事故時の車内イメージ図

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 遠征先のマレーシアで交通事故に遭い、全身打撲などのけがを負ったバドミントン世界王者の桃田賢斗(25)=NTT東日本=が、15日に帰国することが14日、日本バドミントン協会から発表された。現地で治療を担当する医師の見立てでは、1カ月ほどで練習に戻れる見通し。同協会は、3月中旬の全英オープンで実戦復帰を目指すプランを明かした。

 日本中に衝撃が走った、桃田らが巻き込まれた交通死傷事故。現地のスター紙によると、顔面3カ所の裂傷と全身打撲と診断された東京五輪金メダル候補は事故後、病院に駆け付けた日本代表の朴柱奉ヘッドコーチ(55)に「まだバドミントンはできますか」と尋ねた。同コーチは「寝て回復すれば大丈夫だ」と伝えたという。

 一夜明けたこの日午後2時から日本協会の銭谷欽治専務理事(66)が東京都内で会見。涙を浮かべ、言葉を詰まらせる場面もあった。

 「亡くなったドライバーのご冥福をお祈りします。桃田君をはじめ(他の人の)命に別条がなかったことが、正直に奇跡だと思っています。東京五輪も大切ですけど…」

 事故は13日午前5時ごろ発生。桃田と専属トレーナーの森本哲史氏、日本ユニシスの平山優監督の日本人3人、世界連盟の英国人技術スタッフを乗せたワゴン車が高速道路を移動中、大型トラックに追突した。ワゴン車の24歳の運転手が死亡し、運転手の真後ろに座っていた桃田ら4人も負傷した。この日、現地で医師の診断を受けた桃田ら日本人3人は15日に帰国することが決まった。

 治療を担当する医師は共同通信の取材に対し、桃田は鼻の骨に細いひびが入る全治6週間のけがを負ったが「1カ月ほどで練習に戻れ、今後の競技に影響はないだろう」との見解を示した。

 前日13日にはマハティール首相(94)の妻シティ・ハスマさん(93)、この日もワンアジザ副首相(67)が見舞いに訪れた。バドミントン人気が高い同国では事故が各紙で大きく報じられ、「まだプレーできますか?」(Can I still play?)のコメントも1面に掲載された。

 銭谷氏は桃田にLINE(ライン)で見舞いの言葉を送り、「ありがとうございます」などと返信が届いた。同氏は「顔に裂傷を負い、ボクサーの試合後のような腫れあがった状態」などと説明。帰国後に磁気共鳴画像(MRI)などで詳細に再検査を行う。事故による精神的ショックも想定され、日本協会は精神面でのサポートにも尽力する構えだ。

 桃田は3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)での実戦復帰を目標にする見通し。当初出場予定だった2月中旬のアジア団体選手権の出場は見送り、当面は治療と静養に専念する。

 東京五輪のバドミントン競技は開会式翌日の7月25日から予選が始まり、8月3日まで続く。銭谷氏は「彼は非常に賢く前向き。東京五輪にかける意気込みは並々ならぬものがある。無理せず焦らず、力を発揮してくれたらいい」。思わぬ形で心身に傷を負った日本のエースの早期復帰を、誰もが願っている。

朴柱奉・バドミントン日本代表ヘッドコーチ「あまりにも大きな不慮の事故が起きてしまった。ドライバーの方が亡くなったことは非常に残念だが、大きな事故に巻き込まれながら今回の負傷で済んだことは不幸中の幸いだった」