2019年も数多くの災害が日本各地で発生しました。記憶に新しいのは、9月と10月、本州各地に爪痕を残した台風ではないでしょうか。こうした自然災害に遭った場合、「確定申告」を忘れずに行いましょう。手間がかかるように見えますが税制面での支援が受けられ、生活再建に役立ちます。

○確定申告することで所得税(復興特別所得税含む)の減免が受けられる

地震や台風・豪雨、豪雪など、災害が多発する日本。2019年は超大型台風が各地に甚大な被害をもたらしました。こうした台風や地震などの自然災害で被災し、財産に損害が出てしまったら忘れずに確定申告をしましょう。

確定申告は一見、大変な作業に感じられるかもしれませんが、行うことにより一定の金額の所得控除を受けることができます。確定申告をしないと税制面での優遇は受けられませんし、「確定申告で税負担が軽減されますよ」とアナウンスしてくれるわけではないので、ぜひ知っておいてほしい知識です。

具体的な手続きですが、以下のような流れになります。

【1】 被災した

【2】 地元自治体で罹災証明書を交付してもらう

【3】 税務署で確定申告をする(災害減免法の適用または所得税の雑損控除)の適用を受けることを記載

【4】 税負担が軽くなる

確定申告の申請書類ですが、自宅のパソコンやスマホでも作成でき、提出は郵送でも可能です。不慣れな場合は税務署でも相談できるので、作成に必要な書類(マイナンバーがわかるもの、会社員は源泉徴収票、火災保険の受け取り状況がわかる書類、災害時のやむを得ない支出の領収書など)などを事前に用意して行くとよいでしょう。

○減免には雑損控除と災害減免法の2種類がある

現在、被災した人が受けられる税優遇制度には2つあるので、確定申告時にどちらかを選ぶ必要があります。それぞれ特徴があるので、解説していきましょう。

1つは所得税の「雑損控除」。災害などで受けた損失額を社会保険料や生命保険料、寄付金などと同じように、一定額まで所得から控除することができます。これは災害だけでなく、盗難や横領の損失も対象になります。大きな特徴として、その年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年から3年間は繰り越して控除されることがあります。また、住民税へは自動的に反映されるので、手続きが不要です。

もう1つの方法が「災害減免法」の適用による負担軽減です。こちらは、雑損控除と違い、所得金額が1000万円以下の人を対象にしています。下表のように所得金額に応じて軽減・免除される税額が異なります。ただ、この「災害減免法」は、繰越ができず1年限りになります。また、住民税の雑損控除を受けるには別途、申告書の提出が必要なので、確定申告の期間中に住んでいる市区町村で手続きをしましょう。

★災害減免法により減免される所得税額


○雑損控除と災害減免法、どちらを選べばいい?

所得税の雑損控除と災害減免法ですが、どちらか選ぶとよいかは、判断に迷うところでしょう。

災害減免法は、住宅または家財が被災し、(1)時価の1/2以上が損失した、(2)所得金額が1000万円以下でないと適用が受けられません。また、雑損控除とは違って、撤去や修復にかかった費用は、損失額に含めることはできません。そのため、適用条件にあてはまらない人は雑損控除を受けましょう。

雑損控除は 最大3年間、繰越すことができるため、損失額が多いときほど有利といわれています。また、「生活に通常必要な資産」が被災した場合も適用となるので、自家用自動車などが被災した場合も含めることができます。

大きな自然災害で自宅や財産に大きな損失を被ると、心身ともに大きな負担となることでしょう。せめて所得税や住民税などの税金面だけでも負担を軽くしたいもの。わからないことは税務署で相談しつつ、手続きを忘れずに行いましょう。



○嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。