消費増税の影響は、同時に始まった軽減税率とキャッシュレスによるポイント還元事業によって複雑なものとなった。特に後者のポイント還元は補助対象の線引きなどへの批判も多く、実際には販促、価格面での混乱を起こしている。有力リージョナルチェーン、アクシアル リテイリングの原 和彦社長に増税後の状況と新たな2020年に向けた方針を聞いた(本インタビューは1月15日発売の『食品商業』2月号掲載のインタビューのダイジェスト版です)。

――消費増税に伴うキャッシュレスによるポイント還元の影響はあるか。

原:ある。特にポイント還元の恩恵が受けられない大手企業が、何とかしなければいけないということで、ポイントの乱発や価格の引き下げを仕掛けた。

 皆、何とかお客さまを取られないように相当無理している。おそらく荒利益の減少、経費の販促費の上昇が後になって相当響いてくる。

 そうすると当然、利益も減るわけで、税収も減る。増税をしておきながら、ポイントでばらまいておいて、結局税収が減ってしまう。さらにデフレが加速しているということで、本当にこのキャッシュレスの5%還元というのは、ひどい策であったということが多分実証されるだろう。

 アクシアル リテイリングとしては、フレッセイはポイントで対応したが、原信ナルスはアプリを新たに作って、そこにクーポンを付けたりした。価格も下げた。原信ナルスの10月の(既存売上高前年比)数値は102%ぐらいだった。

 ただ、私たちは、価格やポイントという販促よりも、やはりお客さまが店に来られる目的、スーパーマーケットの本質を考えたら、より良い商品をより良いサービスの下でお求めになりたいのであろうと。そうであれば、より良い商品をもう一回ご提供し直そうということで、いろいろ商品を見直した。

 中でも10月は、例えば水産では「極醸塩銀鮭」というものすごくおいしい商品ができたので、1カ月間で1億円売ろうという目標を立てた。今まで1カ月間で8000万円ぐらいの売上げの単品だったが、1億円を目標に掲げて、結果として1億4000万円売った。

 他にもいろいろ商品を見直して、リニューアルや新発売をし、とにかく商品とサービスに磨きをかけていこうということで、ずっと春から準備してきた。

 そういう意味では、増税で大変だったが、もう一回われわれの本質とは何かという足元を見直すきっかけにはなった。

――ポイント合戦や価格競争が激化する中、M&A(合併・買収)など再編の動きも起こってきそうだ。

原:具体的なものはないが、多分、これからいろいろな話が出てくるのではないか。よりそういう環境に向かってきつつあるのではないかと思う。地場企業の淘汰が起こっている他、大企業の撤退の動きもある。いろいろ変化が起き始めている。

――2020年度の方針は。

原:私が社長になった(08年)直後に長期計画を立てた。それから10年ぐらいたち、その見直しをしようということで取り組んでいる。

 ちょうど令和という新しい時代であったり、2020年という何となく節目の感のある年なのでビジョンを新しくしようと考えた。

 まだネーミングは決まっていないのだが、取り組みの方向性としては、「品質経営」「環境経営」「健康経営」「技術革新への対応」、そして「人づくり」という5本柱を長期ビジョンの柱として掲げていこうと思っている。20年度から新しいビジョンにしていく予定だ。

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連携を通じ、グループとしてより良いものをつくる

――これまでのビジョンと変わる部分はどの辺りか。

原:今までのビジョンは「アドバンスト・リージョナルチェーン」という冠だった。これをつくった09年にはまだ、新潟県以外には2店舗しか出ていなかった。そのとき、おそらくこの先、新潟県以外にも出店が進むだろう。そうしたときに長岡市の本部から目の行き届きにくいエリアにも出店しなければいけないということが想定された。

 それで、その目の行き届きにくいお店であっても、目の行き届きやすい長岡のエリアと同じように質の良いサービスや商品をご提供できるような態勢づくりをしなければいけないということで、アドバンスト・リージョナルチェーンという長期計画を立てた。

 その後、フレッセイと統合したりして、一定の広域のリージョナルチェーンになれたと思うが、これからはおそらく、原信、ナルス、フレッセイといった個々の事業会社がそれぞれの分野、あるいはそれぞれの地域で確固たるお店をつくっていくことが求められる。

 その際に、まず自律しながらお店をつくっていくということと、併せて協働して、一緒になってグループとしてより良いものにつくり上げていく。それは事業会社間でもそうであると共に店舗間でもそう。

 個店個店が自律しながらそれぞれのお店にお越しになるお客さまにより良い商品やサービスをご提供する。それと共に店舗間が連携してより良い商品やサービスをご提供する。

 さらに言うと、個人ベースでも、個々が自律しながら自らそれぞれの担当分野でより技術を磨いたり、レベルを上げていくと共に個人間でも連携していくことで、より良いグループにしていく。

 その「連携」もより深めていく必要性があるかなと、そういう段階に今、われわれは来ていると思っている。

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業界のステータスをもっと上げる

――「連携」という意味では、業界全体を視野に入れた活動にも積極的に関与している。スーパーマーケット・トレードショー2019内で開催された「スーパーマーケットにおける品質改善事例発表」(発表大会)が大好評だった。運営を担当した品質改善プロジェクトのリーダーを務めているが、そもそも一連の取り組みが始まった経緯は。

原:もともとは、一般社団法人全国スーパーマーケット協会の千野和利副会長が協会の活動として立ち上げた「生産性向上検討会」に端を発する。そこに3つのプロジェクトがあり、「品質改善プロジェクト」はその1つ。2年ぐらい前に千野副会長から話があり、プロジェクト活動が始まった。

 発起人のような形で、9社がプロジェクトメンバーとして活動している。活動は、大きくは発表大会の運営、改善活動の普及のためのセミナーの開催だ。

―――やはり、品質改善というテーマへの関心度が高い。

原:サービスレベルを上げていくのも相当難しい時代になってきたと感じている。そういう中で地味な活動ではあるが、1つ1つの活動自体のレベルを徐々にではあるが、上げていくのが重要であると思う。

 今までの経験と勘と度胸だけではなかなかこれからの成長が難しい時代になってきたと思う。

ーー今回の取り組みに当たっては、アクシアル リテイリングが取り組むTQM(Total Quality Management)が大きな要素となっている。ともすれば、自社の差別化要素とも思えるが、それを業界全体に広げられるということは、やはり業界としての危機感がある。

原:やはり、業界そのものの地位向上、ステータスをもっと上げていかなければいけないと思っている。今、求人難がどの産業でも起こっているが、大卒の求人倍率でも小売業は他の業界よりもかなり高く、2桁になっているようだ。いかにわれわれの業界が残念ながら不人気であるかということがいえる指標の1つであると思う。

 そこにはやはり業界の体質も大いにあると考えている。生産性も他の産業と比べて高くないし、福利厚生の面でも、給与水準も他産業から見ると見劣りする。結果として、残念ながら今のような数字になっている。

 もっと全体を改善していくことによって、業界全体により以上に優秀な人が集まって、それぞれの企業がより発展していく礎になればと思っている。

 確かに、TQMを他社と共有せずにわれわれだけ成長していけばよいではないかという発想もあるが、それだと結局、限界がある。業界そのものに目を向けてもらえるような下地を作らなければいけないと思っている。

――19年の第1回発表大会には大きな反響があった。

原:9社、10サークルが発表したが、約400人の方が聞きに来られた。立ち見が出るような状況で、非常に反響が大きかったと感じている。皆さん、やはり関心がおありになる。「何とかしたい」という思いはおそらく共通だと思う。

――参加した企業の声は。

原:発表された企業の中からは社員のモチベーションが上がったという声が多く出た。また、発表をご覧になられた方々も、合理的に改善活動が進められているのをご覧になられて、「こういう活動が必要だな」ということを実感された企業が多かったようだ。

――見に来られる人の中には初めて知る人もいると思う。そういう中で広がりが期待できる。

原:どうしても、人に依存しがちな業界で、すごいアイデアマンとか、声の大きい人、あるいはとても行動力のある人などが、引っ張って企業が大きくなってきた部分があると思う。

 もちろん、そういう人も大事だとは思うが、やはり企業全体の体質を上げていくのに、パートナーさんをはじめとした多くの人の知恵、衆知を集めていくことはすごく重要だと思う。

 皆さん、危機感は持っていらっしゃると思う。プロジェクトを通じて、1つの手法ではあるが、「社内の改善活動はこういうふうに進めていけばよい」とイメージしていただけると思っている。ぜひ、積極的に参加しようという企業が1社でも増えればと思っている。

第2回 スーパーマーケットにおける品質改善 成果発表大会

【聴講無料】

日時/2020年2月13日(木)13〜16時30分(入れ替え制、途中休憩あり)

会場/幕張メッセ 国際会議場 国際会議室(第1回と異なり、セミナーステージではないので要注意)