久しぶりに再会した友人や、仕事で出会った人たちに今のキャリアを話すと「順調なキャリアだね」と好意的な意見を寄せられます。

 しかし私はどちらかというと波乱万丈タイプで、あまり恵まれた経歴ではありません。小学生の頃から父の仕事の都合で何度も転校を繰り返し、受験では高校も大学も第一志望校には受からず。大学3年になるのとほぼ同時に意識高く始めた就職活動は、当時売り手市場だったにもかかわらず難航。ようやく大学4年時の秋に内定を得て入社できた会社は、新卒1年目で破産により倒産しています。

 今でこそ自分のやりたい仕事に限りなく近いことができていますが、こうして客観的に書き出すと、学業や仕事に関してはあまり順風満帆ではないことが分かるかと思います。もちろん、私以上に苦労している人はたくさんいると思いますが、少なくともストレートに志望校に合格したり、初めからやりたい仕事に就けたわけではありません。

 こんなに波乱万丈なキャリアなのに、なぜ周囲からは「順調なキャリア」だと思われるのかを自分なりに考えてみました。

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全ての経験を意味のあるものにする

 

 働いていると、自分にはどうしようもできないことや自分の意思とは反する出来事が次々と起こります。

 私の場合、1社目の会社では店舗の売上げを管理する営業職と聞いて入社したのに人員不足も相まって、販売員兼営業として配属されました。周りの同期が全員、予算管理や販売員とのコミュニケーションの難しさなどに悩む中、当時の私は「なぜ私は営業でなく販売員への配属で、売上げが取れないことに悩んでいるんだろう……」と悩んでいました。

 仕事をする上で、本人の向き不向きは大きいと思っています。私は自分が販売には向いていないという自覚がありました。渦中にいる時は「今の仕事は明らかに自分には向いていない」と思い、毎日職場に行く足が重く、休みたかったことも何度もありました。

 でも苦手な販売の仕事をやったことで、ものを売ることの大変さや数字への意識について身を持って体感しました。そして、販売員経験があったことは、後々のキャリアで雑誌やイベント企画を考える上でも役に立ちました。

「自分のキャリアを活かせる仕事に就けるなんて、偶然で特殊な例だろう」と思うでしょう。しかし、自分がどれだけ『今の仕事は向いていない』と思っても、その仕事で学んだことや得たことを他の仕事に応用できなければ、今の仕事を続ける以外の選択肢は限りなく低くなります。

 入社してみたら、会社の事情で希望していた職種には配属されなかったなんてことはよくあります。仕事内容は理想通りでも思ったより残業がある職場だった、話に聞いていたよりも個人プレイの職場だったなど、自分の理想通りにキャリアを重ねて行くことはとても難しいです。

 大切なのは自分の好ましい理想と今いる現実のギャップを認識し、今の自分がどうしたら理想に近づけるのかを考えていくことなのかなと感じています。

自分の知っている世界を増やす

 

 物事には、良い面と悪い面があります。私は自分にとって都合のいい性格なので、ピンチに陥った時でもなるべく物事の良い面を見つけるように心掛けてきました。

 何度も転校を繰り返したため昔からの付き合いの友人は少ないですが、初対面の人と会うことは今でも苦ではありません。所属部署の廃止や企業倒産を社会人1年目で経験した時は文字通り絶望して苦い経験となりましたが、会社や仕事はいつなくなるか分からないのだからできるだけ自分の好きなことや得意なことをやろうと思うようになりました。 

 今となってみれば、困難なことが起きている時はいつも人生の転機でした。順風満帆に同じ会社でキャリアを重ねている友人をうらやましく思ったこともありましたが、今のキャリアは自分にできる最良の行動を重ねた結果だと思っています。もし最初に入った企業が倒産していなければ、今でも自分に不向きな仕事を続けていて、働くことの楽しさを知らなかったと思います。

 また、予想外の仕事に出会った時、私は「自分の知らない世界を知るチャンス」と捉えていました。これは仕事に限ったことではありませんが、引き出しの多い人間は他人と打ち解けるのも早く、毎日を楽しむことが上手です。

 もともと私自身も冒険はせず、気に入ったものを長く続ける守りのタイプなので、自分の世界を広げて新しい趣味を増やすような感覚で予想外の仕事に取り組むようにしました。すると思わぬところで取引先との共通の話題が生まれて会話が盛り上がったり、他部署とのコミュニケーションがスムーズに運ぶようになったのです。

 自分に合う仕事を見つけて、キャリアを順調に重ねられる環境にいるのなら、同じ会社で目の前の仕事に打ち込んでいくことが一番良いと思います。転職や起業はリスクも伴いますし、絶対の正解ではありません。

 もし今、仕事内容や配属に不満があったり、会社が合っていないと感じても、自分の軸さえ持っていれば大丈夫だと私は思っています。自分がキャリアの舵取りをすると決めれば、少しくらい望んでいたキャリアから外れても後からいくらでも挽回できます。むしろ、その寄り道こそが本人の持ち味や強みとなることも往々にしてあるのですから。

 外的要因に多く振り回されてきた私がもし「順調なキャリア」に見えるのだとしたら、それは与えられた環境の中から自分の理想に少しでも近づこうと、もがいてきたからだと思っています。

 自分の姿勢や考え方次第で、仕事から学べる能力は変わってきます。逆境を幾度も経験して自分なりに乗り越えてきた一個人の立場から、誰もが自分の満足いくキャリアを築けるようになることを願っています。