついに芽吹いた一美の才能。「もちろん行きたい気持ちはあった中であまり意識していなかった」と本人は話すが、東京五輪出場も視界に入ってきた。

 現状では小川、前田大然(マリティモ)、上田綺世(鹿島)を追いかける立場。オーバーエイジで大迫勇也の参戦も噂されるだけに、序列をひっくり返すのは簡単ではない。だが、FWはゴールを決めて評価されるポジションだ。J1の舞台でゴールを量産すれば、状況は変えられる。

「東京五輪のメンバーに入るためにどうすべきかを考えた時に、J1で活躍すべきだと思ったので横浜FCに移籍をしました。ガンバに残る可能性もあったけど、自分の中でもっと試合に絡みたいと思ったんです。FWは分かりやすい。結果を残せば、代表のメンバーに入れるので諦めていない」

 勝負を賭けるプロ4年目のシーズン。一美は新たな地でゴールを量産し、自らの足でメンバー入りを手繰り寄せる。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)