2021年に市場規模3兆円「大麻ビジネス」バブルがやってくる…? その名も「グリーンラッシュ」

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大麻は「カジュアルなもの」…?

「大麻くらい、良いじゃないか」

そんな意見をSNS上で見ることが増えた。この様な意見が出てくるのは、カナダや米国一部の州で合法化が進んでいる背景もあるのだろう。

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ただし大麻くらい別に良いじゃないかという意見に対して、「大麻はコカインやLSDなど身体的・精神的中毒性の高いハードドラッグへの入り口となる”ゲートウェイドラッグ”であり、これを許すと他のドラッグが蔓延するから絶対許すな」という意見もある。慎重さを要するテーマであることは確かだ。

私の住む南米コロンビアでは、日本に比べて大麻が身近な存在である。

散歩で公園に行くと大麻を吸っている人を目撃したり、前からタバコ吸ってる人が来たと思ってすれ違うと、匂いで「あっ違う。大麻だ」と気づく。そんなこともある。

また土産物の路上販売をしている露店を見てみると、ブレスレットの隣に大麻を吸うためのパイプが並んでいる光景を目にした。

土産物店のブレスレットの隣に並ぶ、大麻を吸うパイプ。

この様子からも大麻がいかにカジュアルに吸われているものかがわかるはずだ。

PayPal創業者が、数百億円を大麻ビジネスに投資

元来、コロンビアでは先住民族(インディヘナ)が伝統的に医療、薬用目的でマリファナを使用してきた歴史的背景もあるのだろう。

コロンビアにおいてマリファナは”絶対的に悪いもの”という認知のされ方はされていない。

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だからといって私は、「大麻くらい、良いじゃないか」と言いたい訳ではない。

大麻については、リスクや副作用を含めて、正しい理解がより一層必要とされる。

そこで、この記事では世界の大麻合法化の現状、私の住む南米コロンビアにおける人々の大麻に対する認識がどのようなものなのかから始まり、大麻服用者へのインタビュー、大麻の効用・副作用やリスクについて書いた。

実はカナダやウルグアイ、米国の11の州が、嗜好用大麻を含む大麻の完全な合法化に踏み切っている。

現状では違法のニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事も嗜好用大麻の合法化の方針を明らかにしており、ニューヨークが合法化に踏み切るとさらに別の州もその流れに傾くことになりそうだ。

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なおニューヨークでは嗜好用大麻使用は合法ではないが非犯罪化されている。少量の大麻所持は罰金刑となるものの、逮捕されることはないのだ。

また医療目的に限定してフィンランド、ベルギー、イギリス、ドイツその他、大麻の合法化に踏み切る国は多数出てきている。

また大麻合法化により、大麻由来の成分で薬品、食品や化粧品を作る大麻ビジネスが盛んになり、「グリーンラッシュ」という言葉も生まれている。世界の合法大麻市場は、2021年に314億ドル(約3兆5700億円)規模に達すると推測されている。

決済サービスPayPalを創業した米国の起業家・投資家ピーター・ティール氏は、なんと数百億円をグリーンラッシュ関連企業に投資している。

大麻を取り巻く「リアルな現状」

そのように大麻合法化が世界中の国において議論される中、私の住む南米コロンビアではどのようになっているのか。

嗜好用大麻使用は合法化されていないが、非犯罪化されている現状である。

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2012年、コロンビア政府は1人あたり20グラムの大麻所持を認定。2015年、コロンビア最高裁判所は大麻栽培に関しても1人あたり20株までの栽培を認めると定めた。

また医療目的での使用も合法化された。イメージとしては、「個人で嗜む程度なら誰も何も言わない」、という感じだ。

ただし大麻を他人に販売したり、20グラム以上所持することは違法であり、発覚すると逮捕される。また公的な場所での大麻の使用は禁止されているので、駅や街の広場など人が多い場所で堂々と大麻を吸っている人はいない。

ただし冒頭で前述したようにコロンビアにおいて大麻を吸っている人を見かけることはさほど珍しいことではない。夜に公園に行くと大麻特有の匂いがしているので誰かが大麻吸っているなと気づくこともある。だからといって誰かが「大麻吸ってる」と警察に通報するわけでもない。

しかし誰もかれもが大麻を吸っているわけではない。大麻は絶対的な悪というわけではないが、大麻は良くないものだという認識もまた共有されているように思われる。

この背景には、かつて世界のコカインビジネスの7割を牛耳った麻薬王パブロ・エスコバルが存在した国であり、実際にコカインの流行によって社会が退廃した歴史を持つコロンビアだからこそ感じる、大麻がコカインへのゲートウェイドラッグとしてネガティブな印象があるのだろうと思う。

パブロ・エスコバルについて知りたい方は、こちらの記事をお読みいだたきたい。これが私の目から見たコロンビアにおける大麻使用の現状認識である。

なぜ大麻を吸うのか、大麻服用者にインタビュー

では、大麻を服用している人はどう考えているのか。

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私の知人のコロンビア人にも大麻を吸っている人が数人いるが、今回は大麻の副作用を含めた効能を熟知しているだろうということで、大麻を吸っている医者の知人に話を聞くことにした。

医者のSandra Upegui氏(仮名)

――大麻はあなたにとってはどのような存在でしょうか?
リラックスするために欠かせないものです。あと大麻は適量であれば摂取しても自身の行動をコントロールできるものだと考えます。

――初めて吸ったのはいつでしょうか?
20歳の時です。

――大麻の値段はいくらでしょうか?
大麻の質によりますね。5000ペソ(160円)から高いものだと5万ペソ(1600円)くらいのものまで色々あります。質が悪い大麻は気管や肺など呼吸器系に悪影響を及ぼすので、できるだけ高めの大麻を買うようにしています。

――中毒性はあるのでしょうか?
中毒性はありますね。ただし他のハードドラッグに比べるとかなり軽い中毒性だと思います。大麻の中毒性はむしろアルコールよりも少ないのではないでしょうか。個人的にはアルコールこそ禁止にすべきだと思いますね。

――大麻について一般的なコロンビア人はどう考えているのでしょうか?
良いものとは思っていないでしょうがものすごく悪いものとも思っていないです。

――大麻とコカインの間で明確な区別はありますか?
その区別は確実にあります。私は一度もコカインを摂取したことはないです。

――大麻が他のドラッグへの入り口となる可能性はあると考えますか?
その可能性はありえると思います。だからこそ大麻と、コカインなどその他ハードドラッグとの違いを青少年に十分に周知すべきだと思います。

コカインとの違い

Sandra Upegui氏以外にも複数人にインタビューを行ったが、その誰もがコカインと大麻とを明確に区別していた。

どのように区別しているのか尋ねたところ、「コカインの強力な副作用と中毒性」を理由に挙げる人が多かった。コカインは快感が強烈だが、依存性があり長期的に服用すると幻覚や妄想が襲ってくる。

こうしたコカインの副作用の強烈さとネガティブなイメージがあり、大麻は吸ったとしてもコカインはやらないわけだ。

少なくとも私の友人に大麻を吸うコロンビア人はいてもコカインを吸っている人は1人もいない。コロンビア人にとって大麻とコカインには明確な区別があるように思われる。

それでは大麻を吸う人がどのような目的で吸っているのか。インタビューする中で分かったのはリラックス目的で吸っている人が多いという点だ。

以降では大麻の効果・副作用について見ていこう。

痛み止め、睡眠促進などの医療効果

大麻には筋弛緩作用、鎮痛作用、沈静作用、睡眠促進作用、食欲増進作用、嘔吐の抑制などの効果があるとされる。

ゆえに医療目的での大麻合法化が進んでいる国は、米国、オーストリア、イスラエル、スペイン、フィンランド、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストラリア、コロンビアetc..など着々と増えている。

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しかし嗜好用での大麻の合法化には慎重な国が多いのだろう。ウルグアイ、カナダは合法である。それ以外の国では一部地域で合法化されているにとどまる。

大麻には副作用もあると言われている。代表的なのが一時的な記憶力や集中力の低下、幻覚、鬱病を引き起こす可能性、初めて服用した場合には錯乱状態に陥る等。ただし副作用に関してさらなる研究が求められる段階にある。

またこの副作用に加えて先ほどから述べているように、ゲートウェイドラッグとしてのリスクもある。

全米科学アカデミー(National Academy of Sciences)の医学研究所(Institute of Medicine)が1999年に発表した報告書によると、大麻使用経験のある1億1100万人のうち、その後にハードドラッグへ発展したのは4%とされる。

4%というのは解釈が分かれる数字かもしれない。

大麻を吸っていなくてもその4%の人はハードドラッグを服用したかもしれないので、大麻がどれだけの影響を与えたのかは不明だ。それでも大麻のゲートウェイドラッグとしてのリスクは全くないとは言い切れないように思われる。

カナダの嗜好用大麻合法化は「苦肉の策」?

こうした大麻の副作用やリスクから、嗜好用での大麻の合法化には踏み切っていない国が多いのだろう。それでは嗜好用大麻を認可したカナダはなぜ合法化に踏み切ったのか。

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実はカナダでは、そもそも取り締まりが困難なまでに大麻取引が蔓延しており、犯罪組織の収入源になっていた。

そのため合法化によって犯罪組織の収入源を断つのと、大麻関連の税収を増やす狙いがあったと言われている。

「大麻は安全で良いものだから合法化された」というよりも「やむを得ず合法化した」という背景を認識する必要がある。

嗜好用大麻と医療用大麻の区別をつけ、正しい認識のものと議論する必要があるのではないだろうか。