オートサロン会場でもっとも注目を集めたクルマ

 東京オートサロン2020で大いに注目を集めたクルマといえば、トヨタGAZOO Racingが発表した「GRヤリス」だったと感じている人は少なくないだろう。WRCのマニュファクチャラーズタイトル(2018)、ドライバーズタイトル(2019)を獲得したWRCマシン「ヤリス」での知見を活かし、また次期WRCマシンのベースとなるべく生み出された「GRヤリス」は、間もなくフルモデルチェンジモデルが発売となる新型ヤリスと異なり、クーペ的なルーフラインの3ドアハッチバックボディを与えられたホモロゲーションモデルといえる存在だ。

 単にボディ形状のホモロゲーション目的であればFWDだけのラインアップでもいいわけだが、専用設計の3気筒1.6リッターターボエンジン(最高出力200kW)に6速MTを組み合わせ、前後駆動配分100:0〜0:100まで可能な4WDシステム「GR-FOUR」をも搭載している。“Born from WRC”のキャッチコピーよろしく、ノーマルでも十分にスポーツドライビングが楽しめるパッケージだ。2019年末にスバルWRX STIが生産終了となり、日本車からそのままラリーに参戦できるベース車がなくなってしまったと悲観にくれるファンも多かったが、まさしく光明となった。

予約金10万円が必要にも関わらず予約は1000台超え

 いわゆるローンチエディションとなる「1st Edition」のメーカー希望小売価格は396万円。トルセンLSDやBBS製アルミホイールを装備する「High-performance 1st Edition」は456万円と、けっしてアフォーダブルな価格帯ではないが、その予約はオートサロンで発表した最初の3日間で1000名を超えたという。WEB限定予約かつ、予約時には10万円のデポジットが必要ということで、冷やかし的な予約はしづらくなっていることを考えると、本気で買おうとしているユーザーがそれだけいるというわけだ。

 たしかに、発表されているパワートレインの内容や、標準のヤリスとは異なるリヤサスを与えられている点、ドアパネルや前後フードのアルミ化、カーボンルーフの採用といった点を考えるとバーゲンプライスといえる。オートサロンで見ることができただけで、試乗もままならない「1st Edition」だが、内容からするとそれだけの予約が集まるのは納得できる。

 価格以上の性能を予感させることが、こうした初期受注の好調さにつながっているのだろうが、おそらくそれだけではない。モリゾウこと豊田章男社長のカーガイとして数々の発言もGRヤリスへの期待値を高めることにつながっている。明らかにトヨタのファンは増えている感触がある。

 2020年シーズン、GAZOO Racing WRCはドライバー・コドライバーを一新して臨む。そして今年はWRC第14戦としてラリージャパン(11月19日〜22日)も帰ってくる。WRCでの活躍次第では、さらにGRヤリスの知名度が上がり、ますます人気を高めることになるだろう。そして、2021年以降のマシンに関わってくるであろうGRヤリスを購入することでトヨタのWRC活動を応援したいというユーザーも増えていくはずだ。