初めて会話を交わした5年前は、「まだ自信はありません」と語っていたプロの世界。だが、法政大での紆余曲折の4年間を過ごし、宇草孔基(うぐさ・こうき)はひと回りも、ふた回りも成長し、「スケールの大きな選手になりたいです」と意気高らかにプロの世界へと飛び込んでいく。

 高校時代は常総学院(茨城)の主力として、3年春のセンバツに出場。3割を超す打率を残すとともに、身長185センチと大型ながら足も速く、1試合5盗塁の大会タイ記録も残す活躍でチームに貢献。ベスト8入りの立役者となった。夏は甲子園出場を逃すも、U−18の日本代表に選出された。

 当然、プロ注目の存在だったが、宇草は迷うことなく法政大への進学を決めた。冒頭でも紹介したように、当時の宇草は自分に自信を持てず、U−18代表では小笠原慎之介(東海大相模→中日1位)やオコエ瑠偉(関東一高→楽天1位)といったバリバリのドラフト候補の選手に対して気おくれする部分があった。


昨年のドラフトで広島から2位指名を受けた宇草孔基

 また結果も伴わず、U−18のワールドカップでチームは準優勝を果たすも、宇草は11打数1安打。「自分の力を出せずに終わってしまった」と唇を噛んだ。

 心機一転、活躍を誓った六大学野球、神宮の舞台だったが、リーグ戦で2年間に放った安打は、1年春の2本のみ。「いま考えると、心技体とも未熟で結果が出なくて当然」と力不足を認めているが、アクシデントもあった。

 2年秋の開幕直前に、スライディングの際にできた足の傷口から菌が入り、高熱に侵され病院に行くと即入院。結局、このシーズンは出場なしに終わるなど、もどかしい日々が続いた。

 そんななか、転機となったのが3年夏だ。春のリーグ戦は9打数1安打と低調な成績に終わり、青木久典監督とともに打撃フォーム改造に取り組んだ。それまでは足を上げて打っていたが、体がぶれてミスショットが多いため、すり足に変えた。

 すり足にすると、どうしても強く振れないイメージが宇草にはあった。だが、青木監督から「振るんじゃなくて、打つんだ。芯に当たりさえすれば飛ぶんだ」と諭され、宇草は一心不乱に新打法に取り組んだ。

 すると、その成果は秋に表れた。長打への欲を捨てたことで、確実性が増し、結果として長打も増えた。リーグ戦13試合で打率.333(57打数19安打)、長打は2本塁打を含む5本を記録。また走っても6盗塁をマークし、チームの12季ぶりの優勝に貢献した。

 4年春も13試合で打率.339(56打数19安打)、4本塁打をマークし、侍ジャパン大学代表に文句なしで選出。日米大学野球では、MLB予備軍とも称される常時140キロ台後半から150キロ台のストレートを投げ込む米国代表の投手に対しても振り負けることなく、5試合で打率.333(18打数6安打)、3盗塁を記録するなど、アグレッシブな姿勢を貫き、優勝に貢献した。

「U−18で学んだことを糧に『今回は自分のいいところをどんどん出していこう』と思ったのがいい方向にいきました。気持ちや準備の面も含め、よかったと思います」

 そして大学4年間での成長について、宇草は次のように語る。

「調子がいい悪いではなく、ひとつずつ積み重ねて、調子が悪いなりにも内野安打にしたり、ショートのうしろに打ったりすることもできるようになりました。本当の自信って、こういうことなんだとわかりました。調子うんぬんで野球をやらなくなりました」

 大学最後の秋は40打数4安打と絶不調に終わったが、それでも宇草は胸を張る。

「学生野球最後のシーズンは、1日1日を区切って、悔いを残さないように常に新しい気持ちで臨むようにしていました。ひとりでいる時はしんどいと思うこともありましたけど、野球をやっている時は一喜一憂することなく集中できて、一生懸命、悔いなくやることができました」

 ドラフト会議では「指名漏れもよぎった」と不安な気持ちで当日を迎えたが、本人も驚く”ドラフト2位”という高評価で広島から指名を受けた。広島の球団カラーも「自分に合っている」と宇草は言う。

「自分はすかして野球はできないタイプです。だから、たくさん練習するチームで、自分をさらけ出してイチから野球に取り組めそうだなって思うんです」

 こうした姿勢があるからこそ、球団も高く評価したのだろう。そんな宇草の性格を知るからこそ、担当の尾形佳紀スカウトから「焦らずにね。大丈夫だよ」という言葉をもらったという。

「自分の持ち味は、どんな時でも攻めていけるところ。劣勢の時こそ思い切って攻めにいくことは貫いてやってきたことなので、それは継続してやっていきたいです」

 前向きな言動とプレースタイルは、宇草の最大の魅力だ。それは大学での4年間でより強固なものになった。

 緑の芝と漆黒の土が映えるマツダスタジアムで、走攻守で駆け回る宇草の姿を心から楽しみにしている。その姿は、多くのファンに野球の楽しさだけでなく、元気を与えるものになるはずだ。