トレーニング中も、試合前のアップも静かで、活気や闘志が伝わって来なかったのも残念だった。

 全体的に疲労感が漂っていたから、明るい雰囲気を作り出せなかったのか、凡ミスで第1戦を落とした悪い流れを断ち切るようなリーダーが不在だったからか、サバイバルと言いながら、実際には海外組とオーバーエイジで本大会のメンバーの大半を占めることを感じてしまっているのか……。

 むろん、これまでどおり選手の自主性を促しながら観察するというスタンスを貫いた森保一監督のチームへのアプローチにも問題があった。ただでさえ準備不足のなか、それでも決勝までの6試合を経験し、東京五輪へのシミュレーションを行ないたかったのなら、本番モードのアプローチの仕方があったはずだ。

 振り返ってみれば、準優勝に輝いたアジア大会や同じく準優勝のトゥーロン国際大会、敵地で勝利したブラジル戦などは、スピーディな攻撃で効果的にカウンターを繰り出し、ゴールを陥れてきた。

 だが、今大会ではすべての試合で日本がボールを支配する展開だった。

 本来ならディフェンスラインと中盤でボールを回して相手を引き出しておいて、鋭い縦パスで背後を突き、アタッキングサードを攻略する「疑似カウンター」の状況を作るのがチームとしての狙い。しかし、今大会では、ボールを晒して相手を釣り出す余裕がなく、ピッチ状態やコンディションの不良もあって、「ゴールに直結するプレーの精度が低かった」と杉岡が振り返ったように、アタッキングサードでの連係に課題を残した。

 その点で、カタール戦の後半、ひとり少なくなって劣勢を招いた時間帯のほうが、攻撃に鋭さとスピードがあったのは、示唆に富んでいた。
 
 チーム全体が低パフォーマンスだったなか、評価を上げたのは、食野、相馬勇紀、田中駿汰、岡崎、齊藤、橋岡大樹だろうか。

 カタールとの3戦目はガス欠になったが、食野の貪欲にゴールを目指す意欲と鋭い仕掛けは頼もしかったし、1対1に持ち込めば必ずクロスを上げてくる相馬の突破力は本大会でも武器になるはずだ。

 田中駿汰の縦パスを入れるタイミングや裏への狙いは的確だったし、岡崎はボランチや前線に何度も好パスを届けた。

 鋭いアプローチで相手を潰し続けた齊藤は、闘志が伝わってきた数少ない選手のひとり。ウイングバックと3バックの一角を務めた橋岡のポリバレントな能力と3試合フル出場を果たしたタフネスぶりも、本大会に必要なものだろう。

 考えられ得る悪いことがすべて噴出したU-23アジア選手権。「俺らは弱い。このままじゃいけないと思っている。幸い、これが本番でなくて良かった。ここで気付けたのは良かった」と小川が語るように、重要なのは、ここで得た教訓、課題を東京五輪にどう繋げるか。繰り返すが、あくまでも照準は8月の東京五輪でのメダル獲得なのだ。

 3月の南アフリカ戦、コートジボワール戦では海外組はもちろん、オーバーエイジを招集する可能性もあるという。

 指揮官が本番に向けてようやく着手する仕上げの一手、今大会で悔しい思いをした国内組の選手たちの逆襲に期待したい。

取材・文●飯尾篤史(スポーツライター)