伝説となった“ストイコビッチのリフティングドリブル”。写真:Jリーグフォト

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 2020年1月28日、東京スタジアムで行なわれたACLプレーオフ、FC東京×セレス・ネグロス戦の主役はある意味ピッチだった。

 大雨で水浸しとなり「サッカーができる状態ではなかった」とアダイウトンが言うように、まったくと言っていいほどボールが転がらない……。かなり厳しい状況下での戦いを両チームの選手たちは強いられた姿を見て気の毒になったほどだ。

 大雨が降りしきるなかで勝利を収めたのはFC東京。室屋とアダイウトンのゴールでどうにかセレス・ネグロスを振り切った雨中決戦を振り返って、長谷川監督は次のような感想を漏らしていた。
 
「(昨年に)ラグビー・ワールドカップをやったあと、五輪に向けて芝生を改修したと。だからまだまだ根付いていないということもあると思います。グランドキーパーの方々も最後まで良い状態でやらせようと努力をしてくれましたが、天候はどうしようもない」

「若い選手はこういう悪いコンディションでのプレーに慣れていない。ボールを浮かして運んだりとか、単純に強く蹴ってもボールは飛ばないので、ボールの下を上手く蹴って前に飛ばすとか、そういう技術が求められる試合でもありました。アダイウトン、レアンドロといったブラジル人選手はボールを運ぶテクニックが素晴らしかったと思います。

我々の小さい頃は雨の日こそ技術の差が出ると言われて育ちました。昔は泥んこのなかでサッカーをしていた時代ですからね。そういう意味では、こういう経験をして選手たちも技術を身に付けてもらえればと」

 「ボールを浮かして運んだりとか……」という件で思い出されたのが、ピクシーことストイコビッチの伝説とも言えるリフティングドリブルだ。1994年9月17日に行なわれた名古屋×市原戦(Jリーグ・ニコスシリーズ第11節)で、当時名古屋に在籍していたストイコビッチが水浸しのピッチを苦にせず、ポン、ポン、ポンと自陣からリフティングで華麗にボールを運ぶ姿は今なお強烈な印象を残す。

 「雨の日こそ技術の差が出る」。あの雨の中、ストイコビッチは正真正銘の天才であることを自ら証明した。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)