広告の表示場所に気を遣いすぎることは、広告主にとってマイナスの影響がある。ブロックリストはブランドにとって安全な場所に広告が表示されることを保証してくれるが、リーチやエンゲージメントが限られているという点において価格が非常に割高になる。肥大化したブロックリストの使用を通じて人工的に制限されたインベントリー(在庫)のコストを感じる広告主が増えるにつれ、彼らは、標準的なブランドセーフティ戦略から考えると域外に見えるコンテンツ上に広告を出すことを検討するようになってきた。

ブランドセーフティに対する広告主の新しい、より微妙なアプローチは、不適切なコンテンツを避けることより、広告を表示するのに適した場所を見つけることに焦点を当てている。たとえば、広告主が消費財メーカーなのかゲーム会社なのかによって、リスク(およびエッジが立ったコンテンツ)の許容範囲は変わってくる。そうした広告主は最終的には、ブランドセーフティを非常に厳格に守ることと、必要なレベルのリーチを達成することの適正なバランスの取り方を理解しなければならない。

善を推進する力として

ユニリーバ(Unilever)のグローバルメディア担当シニアバイスプレジデントであるルイス・ディコモ氏は、「ブランドスータビリティ(brand suitability:ブランドとの適合)を考える場合、プラットフォームによるコンテンツのカテゴライズがよければ、我々が広告を出せる場所の選択肢も増える」と語る。

各プラットフォームが提供するターゲット広告ツールには、必ずしもコンテンツをふるいにかけるための定義があるとは限らないため、マーケターは広告を一緒に表示してはいけないタイプのミュージックビデオを把握できるとディコモ氏はいう。広告主は、すべての種類の音楽がテロの宣伝動画のように不穏なものだとは考えてはいないが、ディコモ氏は、ユニリーバの広告はある種のスタイルとは一線を画したいと思っている。

「音楽にはいろいろなタイプの幅広いアーティストが関わっている」と、ディコモ氏。「クラシックからかなり暴力的な筋金入りのロックまであり、後者のような場所に我々は広告を出したくはない。この種のコンテンツを分類できなければ、我々は一部の投資を止めなければならなくなるだろう。やらなければならないことは、我々の投資が善を推進する力として使われていると確信することだ」。

長いブロックリストの弊害

2017年、YouTubeでテロリズムに関する動画の隣に自社広告が表示されていることに広告主が気づき、それによってブランドセーフティの危機が起こった。一部のマーケターは、不適切あるいは無関係なコンテンツを回避できる万能の戦略は存在しないと言った。だが、彼らのこうした見方は、広告主たちのパニックによってかき消されてしまった。

(特定のキーワード、チャンネル、パブリッシャーを回避するために)ブロックリストを使って広告を守ろうとする広告主が増えた。アドベリフィケーション企業が提供するターゲット広告ツール内でブロックリストを使用した結果、相当数のコンテンツが自動的にブロックされることになったが、「受け入れられない」コンテンツとともにたくさんの「受け入れられる」コンテンツまで排除されてしまった。時間が経つにつれ、ブロックリストはどんどん長くなり、広告主のリーチを制限するようになった。通常ならば適切なコンテンツと考えられるものを規制するからだ。

このようにして、ブロックリストは広告主が望んだような結果をもたらさなくなった。ブランドセーフティの大問題の発生頻度は2017年以降減ってきたかもしれないが、危険がなくなったわけではない(その証拠に、2020年に入ってすぐ、サムソン[Samsung]とロレアル[L’Oréal]は、自社広告が気候変動は起きていないと主張するYouTube動画とともに流れていることに気づいた)。

英国内のニュース会社を対象にしたマーケティングを行うU.K.ニュースワークス(U.K. Newsworks)の最高経営責任者(CEO)を務めるトレイシー・デ・グロース氏は、1月下旬に開催されたインタラクティブ広告協議会(IAB)のイベントで次のように述べた。「何千、何万というキーワードを特徴とするリストが長くなればなるほど、厳しさも増してくる。だがそれは現実に即していない。まったく害のないフレーズが、ブロックリストの白黒判定アプローチの影響を受けはじめている。そのせいで安全なコンテンツが安全でないものとして再定義されつつある」。

コンテクスチュアル広告ツール

現在のより進化したコンテクスト技術を活用した、ブロックリストに代わるもっとエレガントな方策も存在する。

コンテクスチュアルターゲティングベンダー、ピア39(Peer39)のインターナショナルビジネス担当マネージングディレクターであるアンドリュー・モージー氏は、ウェブページレベルでブランドセーフティやブランドスータビリティ、感情分析を提供するテクノロジー企業があると話す。そうした企業は、広告主が望ましくないと思うコンテンツを入札前の環境で、ブロックリストを使わずに避けられるようにするツールを用意している。

だが、自動車ブランドの「ジャガー(Jaguar)」についてのストーリーと大型のネコ科の動物についてのストーリーを区別する、微妙なコンテクスト上の選択を見分けることは簡単ではない。インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)が2019年、自然言語処理技術を求めてアドテクベンダーのアドマントX(ADmantX)を買収した理由もここにある。ゼファー(Zefr)はコンテクスチュアルデータ管理プラットフォームを構築し、2020年にはそれをさらに改良するとしている。

こうした企業は、コンテクスチュアル広告ツールへの広告主の関心の高まりに期待を寄せている。2018年に一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)が発効し、広告主たちはオンラインでユーザーをターゲット化する方法を再評価せざるを得なくなって、そのようなツールが作られるようになってきた。

「機能しない強硬なブロックリスト使用することの難しさをマーケターが克服する手助けをするために、コンテクストを用いる技術を幅広く応用する必要がある」と語るのは、ガムガム(GumGum)の欧州・中東・アフリカのビジネスを担当するコマーシャルディレクターを務めるピーター・ウォレス氏だ。ガムガムは人工知能(AI)を手がける企業だ。

後手に回ったパブリッシャー

本来ならば手に入れたであろう収入をブロックリストのせいで犠牲にしてきたにもかかわらず、パブリッシャーはつい最近まで、足並みを揃えてこの解決法を考え出そうとしてこなかった。英国のパブリッシャーのなかには、リーチ(Reach)が提供するAIドリブンのブランドセーフティプラットフォームの利用を現在検討しているところがある。また、ニュースU.K.(News U.K.)はリーチとともに、メディアエージェンシーのIPGメディアブランド(IPG Mediabrands)と提携し、別のコンテクスチュアルソリューションのテストをしているという。デイリー・ミラー(Daily Mirror)を所有するリーチは、2019年にツールを公開して以来、ブロックされずに広告掲載されるストーリーの数が40%増加したことを確認している。

インテグラル・アド・サイエンスの欧州・中東・アフリカ担当マネージングディレクターであるニック・モーレイ氏は「収益につなげられるインベントリーが少なくなってしまったために、ブランドセーフティはパブリッシャーにとって不運な、意図せぬ結果を生み出した」と、IABのイベントで語った。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)