新体制発表会で緑のユニホームに袖を通した大久保。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 プロ20年目を迎える稀代の点取り屋が“名門復活”を期す首都のクラブで新たなスタートを切る。

 1月20日、東京ヴェルディが新体制発表会見を行なった。2020年シーズンの決意を表明する場で最も注目を集めたのは、ジュビロ磐田から完全移籍で加わった大久保嘉人だ。

 J1通算185得点、国際Aマッチ60試合・6得点。鋭い得点嗅覚を持つストライカーは、これまで日本サッカー界のトップを走ってきた。代表レベルでは04年のアテネ五輪に出場し、10年と14年にはワールドカップを経験。クラブレベルでは13年から3年連続でJ1得点王とベストイレブンを受賞している。新加入選手の中では実績が頭ひとつ飛び抜けている存在だ。

 ジュビロ磐田でプレーした昨季はリーグ戦・20試合の出場で1得点に終わったものの、高い技術や駆け引きの巧さ、サッカーに懸ける情熱は衰えていない。では、なぜ大久保は新天地に“ヴェルディ”を選んだのか。新体制発表後の囲み取材でその理由をこう話した。

「サッカーのスタイル。非常に魅力的なサッカーをしていた。スタイルは川崎に近いけど、もっと細かい。勉強になるし、みんなも楽しくやれている印象がある。本当に全てが細かい。それが大事になってくる。それをやれれば、圧倒して勝てるチームになると感じた」

 東京Vは昨季途中から指揮を執る永井秀樹監督の下で、攻撃的なサッカーを展開している。ボールを保持しながら、個人技とコンビネーションを織り交ぜた崩し。そうした方向性に大久保も共感し、緑のユニホームに袖を通した。

 また、国見高の先輩でもある永井監督の存在も決め手のひとつ。記者会見では指揮官から「2020年シーズン最初の練習試合に1500人以上のお客さんが来てくれました。隣にいる大久保嘉人様のおかげかもしれませんが、昨シーズンの4か月で積み上げたサッカーが皆様に期待を持たせられた賜物だと思っています」と、冗談を飛ばされるほどの気心知れた間柄だ。

 大久保はオファーを受ける前に永井監督と直接話しており、ふたりの恩師である小嶺忠敏氏(現・長崎総合科学大附属高監督)からも「永井は大丈夫だ。あいつはしっかりしているから間違いない」と太鼓判を押されたという。「僕からすれば大先輩。印象と言われるとなんと言っていいのか分からない(笑)。大先輩のためにも貢献したい」と大久保は指揮官への想いを語りつつ、「ゴールは取れるだけ取りたい」と新天地での躍動を誓った。
 
 気になるのは大久保に求められる役割だが、やはり得点を奪うことには違いないだろう。合流して間もない中で、大久保もイメージは持っている。

「ヴェルディのサッカーをすれば、バイタルエリアが最後に空く。そこから自分が飛び出してもいいし、ミドルシュートも打てるはず。ミドルシュートが打てれば、相手も前に出てくるのでいろんなアイデアが出てくると思う」

 左右に揺さぶりながら、空いた瞬間を見逃さない。4−3−3を基本とする東京Vのシステムにおいて、最前線の中央はフリーマンの役割を担う。チャンスメイクに関わりながら、アタッキングサードでフィニッシュに絡む。ゴール前で多くのチャンスに絡めれば、自ずとチームを勝利に導く得点も増えてくるはずだ。

 今年からチームに加わった江尻篤彦強化部長も、大久保に大きな期待を寄せるひとり。大久保だけでチームが成り立つわけではないとしつつ、「やっぱり彼に求めるのは得点のところ。彼もそう思っている。ただ、彼だけが良くてもダメ。彼を機能させるために組織がある。そういうものを構築してほしい」と、早い時期にフィットすることを願った。

 すでに大久保はチーム内で積極的にコミュニケーションを取っており、徐々にチーム内に馴染みつつある。それだけではなく、若手へ自らの経験を伝える役割も率先して遂行。今季からトップチームに昇格した藤田譲瑠チマも言う。

「中村憲剛さんの話を聞いて、ためになることしかなかった。また、フロンターレでは縦パスのタイミングが凄いことを聞いて、受け手が相手と1メートル離れていれば、そこに通ると教えてもらいました。そこから自分も意識しています」

 08年以来のJ1復帰を目指す東京Vで、大久保はどんなプレーを見せるのか。慣れ親しんだ背番号13を背負い、尊敬する先輩を男にするためにボールを追い続ける。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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