中盤でピンチを未然につぶし続けた齊藤未月

 敗北と早期敗退を告げる笛が鳴ったあと、周囲の仲間たちとは異なり、齊藤未月は一度も下を向かなかった。やるせなさ、怒り、驚き――。彼の表情には、そうした感情が映し出されているようだった。

「さっきも(フラッシュインタビューで)言いましたけど、どれだけボールを奪っても、ゴールを奪えなければ勝てないスポーツなので。負けじゃないですか、普通に。相手も強かったですし」

 試合後のミックスゾーンで、二日前に21歳になったばかりのセントラルMFはそう切り出した。やり場のない激情をなんとか押しとどめながら、胸のうちを正直に。

「最後(に決勝点を奪われたシーン)も、僕がつぶせたはずでした。あの時間帯、うちにチャンスが増えてきて。前の試合と一緒(の展開)ですけど、選手が入れ替わったこともあって、その教訓を生かせなかったと思います」

 まさかの2連敗──。アジアをリードすべき存在の日本が、AFC U-23選手権から最初に姿を消すことになった。東京五輪への予選を兼ねている大会ながら、日本は開催国として出場権を得ている。ただしそれがなければ、本戦行きを逃していたことになる。

 いや、状況が異なれば、日本はもっとやったはず──そんな意見もあるかもしれないが、現在のこのチームを見るかぎり、楽観的に捉えられるところは少ない。

 およそ半年後に本番を控えているチームなのに、明確な形がほとんど見えない。あるのは、機能性に乏しい3−4−2−1という並びだけだ。プランも、青写真も、メッセージも、何も感じられなかった。少なくとも、全体からは。

 初戦のサウジアラビア戦では、中盤から強い縦パスを入れて、2列目の二人が受けて振り向いたところから、攻撃が加速していった。ただその反面、スキルフルな司令塔タイプの二人の中盤(田中碧と田中駿汰)は、相手にボールが渡った時の守備に不安をのぞかせた。実際に何度も敵の突破を許し、鋭い逆襲を受けたシーンは多かった。

 この日のシリア戦では、中央の二人を齊藤と松本泰志に変更。プレーメーカーの後者と組むことで、守備に長じる前者の特長ははっきりと表われていた。この代表で久しぶりの先発だったこともあり、序盤はやや硬かった。だが徐々に慣れていくと、166センチの小柄な体躯にエネルギーを漲らせ、相手を激しく追い回し、逆襲の芽をつぶしていく。

 9分にPKで先制されたあと、日本が主導権を握り続けられたのは、相手ボールになったときに背番号6が何度もそれを回収していたことが大きい。データによると、ボール奪取の回数は両チームのフィールドプレーヤーを通じて、ダントツの17だ。

 時間の経過とともに、そうした責任感のあるプレーによって周囲の信頼を得ていくと、ボールを預けられる回数も増えていった。その証拠に、タッチ数もチームトップ。マイボールはシンプルに展開したり、思い切り良いミドルを打ったり、裏へのフィードを選択したり。

 ただしそうした積極的なプレーは、このチームでは「浮いたプレー」に見られがちだという。試合後に食野亮太郎も話していたように、この代表は「きれいにやろうとしすぎる」ところがあるのだ。

 おそらくコンビネーションや崩しのアイデアは、ほぼ選手の創造力に任されているが(時に縦パスからワンタッチの連係などは見られるが、それはタイや他のチームにもあるベーシックなものだ)、大枠では”ジャパンズウェイ”という、ひどく曖昧なポゼッション志向があるだけに見える。

「たとえば誰かがシンプルに裏に出して、それがつながらなかったとしても、その選択を尊重して次のプレーに切り替えるべきなのに、(出した選手が)浮いてしまうような雰囲気があって」と齊藤は続ける。「もちろん、オレが(上田)綺世に出して、ミスをしているのがいけないんですけど」と彼の言葉は熱を帯びはじめ、自称が「僕」から「オレ」に変わっていった。

「(何度か放ったミドルについて)あれを決めていかないと、代表には生き残れないとすごく感じました。もう守備だけじゃダメですよね」

 齊藤の悔しさは痛いほど伝わってきた。けれどニュートラルに言って、この日の日本では、もっとも健闘していた選手のひとりだったと思う。2枚の中盤を敷くなら、確実にひとりは汚れ仕事を厭わない選手がいい。すべてを完璧にこなせる選手などいない。どこかでトレードオフする必要があり、足りないものを補う合う関係性を構築すべきだ。

「ピッチのなかで解決できることもあるけど、このチームはコミュニケーションが少ないと思います。もちろん自分も言わないといけないのに、今ここでしか話せていない。それは自分の甘さであり、弱さ。(特長のリーダーシップも)出せなかった。オレはまだまだです」

 技術や攻撃面には改善の余地を大きく残すが、心身のタフネスや仕事量では誰にも負けていない。そんな選手は「きれいすぎるチーム」に必要な戦力だと考えるが、はたして”ジャパンズウェイ”の物差しではどう評価されるのだろうか。