福田正博 フットボール原論


東京五輪代表メンバー入りを狙う橋岡大樹

■U−23アジア選手権グループリーグで敗退して東京五輪に向けて不安材料が残ったU−23日本代表。惨敗したチームではあるが、そのなかでアピールできた選手はいたのか? 元日本代表の福田正博氏が大会を振り返った。

 U−23日本代表は、U−23アジア選手権で初戦のサウジアラビア戦を1−2で落とし、続くシリア戦も試合終盤のカウンターからの失点で1−2とされて2連敗。グループリーグ敗退が決まったなかで臨んだカタール戦は1−1の引き分けに終わった。

 判定に泣かされた面はあったものの、こうした結果を招いた要因は、日本とほかの出場国との「目的の差」が大きかったように感じた。

 この大会には上位3カ国に東京五輪への出場権が与えられる。そのため、ほとんどの国が昨年12月初旬頃からキャンプを張るなどして、今大会に照準を合わせていた。それに対して、すでに開催国枠での出場が決まっている日本は、東京五輪に向けたチームづくりの一環として選手を見きわめる場でもあった。この意識の違いが、今回の残念な結果につながった要因のひとつと考えている。

 また今大会は、グループリーグ初戦を最低でも引き分けないと勝ち上がれないことをあらためて思い知らされた。初戦で勝ち点を手にできなかったことで、2戦目は勝ち点3が必要になり、その結果戦い方が前がかりになったところを相手にカウンターを決められた。ここで「初戦の重要性」を再認識できたことは、五輪に向けて数少ない収穫だったと言える。

 今回のフラストレーションの溜まる結果に、森保一監督への批判が溢れた。批判は当然のことだとも思う。ただ、結果にとらわれてダメ出しをするだけではなく、五輪本大会でメダルを獲得するために何が必要なのかを建設的に分析していきたい。

 五輪まであと半年。五輪代表世代に海外組が増えたことで、今回もチームの軸になる選手を招集できていないのが実情だ。さらに、どの選手を東京五輪に招集できるのか、直前までわからない部分もある。

 W杯予選と異なり、五輪は選手を招集できる拘束力がない。実際、リオデジャネイロ五輪では久保裕也(当時スイスのヤングボーイズ所属)がメンバーに入っていたものの、直前になってクラブから招集を拒否された。

 こうしたケースは東京五輪でも十分起こりうる。東京五輪世代は攻守両面で主軸となる選手のほとんどが欧州クラブの所属だ。また、東京五輪の主力に考えていた国内組の選手たちが昨夏に次々と海外移籍したことも、森保監督の仕事を難しいものにしている。海外組を招集できないなど、さまざまなことを想定してチームづくりを進めなければいけない。

 いずれにしても、今回の大会が国内組の選手にとって東京五輪代表18人のメンバーに入るための大きなチャンスだったのは間違いない。しかし、その好機をモノにしようという「がむしゃらさ」がプレーから伝わってくる選手は、残念ながらあまりいなかった。

 そうしたなかで、橋岡大樹にはポジティブな印象を受けた。サイドバック、センターバック、ウイングと複数ポジションを担えるユーティリティーさを示し、3試合にフル出場。攻撃面に課題は残すものの、高さと強さという持ち味を発揮したことは評価できる。

 また齊藤未月も、もう一度プレーを見たい選手だ。格上との対戦が予想される東京五輪では、彼のように相手からボールを奪う能力とプレー強度の高い選手がこれまで以上に必要となる。橋本拳人や三竿健斗、遠藤航といった中盤のオーバーエイジ枠候補の選手もそうした特長を持つが、齊藤未月が機能するなら、ほかのポジションにオーバーエイジを起用できるようになる。

 ほかの守備陣では、大切な局面で失点につながるミスをして、ポジティブな意味で目立つプレーは残念ながら少なかった。それだけに日本代表でも不動のCBとなった冨安健洋をはじめ、板倉滉や中山雄太という海外組を招集できるかどうかが重要なポイントだろう。これは攻撃陣にも言えることだが、能力の高い選手を揃えるためのサポートを、日本サッカー協会にはしっかりとやってもらいたい。

 攻撃陣は、崩しのところでのアイデアやクオリティーがいまひとつ欠けていた。相手がゴール前を固めていたこともあるが、そもそもペナルティーエリア内でのプレーが少なかった。なかには「監督から戦術の落とし込みがない」と不安を漏らす選手もいたようだが、それも当然重要ではありつつ、同じぐらい大切なことが状況に応じた選手各自の判断力を伸ばすことだろう。

 日本サッカーの抱える課題のひとつに、「監督から言われたプレーしかできない」ことがある。代表的なケースとしてはハリルホジッチ元監督時代の日本代表が、「タテに速く」と指示をされると戦い方がそれ一辺倒になり、一本調子になってしまった。

 森保監督は指示待ちになりがちな日本人選手が、自分で考えて判断し、正しいプレーを選択できるようになることを優先し、長いスパンで日本サッカーのステップアップを考えているはず。これは形や戦術を落とし込んでいくよりも、はるかに難しい取り組みだ。

 この先、U−23代表チームは、3月に南アフリカ、コートジボワールという東京五輪出場を決めているチームとの強化試合がある。彼らは五輪開催国でのテストマッチということで、ベストメンバーを組むことが予想される。

 国際Aマッチデーに行なわれるため、U−23代表も海外組の招集が可能だ。ただ、同時期にA代表がW杯アジア2次予選に臨むため、久保建英や堂安律、冨安らをどちらのチームで招集するのか難しい判断を迫られるだろう。ただ、昨年11月のU−23コロンビア代表戦のように、東京五輪世代はU−23代表に集中させる可能性はある。

 今大会のグループリーグ敗退という結果は重く受け止めなければいけない。そうしたなか、東京五輪に向けて本番で対戦する可能性のあるチームとどう戦うのか。選手たちが生き残りを懸けてどんなプレーを見せてくれるのか。風当たりが強くなっているなか、五輪代表世代にそれに反発するパワーが生まれることを期待している。

 また、森保監督には勝ちにこだわる采配を期待したい。これまでは選手の見極めに重点を置く傾向が強く、試合展開に応じた手を打つのが遅いと批判をされてきた。そうした批判を受けながらも、ブレずに自らのスタンスを貫いてきた森保監督だが、本番で対戦する可能性のあるチームと戦える機会はそうあるものではないだけに、貪欲に勝利を追求する姿勢を見せてほしい。