サンフランシスコから60kmほど離れたカリフォルニア州ソノマ地区で、ワイナリーのタンクから大量のワインが川へ流れ出す騒動があった。

 事故があったのは50年の歴史を持つロドニー・ストロング・ヴィンヤーズ醸造所。一般的な赤ワインの種類ピノ・ノワールを地区で最初に植樹したところで、数々の受賞歴もある著名なワイナリーだ。

  1月22日、ワインをブレンドする10万ガロン(約45万リットル)のタンクの蓋がなんらかの原因で開いてしまい、職員が懸命に回収の努力をしたものの、9万6000ガロンの赤ワインが流れ出した。ワインボトルに換算すると49万本近い量で、ワイナリーから川へつながる敷地の一部がワインレッドに染まっていた。

 このワインは、日本では1本3000円代で販売されている。今回流れ出した量は、市場価格で15億円弱に相当する。

 カリフォルニアワインの産地では、これまで2度大きなワイン流出事故は起きている。1979年と2005年で、1979年のときは、ナマズ、マンボウ、ブルーギルなど少なくとも2000匹の魚が酸欠で死んだという。

 今回のワインも、周辺住民が飲料水にしているロシアン川に流れ込んだ。乾季は大規模な山火事に見舞われたソノマ地区だが、幸いにも、現在は雨季で川の水量が多い。24時間経過後も魚、カエル、鳥、虫に大きな被害はないと報告されている。

 この水はいずれ太平洋へ流れ込むが、なんとももったいない話だ。日本にソノマワインはあまり輸入されていないので、今回の事故でソノマのワインがより貴重になるかもしれない。(取材・文/白戸京子)