昭和・平成・令和を通して『仮面ライダー』が支持され続ける理由 令和のライダーは「社長」

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1971年から始まって…

少子化が深刻なのは知られている通り。その分、子供向けの商品やサービスの市場規模も多くが縮小している。ところが、テレビ朝日で放送中の『仮面ライダーゼロワン』(日曜午前9時)の人気は堅調で、その関連グッズの売れ上げに至っては伸びている。どうしてなのだろう?

テレビ朝日『仮面ライダーゼロワン』HPより

連続ドラマのライダーシリーズがスタートしたのは1971年(昭和46年)。沖縄返還の前年だ。第1作は藤岡弘、(73)が本郷猛役で主演した『仮面ライダー』。以来、昭和期にはライダーの連ドラが9作品制作された。

昭和ライダーの最終作は『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)。その後、約10年半のブランクがあったが、2000年(平成12年)に復活する。平成ライダーの連ドラ第1作は『仮面ライダークウガ』。以降、現在までは切れ目なく連ドラの制作が続いている。子供たちの支持が手堅く得られている表れだろう。

平成期に制作された連ドラのライダーは20作品にのぼる。昭和期と合わせると計29作品になる。ライダーは1作品に1体とは限らないので、登場したライダーの数は100を軽く超えている。

令和最初のライダーは

そして令和となった後の2019年9月に始まり、現在も放送されているのが、『仮面ライダーゼロワン』だ。令和となって最初のライダーということもあって、「ゼロワン(01)」と命名されたという。

その主人公・飛電或人(ひでん・あると)を演じているのは高橋文哉(18)。2017年12月、日本一のイケメン高校生を決める「男子高校生ミスターコン2017」において応募者約1万人の中からグランプリに選ばれ、芸能界入りした。イケメンで新人クラスの俳優を主演に据えるのが、平成期以降のライダーのトレンドだ。

テレビ朝日『仮面ライダーゼロワン』HPより

平成ライダー第1作『仮面ライダークウガ』の主人公・五代雄介を演じたのは、まだ新人に等しかったオダギリジョー(43)だった。以来、以下のような面々が主演に据えられた。

■『仮面ライダーカブト』(2006年)天道総司役 水嶋ヒロ(35)
■『仮面ライダー電王』(2007年)野上良太郎役 佐藤健(30)
■『仮面ライダーW』(2009年)フィリップ役(W主演) 菅田将暉(26)
■『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)如月弦太朗役 福士蒼汰(26)
■『仮面ライダードライブ』(2014年)泊進ノ介役 竹内涼真(26)

ライダー出演時はみなブレイク前だったものの、魅力的なのは当時も今も変わりはない。このため、平成期と令和期のライダーは、女の子やお母さんたちからも熱視線が送られている。

新人クラスとは呼べなかった

一方、昭和ライダーは違った。『仮面ライダー』登場時の藤岡弘、は25歳だった。松竹のニューフェイスとして1965年にデビューし、すぐに映画『若いしぶき』に主演。同じ年、故安藤昇氏が主演した実録アウトロー映画『血と掟』にも出ている。藤岡もまたアウトローを演じた。ライダー出演時には新人クラスとは呼べなかった。

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第2作『仮面ライダーV3』(1973年)で主人公・風見志郎に扮した宮内洋(72)も同様だ。1968年の東映ニューフェイスであり、ライダーになる前から刑事ドラマ『キイハンター』(TBS、1968年)などに出演していた。昭和ライダーたちは一定のキャリアを積んだ男くさい俳優が目立った。

そんな昭和ライダーの初期の視聴率は大抵20%以上(ビジオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。一方、現在の『仮面ライダーゼロワン』の視聴率はというと、ほぼ3%台。数字そのものは決して高くはない。

とはいえ、少子化のため、現在は特撮ヒーロードラマのターゲットである年少人口(0〜14歳)自体が少ない。全人口約1億2600万人のうち、約1540万人。割合にして12.2%に過ぎない。それを考えると、あながち視聴率が低いとは言えないだろう。『仮面ライダー』が放送された1971年当時は年少人口が2500万人以上もいた。今より約1000万人も多かったのだ。

また、視聴率が3%台であろうが、子供たちの間で今もライダー人気が高いのは各種調査で証明されている。例えば、幼児雑誌『幼稚園』(小学館)が2019年5月に発表した調査結果によると、男の子のお気に入り番組の1位だったのは『仮面ライダージオウ』。女の子でも『ジオウ』が7位だった。

グッズの売れ行きも好調

そもそも、スポンサーの多くは子供向けの商品をPRしようとしているのだから、子供が見てくれさえすればいいのである。『仮面ライダーゼロワン』のスポンサーを他社と共に務めているバンダイグループの場合、流しているCMはその『ゼロワン』のキャラクターグッズなので、子供が見てくれたら御の字に違いない。

その上、このライダーグッズの売上高が大きい。2018年度の売上高はバンダイグループ全体で実に293億円(バンダイナムコホールディングスIR資料より)。航空自衛隊「F2」戦闘機の後継機開発費に匹敵する金額だ。2017年度の売上高は264億円だった。少子化という逆風下にもかかわらず、29億円も伸びた。

ライダーグッズというと、『仮面ライダー』放送時は変身ベルトやソフトビニール人形、ライダーや敵の怪人たちの写真入りカードが付いていた「仮面ライダースナック」(カルビー)が目立つ程度だったが、現在は多彩を極める。

バンダイグループが販売しているのは、変身ベルトの「DX飛電ゼロワンドライバー」、そのベルトにセットできるアイテム「プログライズキー」、やはりプログライズキーがセットできる武器「DXサウザンドジャッカー」、ボディパーツの着脱が可能な「RKF仮面ライダーゼロワン ハイブリッドライズフィギュア」などの玩具。ほかにリンスインポンプシャンプーや入浴剤などの生活用品もバンダイグループから出ている。その数たるや昭和期とは比較にならない。

ハイテク化した変身ベルト

玩具の質も違う。『仮面ライダー』の変身ベルトは、中央の風車が赤く光りながら高速回転する程度のものだったが、現在の変身ベルトは複数あり、それぞれの動作は複雑かつ高度。効果音付の音声まで出る。新旧の変身ベルトには電卓とスマホくらいの差がある。

進化した分、価格は上昇している。『仮面ライダー』の変身ベルトは1500円だったが、DX飛電ゼロワンドライバーは6980円(税抜)だ。それにセットできるプログライズキーは基本的に1つ1500円(同)で、これもベルトと同じく複数ある。変身ベルトとプログライズキーの組み合わせによって、動作は違ってくる。子供たちはいくつも欲しがるのではないか。少子化でも売上高が伸びるのは不思議な話ではない。

ライダーグッズの売上高の上昇は、ランドセルの市場規模が拡大している現象と似ている。ニッセイ基礎研究所が2018年に発表したリポートによると、ランドセルの市場規模は2008年には推計405億円だったが、2018年には同546億円になった。子供が減っているのに10年で3割も拡大した。

理由は購入するランドセルが高級化し、価格が上がっているからだ。2019年4月入学生の購入金額平均は5万2300円(一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会調べ)で、10年間で1万7700円も上昇した。背景には、数少ない子供に良い品や欲しい物を買い与えたいという親や祖父母の思いがある。それはライダーのグッズに関しても同じなのだろう。

葛藤があるからこそ

もっとも、ライダーそのものに魅力がなくなってしまったら、グッズは売れないはずだ。なぜ、ライダー人気が昭和期から落ちないのかというと、ありきたりな答えになってしまうが、ライダーたちの強固な正義感に対し、いつの時代の子供たちも本能的に引き寄せられるのだろう。また、いずれのライダーたちも風紀委員的な存在ではなく、人間臭い。これにも子供たちは心ひかれるのではないか。

(c)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

例えば『仮面ライダー』の本郷猛はフィジカル面もメンタル面も滅法強かったのに、改造人間にさせられたことを苦悩し続けた。哀愁を漂わせていた。『仮面ライダーゼロワン』の飛電或人は若くして会社社長だが、以前は売れないお笑い芸人で、ステージに立っていた遊園地をクビになっている。人生の悲哀を味わった。

一貫して制作を担当している東映の力も忘れてはならない。『相棒シリーズ』(テレ朝)や『科捜研の女シリーズ』(同)などを作っているのも同社。その制作力の高さは際立っている。

公開中の最新版映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』もヒットしている。子供たちのライダーへの熱い支持とそのビジネスの活況はまだ続くのだろう。