浦和レッズ入りトーマス・デン、スピードだけじゃない熱い人格者

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浦和レッズが緊急補強したオーストラリア代表DFトーマス・デン。メルボルン・ビクトリーに所属するオーストラリア代表選手だが、浦和レッズ公式サイトで「急な移籍でしたが、この場にいられて幸せです。」とコメント。緊急補強であったことをにおわせたがどんな選手なのだろうか?解説していきたい。

初招集時にはパスポートがなかった

生まれはケニアのナイロビであり、南スーダンの難民の家族に生まれる。障害児を支援する医師であった父が死んだ年は覚えていないという。その後、家族が定住したのがオーストラリアのアデレートでウェスタン・イーグルス、グリーン・ガリーといった地域のチームで育成された。

2015年にオーストラリアU-20代表に選ばれた際にはまだオーストラリアのパスポートを所持しておらず、証明のためにこれまでに通ったすべての学校と今までプレーしたすべてのフットボールクラブから署名された文書を取得することでようやくOKとなり、海外への遠征も許可が必要だったという。

16歳でヴィクトリア州リーグにデビューし、2015年よりメルボルン・ヴィクトリーのトップチームへ。2016年より1年間オランダのPSVに貸し出されヨングチームでプレー、その後メルボルン・ビクトリーへ戻り現在までプレーしてきた。

熱い人格者

オーストラリアU-23代表ではキャプテンを務めており人格面や発言も獲得の決め手になったという。

確かに例えば、2019年6月にはボランティアで家庭内暴力反対のキャンペーンに参加。曰く「私の叔母は家庭内暴力に苦しみました。それは私の心に触れたものでした。」「女性から尊敬を集めるためには、暴力で打ち負かす必要はない。」「暴力は答えではない」と熱いコメントを残している。

2018年10月のクウェート戦でA代表初招集を受けた際も「驚くべき感覚で、ほとんどシュール」「子供の頃夢見ていたことであり、大人になってそれを実現した」と殊勝なものを残している。

現在、オーストラリア代表にはアワー・メイビル(Awer Mabil)という同じくケニア出身で南スーダン難民の家族だった選手がいる。そしてくしくもクウェート戦で二人は同時にデビューを飾った。

メルボルン・ビクトリーでは別れ際に「なかなか難しい決断でしたが、私のプロとしてのキャリアにとって、J1リーグでプレーする機会は逃れられなかったものです」とコメントしクラブとは相思相愛でありつつもステップアップを選択したといえる。

スピードと身体能力に長けるがパスの成功率も高い

さて、プレー面も見ておこう。浦和レッズでは今季補強人数が少なく、足りないピースとしてDFのユーティリティー性、スピードのあるセンターバックが挙げられていたのでぴったりのパーツと言える。

178cmと身長こそセンターバックとしては高くはない。しかし、それを余りある身体能力に長けたセンターバックでスピードもありサイドバックもこなせる。

2018/19シーズンのAリーグではセンターバックで主にプレー。27試合出場時点では85.7%のパス精度、54.5%のタックル成功率、空中戦勝率53.5%であった。パスの成功率は高いが、基本的にはスピード、続いて身体能力という選手で攻撃的な面にあまり期待はできない。そう考えるとセンターバックで起用されるのではないか?と思われる。

兄ピーター(Peter Deng)もサッカー選手でこちらは南スーダン代表を選択している。さらには異母兄弟はウガンダにいるという。

オランダ移籍を経験、またAリーグですでに71試合出場と経歴は立派だが何よりまだ21歳と若い。一人の若者として成長にも十分期待できる。浦和ではどんなインパクトを見せてくれるだろうか。