「厚底」に日本のメーカーはどう対抗?(写真/AFLO)

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 東京五輪開幕まで半年を切るタイミングで突如、浮上したナイキの“厚底”シューズ、『ヴェイパーフライ』シリーズの規制問題。

【写真】「MGC」で、ナイキの厚底シューズを履いて力走する中村匠吾

 新記録連発でマラソン界・駅伝界を席巻してきた“魔法の靴”騒動は、アシックスやミズノなど、ナイキの後塵を拝してきた日本のメーカーには追い風に見える。実際、「東京五輪の公式スポンサーであるアシックスへの配慮から規制問題が浮上したのでは」(スポーツ紙デスク)という声も聞こえてくるほど。

 また、スポーツライターの酒井政人氏は、こう解説する。

「トップ選手のなかには、メーカーとの契約があって、ナイキのシューズを使えない選手もいる。今回の規制問題は、あまりに好記録が続出するなか、ナイキを使用できないアスリートグループが世界陸連に不満を訴えたことが発端とされています」

 使えない選手から不満が出るほどの“ナイキ厚底旋風”に、日本のメーカー関係者が忸怩たる思いを抱いてきたのは事実だろう。

 もともと、「マラソン王国ニッポン」を下支えしてきたのが、「薄底」のシューズを選手一人ひとりに合わせてフィッティングする“職人技”だった。

 その第一人者がアシックスで40年以上シューズ開発に携わった三村仁司氏だ。高橋尚子、野口みずきは三村氏が手がけたシューズで五輪金メダルを獲得。アシックスを定年退職後は工房を設立し、現在もシューズ開発に取り組んでいる。

 そんな三村氏に今回の「厚底規制」問題をどう見ているのかを聞いたが、事務所関係者を通じて「問い合わせはいくつかあるが、今回の件についてはコメントしていません」と答えるのみだった。

 ただ、日本のメーカーも指をくわえて見ていたわけではない。アシックスやミズノの五輪に向けた“新製品”の存在が明らかになってきた。

「すでに試作品が一部の選手に渡っています。ミズノのシューズは真っ白でロゴも見えないまさに試作品といった見た目で、靴底のクッション部分に独自開発の硬いプレートを挟んだ構造。今年の箱根駅伝では10区で創価大の嶋津雄大選手が着用し、区間新をマークしました」(メーカー関係者)

 アシックスは市販品を改良し、靴底にカーボンプレートを内蔵した試作品が存在し、元旦のニューイヤー駅伝で一部の選手に提供された。ナイキの「ヴェイパーフライ」ほどではないが、やはり厚底に見えるシューズだ。アシックス広報室はこう説明する。

「正式に発表しているものではないので、まだ商品名もありません。ポイントはソール(靴底)の厚さよりも形状にあります。横から見ると爪先部分がせりあがっている形になっていて、加重していくと転がるようなイメージで足を前に運べる。エネルギーロスを最小限にできます。

 今春に発表予定で、五輪イヤーに向けて長い期間仕込んできました。隠しているつもりはないのですが、最終テストをしている段階です」

 こうした新シューズの存在も、選手にとっては悩ましいだろう。他のメーカーのシューズからナイキに変えたトップ選手も数多くいるが、ここにきてのナイキ規制問題の浮上と他メーカーの新製品の登場で、どういった決断をするのか、注目の的となる。

※週刊ポスト2020年2月7日号