ピッチのすぐ隣で選手が食事するいわきFC。「食」について担当者に聞いてみた

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今シーズン、アマチュアサッカー最高峰のJFLを戦ういわきFC。

『日本のフィジカルスタンダードを変える』をモットーとする彼らの取り組みは大きな注目を集めている。

そんな彼らだけに、「食」に対するこだわりも大きい。練習グラウンドの脇にはそれを物語る建物が存在している。

昨年2月にオープンした「いわきFCステーション」はアスリートのための食事の提供をはじめ、多目的スペースやシャワールームなどを完備。ピッチのすぐ脇に建てられているため練習を終えた選手たちがすぐに食事をとることができるほか、コミュニティスペースなどとして地域住民も利用することが可能となっている。

昨年は一般の方を対象に、選手と同じご飯を食べるイベントなども開催。施設の総料理長を務めるのは、サッカー日本代表の専属シェフとしてお馴染みの西芳照さんだ。

こういった環境はクラブとしてどのようなメリットがあるのか。

サカつくプレゼンツの「リアルサカつく」企画として見逃せない点なので、選手たちの栄養指導などを行うクラブ専属栄養士・田中初紀さんに話を聞いてみた。

(取材日:2019年8月28日)

――選手たちの食事全般を管理する上で、一番大事にされていることは何ですか?

選手それぞれのコンディションを掴むことです。その上で、提供している食事自体をしっかり食べてもらえるよう働きかけています。食べてもらわないことには身になりませんから。

――食べにきた選手に積極的に声かけをしている姿が印象的でした。

声かけは必ずしています。ここへ入ってきた選手には「お疲れさま」「おかえり」、出ていく選手には「いってらっしゃい」などですね。全選手とコミュニケーションを取りたいですし、顔色や様子を掴みたいので私から必ず声を掛けるようにしています。

――選手によって「こういう風に食べてほしい」など変えている部分はありますか?

ありますね。体組成や血液データは年間を通して見ているので、体脂肪が増えやすい選手がいれば一日の中でエネルギーバランスを調整しよう、だったり、鉄分の少ない選手がいれば鉄分の多い食材を知ってもらい、今後自分自身でも選択してもらえるように「今日のメニューならこれは鉄分が多いよ。ビタミンCを合わせて摂ることで吸収率上げているよ」と伝えたりします。

――トレーニング中も選手たちの様子をそばで見ていました。

ここ(※いわきFCステーション)だけだと、たとえば選手の食事の量が少なかった場合、その理由が掴みづらいんです。トレーニングが激しかったから一時的に食べられないのか、それとも元々体調が良くなくて食べられないのか。

そこで、ピッチで動いている姿を見た上で、「あ、今日は疲れているんだな」とか「今日はもうちょっと食べるよう促そうかな」などを判断して伝えるようにしています。

練習が終わった選手たちを迎えているだけだと分からないことが多くて、やっていくうちにトレーニングをしている選手たちの顔をしっかり見たいと思うようになりました。

――昼だけでなく夜のメニューもあるんですね。

昼と夜でエネルギーバランスを少し変えていて、昼の方がエネルギー多めに組んでいます。運動直後の昼は「回復」と「消費した分のエネルギー補充」、夜は「回復」が主な目的になります。昼は炭水化物を多く摂れるように芋を使ったり、麺類をプラスしたりしています。夕食はゆっくりと選手同士会話しながら食べてもらえるので、餃子や焼手羽先など居酒屋さんのようなメニューも入れ込みます。

また、試合に向けては使用食材を制限したり、調理法を変えたりとシェフと連携しながら調整しています。

いわきFCの場合は充実した施設や食材はもちろん、選手たちと非常に近い距離で食事をサポートしていることが印象的だ。栄養士が練習の様子まで見ることはJリーグのクラブでもあまりないかもしれない。

食べたものから当然体は作られるので、アスリートにとって食事はとにかく大事。

インタビューの中で出てきたように、昼食だけでなく夕食の食事も提供しており(※現在は朝食と昼食に変更)、彼らが標榜する『魂の息吹くフットボール』を下支えする環境がこういったところにも見受けられる。