欧州車のような硬派な走りが魅力の現行国産車もチェック

「若い世代が買える楽しいクルマがない」と言われるようになってすでに久しい。日産GT-RやフェアレディZ、ホンダ・シビックタイプRやSUBARU WRXなど伝統的な高性能スポーツモデルは健在ながら、高価格化が進んでしまったこともその理由のひとつだ。しかし、最近になって比較的安価ながら運転の楽しさが十分味わえるクルマが徐々に増えてきているという、じつに喜ばしい傾向がみられる。そこで今回は、現行型の国産車の中で、「おぉ! ツウだね!」とクルマ好きが唸るかつ嫌みにならないクルマを5台選んでみた。

1)トヨタ・カローラツーリング 1.2 W×B

 新世代プラットフォームの採用で走りの質が劇的に高まったと評判の新型カローラシリーズ。このご時世にあって、クルマ好きのためのスポーツグレードをしっかり用意してくれているのが素晴らしい。注目すべきはW×Bグレードの1.2ターボ搭載車。6速MTのみの硬派な設定で、しかも新設計のマニュアルトランスミッションであるiMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション) を搭載。

 先行して発売された5ドアハッチバックのカローラスポーツの印象では、iMTの特徴であるエンストのしにくさや、シフトチェンジ時に得られる各ギアのつながりのよさは、運転初心者にとってはもちろん、ベテランドライバーにも受け入れやすい便利な機構だ。MTは気になるがMTの運転はウン10年ぶりなので躊躇している、といった人にも強くオススメできる。

2)スズキ・スイフトRS(5速MT)

 走りが楽しいスイフトといえばスイフトスポーツのイメージが強いが、標準スイフトのスポーツグレードRSも、じつは十二分にスポーティな走りが楽しめる。エンジンはNAの1.2リッターなので速くはないが車重は870kgと軽く、高剛性ボディがもたらす余裕を感じさせながら、峠の下りでの走りはなかなか熱い。

 欧州チューニングとされるダンパーは高速域でのフラットライド感が高く、コーナーでは昔のプジョーやルノーの廉価車のように軽快。その名の通り欧州車的な硬派な走りが味わえる。よりホットな走りを追求するならスイフトスポーツだが、味わい深いスイフトRSも忘れず検討候補に挙げて欲しい。

ベース車の良さを感じつつスポーティな走りが楽しめるモデルも!

3)日産ノートNISMO S

「NISMOのDNAを全身に宿したハイスペックモデル」との謳い文句は誇張ではない。ポテンザS007を履きこなすシャーシ性能は、レーシングドライバーによるサーキットアタックにも応えられるポテンシャルを備えている。

 サスペンションのメンバーやトンネルステーなどボディの各部は補剛パーツで強化され、剛性感に富んだステアリングフィールなどはベース車のノートとはまったく別モノの仕上がり。エンジンも圧縮比を高めた専用チューンで、パワー感、サウンドとも文句なし。あらためて注目する価値のあるコンパクトスポーツだ。

4)ホンダ・フィットRS(6速MT)

「RS」と名がつくものの、スポーツ仕立ては主に内外装の雰囲気のみ。エンジンやサスペンションなどに特別なチューニングが施されているわけではないが、注目は6速MTが選べるということ。MTで乗ると驚くほどスポーティに感じるエンジンをはじめ、現行型フィットそのものの素の出来の良さが堪能できる。

 しかもMTでも運転支援システムのHonda SENSINGが装備され、自動クルコンもしっかり使えるところが素晴らしい。誤発進抑制機能だけは省かれるが、MTには必要ない機能なので問題ない。

5)SUBARU BRZ Rカスタマイズパッケージ

 本格派スポーツカー、BRZに用意される最廉価グレード。競技用ベースのスパルタンな仕様ではなく、ただ装備を簡素化したグレードで、その名のとおりユーザーがカスタマイズすることを前提としている。しかし、スチールホイールを履く以外に取り立てて安っぽいと感じる部分はなく、走行性能面に手抜かりはないので、このまま乗っても全然OK。水平対向エンジンならではの低重心感がもたらす旋回フィールの気持ち良さをはじめとする、SUBARU車史上最高のハンドリングが存分に味わい尽くせる。トヨタの86には同様のグレードがなくなってしまった。