トランプ大統領に「一番媚びへつらう男」と見られた安倍首相だが・・・。


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民主党は結局バイデン候補か

 最初に一言釈明させていただきたい。あまりにもショッキングな見出しだが、その詳しい内容については本稿の最後の部分をお読みいただきたい。

 もう一点サブタイトルの「2つの暴露本」だが、27日に米メディアが報じたジョン・ボルトン米前大統領補佐官が出版を予定している「暴露本」とは別の暴露本である点も指摘させていただきたい。

 2月3日のアイオワ州での民主党党員集会(事実上の予備選)でいよいよ2020年米大統領選が正式にスタートする。

 それまでには上院でのドナルド・トランプ大統領弾劾裁判もケリがつく。共和党が多数を占めているため上院が弾劾を放免するからだ。トランプ氏は「弾劾訴追された史上3人目の現職大統領」として再選を目指す。

 改選を迎える共和党の上下両院議員は内心穏やかでない。

 トランプ氏に批判的な有権者の矛先が自分たちに向けられるかもしれない。「おんぼろ神輿」を担いだお陰で討ち死にする議員が続出する可能性があるからだ。

 一方、民主党は誰を大統領候補に立ててホワイトハウス奪還を図るのか。

 中道穏健派のジョー・バイデン前副大統領。民主社会主義者を名乗るバーニー・サンダース上院議員(正式には院内会派民主党で無所属)。

 急進リベラル派のエリザベス・ウォーレン上院議員。LBGT(セクシャル・マイノリティ=同性愛主義者)で中道のピート・ブディジェッジ市長(インディアナ州サウスベンド市)。

 ニューヨーク・タイムズがウォーレン候補とともに民主党大統領候補に推薦した中道派のエイミー・クロブッチャー上院議員。

 それぞれに弱点がある。まさに帯に短し襷に長し。

 そうした中で目下のところ、世論調査では知名度抜群で中道派のバイデン氏がリードしている。

「左傾化を望む民主党員」の勘違い

 ニューヨーク・タイムズの保守系コラムニストのディビッド・ブルックス氏は民主党が置かれた現況をこう見ている。

「当初、政治コンサルタントや政治評論家たちはバイデン前副大統領についてこう指摘してきた」

「『バイデン氏は確かに知名度がある。だから世論調査では他候補をリードしてきた。しかし、齢(77歳)をとりすぎてもはや過去の人だ』」

「『やっているのはゾンビ・キャンペーン(無気力な選挙運動)だ。民主党は左傾化しており、中道派の同氏が出る幕ではない』」

「ところがどっこい、バイデン氏は世論調査では予備選序盤州のアイオワ、ネバダ、サウスカロライナ、テキサス州ではリードし、カリフォルニア州ではサンダース上院議員とデッドヒートを演じている」

「誰が予備選で勝つか、予断は許さないが、少なくともバイデン氏がこれほど強いとは6か月前には多くの選挙専門家たちは考えていなかった」

「確かに、世界中を見渡せば、先進民主主義国のリベラル政党内では左翼勢力が勢いを増している」

(米民主党内では左派のサンダース氏やウォーレン氏が世論調査では上位につけている。ご本人たちは左傾化競争こそ勝利につながると信じているふしがある)

「候補者の中には支持層の労働者階級が左傾化を望んでいると思い込んでいる。ところが選挙になると、保守党に敗れてしまう」

「いい例が英国のジェレミー・コービン氏率いる労働党だ。左傾化した労働党は総選挙で惨敗した。そのことにサンダース氏はいずれ気づくはずだ」

「なぜ勘違いしているか。それは『リベラル派の政治家たちは労働者階層は党の左傾化を望んでいる』という政治博士課程の大学院生的な想定を鵜呑みにしているためだ」

「実際の労働者階層はリベラル政党がこれ以上左傾化することなど望んでいないのだ」

(https://www.nytimes.com/2020/01/23/opinion/joe-biden-2020.html)

ヒラリー攻撃本の著者再登場

「民主党候補は最終的にはバイデン氏だ」とブルックス氏は予見している。しかし、そのバイデン氏とてまだまだ盤石ではない。

 そうした折、アイオワ州党員集会直前にバイデン氏にとっては嫌な本が出た。

 2015年、民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏と夫ビル氏の設立した「クリントン財団」の不正政治献金問題を扱った本*1の著者がバイデン氏をはじめとする主要な民主党大統領候補のスキャンダルを暴いた本を出したのだ。

Profiles in Corruption: Abuse of Power by America's Progressive Elite by Peter Schweizer Harper Collins, 2020


「Profiles in Corruption: Abuse of Power by America's Progressive Elite(堕落の足跡:リベラル派エリートたちによる権力の乱用」

*1=『Clinton Cash: The Untold Story of How and Why Foreign Governments and Businesses Helped Make Bill and Hillary Rich』

 著者のピーター・シュバイツァー氏は、二足の草鞋を履く超保守のノンフィクション作家兼保守系シンクタンク「ガバメント・アカウンタビリティ・インスティチュート」の理事長。

 トランプ大統領の首席戦略官だったスティーブ・バノン氏と親しく、ロナルド・レーガン40代大統領を描いたドキュメンタリーをバノン氏と共同制作している。

 ジョージ・ワシントン大学を経て英オックスフォード大学に進み、哲学修士号を取得している。申し分のない学歴だ。

 シュバイツァー氏は、本書でバイデン氏を筆頭に主要な民主党大統領候補たちのスキャンダルをこう暴いている。

一、バイデン氏は、上院議員・副大統領だった時に長男ハンター氏、実弟ジェームズ、フランク両氏、娘婿ハワード・クライン医学博士、実妹バレリー・オーウェン氏の5人が関係する企業や団体に不適切な便宜を図ったり、利益誘導していた。

一、ウォーレン氏は、選挙戦では大企業批判を続けているが、かつて連邦政府のコンサルタントをしていた当時、その立場を利用して数百万ドルの金を企業に要求していた。

 また同氏の義理の息子スシ・タヤギ氏(娘アメリア氏の夫)はイラン政府が共同出資した映画を制作している。

一、サンダース氏は大統領選への選挙資金として集めた数千万ドルを妻ジェーン氏が関与していた企業に極秘裏に提供していた。また同氏は選挙資金の一部を家族のために不正使用していた。

 トランプ氏の利益誘導や家族への便宜供与は今や知る人はいない(ある意味でトランプ氏にはスキャンダルに対する免疫ができてしまったのかもしれない)。

 バイデン氏については、長男ハンター氏の「ウクライナ癒着」がトランプ大統領の「ウクライナゲート疑惑」ですっかり有名になってしまった。

 トランプ大統領の「ウクライナゲート疑惑」の発端は、まさにトランプ氏がハンター氏に関する「疑惑」の究明をウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領に要求したとされるところに遡る。

(その後、米情報機関もウクライナ政府当局もそうした「疑惑」はなかったと否定している)

 本書の著者、シュバイツァー氏は、2018年に出した本、『Secret Empires: How the American Political Class Hides Corruption and Enriches Family and Friends』でハンター氏に関する「疑惑」について詳細に書いている。

 本書では、それについてさらにこう記述している。

「ハンター氏は父ジョー・バイデン氏が副大統領に就任すると同時に、その影響力を使って、自らの関与する海外事業の進出・展開に諸外国の政府中枢に接近した」

「副大統領が自分のビジネス関連の国へ外遊する際にはエア・フォース・ツー(副大統領専用機)に同乗した」

「ハンター氏はイェール大学で一緒だったデバン・アーチャー氏とパートナーを組む『バーハム金融グループ』の重役も兼務。父の名前をちらつかせて同グループの海外事業拡大に貢献してきた」

「同グループはカザフスタンや中国での事業不正取引、さらには米国内では先住民(アメリカインディアン)オガララ・スー族との不正債権疑惑や労組の年金不正疑惑などにも関わり合いを持っていた」

「アーチャー氏は2016年、出資者の金を横領した容疑で逮捕され、その裁判記録には同グループにおけるハンター氏の役割が明確に記録されている」

「特に債権疑惑を巡ってはハンター氏が一連の容疑に関与していたのは間違いがない」

実弟2人、妹、娘婿も“利用”か

 バイデン前副大統領の「七光り」の恩恵にあずかっていたのは長男のハンター氏だけではなさそうだ。

 シュバイツァー氏の調査によれば、バイデン氏の実弟のジェームズ氏も恩恵にあずかっていた一人だ。

「ジェームズ氏は、戦争終戦直後のイラク復興工事に参入する韓国系建設会社の下請け会社『ヒルストーン・インターナショナル』に関与、兄の名前をちらつかせながら契約締結していた」

「同じく実弟のフランク氏は中南米コスタリカにゴルフ場、カジノ、アンチエイジング(抗加齢化)施設など建設事業を始める際に兄ジョー氏の名前を最大限に利用した」

「バイデン氏は、過去の選挙キャンペーンに実妹のバレリー・オウェン氏が共同経営する選挙関連会社『ジョー・スレード・ホワイト&カンパニー』と独占契約し、選挙対策本部から総額250万ドルを支払っていた」

「末娘のアシュリー氏の夫、ハワード・クライン医学博士の経営する医療投資コンサルティング会社『スタートアップ・ヘルス』はバイデン氏の紹介でオバマ政権高官たちと頻繁に接触していた。同社のイベントにはバイデン副大統領自らが出席していた」

 シュバイツァー氏は、バイデン氏の家族・親族に対する異常なほどの「便宜供与」「利益誘導」についてこう指摘している。

「リベラル派のキングと言われてきたジョー・バイデン氏の数々の『政治的影響力に基づく談合』(Sweatheart Deal)をわれわれはどう見たらいいのだろうか」

「政治家たちのこうした不正行為は保守もリベラルも関係ない。リベラル派エリートたちによる権力の乱用は至る所に存在しているのだ」

 バイデン氏は、かってこうした「疑惑」が囁かれた際に「私は自分の息子や兄弟、親族と彼らのビジネス上の利益について話したことなど一回もない。以上」と全面否定している。

 本書が暴いた「疑惑」について1月25日現在コメントしていない。

トランプ氏は「A Very Stable Genius」

 一方、トランプ大統領のアッと驚くような発言の数々がまた露呈された。

 こちらはリベラル派主要紙ワシントン・ポストの調査報道記者、フィリップス・ラッカ一、キャロル・リオネグ両氏が著した『A Very Stable Genius』(非常に安定した天才)だ。

A Very Stable Genius: Donald J. Trump's Testing of America by Philip Rucker & Carol Leonnig Penguin Press, 2020


 2人はこれまでにピュリッツアー賞に輝いている敏腕ジャーナリストだ。

 タイトルの「A Very Stable Genius」はトランプ大統領が2018年1月に自分のことをツイッターでそう表現したところからきている。

 大統領としての素質も見識もないと批判されたことに反論した時だ。

 その後2019年7月、民主党のナンシー・ペロシ下院議長から「トランプ氏は米大統領に向いていない」と批判された時にもそうツイートしている。

 このタイトルはすでにウィキペデアにも掲載され、今年最も流行しそうなフレーズ候補に挙がっている。

 むろん共著者のサタイアー(風刺)である。

 本書に出てくるトランプ語録の中で一番関心を集めているのは2017年7月20日、米国防総省の2E924号室(通称タンクと呼ばれている)で開かれた「御前会議」での発言だ。

 ジェームズ・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官、ゲーリー・コーエン国家経済会議議長、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長、軍の最高幹部らとのやりとりだ。

 会議には当時大統領首席戦略官兼上級顧問のスティーブ・バノン氏も同席していた。

(このやりとりについてはマティス国防長官の首席スピーチライターのガイ・M・スノドグラス退役海軍中佐が2019年秋に著した本にも出てくるが、本書ではより詳細に書かれている)

(参照:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58139)

米軍人を侮辱した米大統領

 会議ではまずティラーソン長官が北大西洋条約機構(NATO)加盟の同盟国がいかに欧州を安定化させ、その結果米国の国益が守られているかについて説明した。

 共著者はその場面をこう活写している。

「これを聞いていたバノン氏は『こりゃまずいぞ、トランプ大統領はこういう説明を一番嫌うんだ』とつぶやいた」

「ティラーソン長官が使っているインターナショナリスト的言葉はトランプ大統領にとっては激怒するトリガー以外のなにものでもなかった」

「話は在韓米軍防衛費分担問題に移った」

「トランプ大統領は『われわれはその在韓米軍防衛費分担額を変えなきゃだめだ。韓国に米軍駐在費を払わせるべきだ。韓国駐留に必要な金はすべて韓国に出させるべきだ』と言い放った」

「大統領は続けた。『われわれは韓国に貸しがある。その金をまだ返してもらっていない。もし諸君が商売をこんなやり方でやっていたすれば、とっくのとうに会社は倒産しているだろう』」

「マティス長官は大統領の話を遮るようにこう言った。『NATO加盟諸国は自国の安全保障のためだけではなく、米国の安全保障にも貢献しているんです』。コーエン議長も『これはわれわれの安全も守るためのコミットメントでもあります』と加勢した」

「話は欧州からイランの非核化に移った」

「トランプ大統領はオバマ政権が合意したイラン非核化協定について『この協定は史上最低の協定だ』と言い放った」

「ティラーソン長官が『いや、実際には・・・』と言おうとすると、大統領は居丈高に喋り出した」

「『そんな御託は聞きたくない。イランの野郎どもはわれわれを騙したんだ。やつらは核施設をこっそり作っている。われわれはこの協定から離脱するんだ。そのことは何度も言っているはずだ。なぜ、従おうとしないのか。なぜ離脱を遅らせているんだ。私は離脱したいんだ』」

「話題はアフガニスタンに及んだ」

「大統領は『アフガニスタン戦争は負け戦(いくさ)だった』と言い切った。

「そして出席している軍最高司令官たちを怒鳴りつけた。『諸君は全員敗者だ。諸君はいかにしたら戦争に勝つかを知らないんだ』」

「『われわれは(アフガニスタン戦争で)7兆ドル(実際には18年間で総額2兆ドル)を戦費として使った。ところがアフガニスタンはそのカネを掠め取った。いったい全体、(アフガニスタンに埋蔵されているとされた)石油はどこにあるというんだ』」

(https://www.nytimes.com/interactive/2019/12/09/world/middleeast/afghanistan-war-cost.html)

「大統領はアフガニスタン駐留米軍の最高司令官、ジョン・ニコルソン将軍を解任すべきだと言い出した」

「ダンフォード議長は怒り狂った大統領を宥めようと『大統領閣下、アフガニスタン情勢は以前とは異なっており・・・』と発言したのだが、効き目はなかった」

「大統領は言うに事欠いてこう言い放った」

「『俺は諸君のような連中とは戦争はできない。諸君は間抜けと赤子の集団のようなもんだ』(I wouldn't go to war with you people. You're a bunch of dopes and babies)」

「ティラーソン長官はこの大統領の痛烈な軍に対する非難発言に呆然とし、怒りを露わにした。言葉を失っていたマティス長官を見据えて『ジョン、何か言ったらどうか』と言いたげな表情をした」

「しかし、マティス長官にはそれができないことも知っていた」

「上官の命令には絶対服従することを叩き込まれた海兵隊出身のマティス氏が米軍最高司令官であるトランプ大統領に口答えすることなどできっこないからだ」

「会議に出席していた軍の指導者やその側近全員は憤りを抑え、一言も発言しなかった」

「出席者の中には実際に戦場に赴き、お国のために自らの命を犠牲にすることも厭わなかった強者たちもいた」

「その強者たちは今、理由をつけて兵役を回避し、逃げ回っていた男に面罵されたのだ」

「ティラーソン長官は後日、同席している女性将校がすすり泣くを見たと証言している。ティラーソン長官は会議の後、『あいつ(トランプ大統領のこと)は大馬鹿野郎(a f---ing moron)だ』と吐き捨てるように言った」

 その後、ティラーソン、マティス、コーヘン各氏はトランプ政権を去って行く。

 国家のために命を投げ出して働く。今なお一般アメリカ人の間にはこれこそが最も崇高な仕事だと考えている。その意味では米軍人は最も尊敬される存在だ。

 筆者自身、そのことを実感したことがある。

 数年前に外国からの移民が集団で米国籍を正式に取得するためのセレモニーを取材したことがある。

 1000人以上集まった式典会場の最前列には軍服姿の外国人が優先的に席を占めていた。中には片足の傷病兵もいた。

 移民局幹部から米国籍認定の証書を真っ先に受けるのは軍服姿の兵士たちだった。米国のために戦った者に対し、最大の敬意を表する場面をそこに見た。

 こうした米社会の常識をトランプという人物は全く持ち合わせていないのだ。軍人に対する畏敬の念も尊敬の念も皆無なのだ。

 本書の共著者の一人、ラッカー氏は発売と同時に応じたNPR(米公共放送)とのインタビューでこう述べている。

「本書は決して、この大統領を意地悪く皮肉っぽく書いたものではない。本書は死ぬほど大真面目な(Deadly serious)本だ。この大統領が過去3年間に何をしてきたかを時系列的に記録したものだ」

「この大統領が舞台裏でどう振舞っているのか、われわれの軍隊をどうリードしてきたのか、国内政策をどう実施してきたのか。それを記録したものだ」

「200人以上の取材対象者から入手した証言や記憶を整理し、できるだけ正確にトランプ氏の言動を記録した。われわれは自分たちの意見や主張は一切盛り込まなかった」

「一部のトランプ支持者にとっては聞きたくない、知りたくない話が出てくるかもしれない。が、ここに書かれていることは実際に起こったことだ。事実だ」

「この大統領が3年間行ってきたパターンはこれからもあまり変わらないだろう。ドナルド・トランプ氏はそう簡単には変わらない人間だ」

「一つだけ変わる状況があるとすれば、トランプ氏が包囲され、反撃に出る必要性を感じた時だ」

「その時、トランプ氏は変わる。変身してよりアグレッシブ(精力的、攻撃的)になる。自己破壊的な行動に出るかもしれない」

「大統領自由勲章を自分にくれてやる」

 最後に本書に出てくるトランプ氏と安倍晋三首相についての記述を紹介しておきたい。

 米国で書かれた米歴代大統領の回顧録やそれに類する本に日本の総理大臣が登場するのは極めて稀だ。本書には安倍首相に関するくだりが5か所出てくる。

 まずは2017年2月のフロリダ州マー・ア・ラゴでの日米首脳会談。

 そして同年7月のドイツでのG20首脳会議。

 夕食会後、トランプ氏の隣に座っていた安倍首相がロシアのウラジーミル・プーチン大統領が近づいてきたのを察知するや、席を譲ってプーチン氏を座らせ、即席のトランプ・プーチン会談が実現した場面がさらりと書かれている。

 安倍首相について一番行数を費やしているのは、トランプ大統領がノーベル平和賞受賞を真剣に望んでいたというくだりだ。

 2019年2月15日、トランプ大統領が安倍首相からノーベル平和賞に推薦されたと自慢したことがある。大統領のホワイトハウスでの記者会見の時だ。

 同18日の衆院予算委員会で野党議員がトランプ発言の真偽をただした。

 安倍首相は「ノーベル平和賞選考委員会は推薦者と被推薦者を50年間は明らかにしないのがルールだからコメントを差し控える」とお茶を濁している。

 その経緯について本書は以下のように記している。

「2019年8月21日、トランプ大統領はノーベル平和賞を獲得するにはどうしたらいいか真剣に考えていた。まず誰かに推薦してもらうために電話することを考えた」

「一番のターゲットになると考えたのは主要国首脳の中で自分に一番媚びへつらう(the most obsequious)安倍首相だった」

「だがトランプ氏は(安倍首相にではなく)別のアジアの国の首脳(韓国の文在寅大統領と思われる)に電話を入れた」

「ノーベル平和賞獲得工作で外国首脳にロビー活動を続けている過程でトランプ氏は以下のような表現を考えつき、相手にそう伝えた」

「『もうそろそろ(私がノーベル平和賞を受賞してもいい)時期だ。オバマ氏は何もしないのに同賞を受賞した。私は北朝鮮との間に平和をもたらした。ノーベル平和賞をもらってもおかしくないだろう』」

「トランプ氏がノーベル平和賞に病的な執着心を燃やしたのは、オバマ氏が大統領就任後1年も経たないうちにノーベル平和賞を受賞したことに対する対抗心からだった」

「トランプ氏が欲しがったのはノーベル平和賞だけではなかった。誰かがシンクタンクから、生涯かかって達成した業績に対し賞が授与されたと聞くと、自分の方が受賞者には最適だと側近に嘯いた」

「2017年後半には自分で自分に『大統領自由勲章』を授与することすら考え、そう側近にもらしていた」

 今、全米の書店店頭には、ご紹介した2冊が平台に山積みされている。

 店員の話だと、客筋は真っ二つ。

「両方買うという人はあまりいませんね」

 米国は弾劾裁判から一気に大統領選にギアチェンジする。

筆者:高濱 賛