東京Vのキャンプに参加する流通経済大のMF菊地。大宮戦では評価に値するプレーを見せた。写真:松尾祐希

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 結果は0−3。永井秀樹監督率いる東京ヴェルディは、J1昇格争いのライバルとなる大宮アルディージャに敗れた。

 始動してから3度目のトレーニングマッチで、沖縄キャンプに入ってからは2試合目。1月29日に35分×2本で行なわれた一戦は、山本理仁など中盤に故障が続出し、負荷の掛かるメニューを連日消化している影響は少なからずあった。しかし、連係面などに課題を残し、攻守で精彩を欠いてしまう。序盤こそテンポの良いパスワークを見せ、相手がいないスペースを使いながら攻撃を展開した一方で決定機はごく僅か。フィニッシュに持ち込む場面も限られており、多くの修正点が垣間見えたのは確かだ。ただ、収穫がなかったわけではない。練習生としてキャンプに参加している流通経済大の菊地泰智(2年)だ。

 3−1−4−2のアンカーで先発出場した菊地は“ヴェルディのサッカー”に戸惑いながらも、ボールを引き出す動きと左足のキックで存在感を発揮。フィジカル面でも相手に当たり負けせず、プロに混じっても見劣りはしていなかった。

 流通経済大でも1年から出場機会を得ている菊地だが、彼が最初に脚光を浴びたのは、流経大柏高に所属していた3年前のインターハイだ。本田裕一郎監督から「賢い選手」と称されていた司令塔はサイドハーフ、ボランチ、トップ下と複数のポジションを任されながら、センス溢れるプレーを見せてチームの日本一に貢献。その年の高校サッカー選手権でも10番を背負い、強烈なインパクトを残して準優勝の原動力となった。

 高卒でのプロ入りは叶わなかったものの、大学入学後は1年次から活躍する。昨年は天皇杯の浦和レッズとの2回戦で一時同点となるゴールを決め、プロの舞台でも戦える可能性を示してきた。

 そのプレーに目を付けたのが東京Vだ。年末に行なわれた筑波大との練習試合に出場すると、今回の沖縄キャンプにも帯同。ユース出身以外の選手がトップチームに加入した例は近年ほとんどなく、キャンプに参加する機会もあまりないだけに、クラブから高い評価を受けているのが窺える。

 このチャンスをモノにできるか否かが、菊地のサッカー人生を大きく変えるのは間違いない。本人も「ヴェルディで戦いたい思いはあります」と意欲を語り、大宮戦のプレーぶりは今後につながる出来だった。
 
 ただ、課題がないわけではない。ヴェルディのスタイルに早く順応することだ。

 菊地は高校と大学では、守備に重きを置くチームでプレーしてきた。加えて、ヴェルディの志向するスタイルは他と一線を画す。細かいパスワークや距離感、縦パスを入れるタイミングやサイドチェンジなど約束事は多い。そうしたスタンスに戸惑いもあり、この大宮戦は探りながらのプレーとなった。菊地は言う。

「高校でも大学でも、『こうなったから、こうなって相手を崩れる』というスタイルでプレーをした経験がない。どのチームでも『攻撃は水物だから、良い守備から入れば良い攻撃につながる』という考えで指導を受けてきた。なので、今日も『これで良いのかな』と思いながらプレーしていて、自信を持ったパフォーマンスができていたわけではない。自分としては思い切りやった感じはないんです。『サッカーとは何か』という感じでやっていて、(チームメイトに)根本的な部分を聞きながらやっていました」

 初めて触れる“サッカー”を理解するまでに時間がかかるのは当然で、合流して2日であれば簡単に事は運ばない。それは本人も理解している。

「いろんな戦術を落とし込んでくれているので、自分の中で崩しのアイデアとして蓄積できるようにしたいです。それを頭の中で描ければ、崩れることはない」

 あとはいかに限られた時間で吸収するか。そうすれば、目標のプロ入りもより現実的になる。高校と大学で輝きを放ってきたレフティは与えられた機会を生かすべく、この沖縄キャンプで新たなチャレンジを続けていく。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)