サウジ戦でゴールを決めた食野。現在スコットランドのハーツでプレーしている

「プレッシャーを感じていたので、決められてよかった」

 AFC U-23選手権の初戦となったサウジアラビア戦で、この代表で初得点を奪った食野亮太郎はゴールを決めたあとに、熱い雄叫びを上げた。その時の気持ちを振り返って、21歳のアタッカーはそんな風に話した。

 今大会のメンバーで唯一の海外組、そして背番号は10。彼にとって初の代表の国際大会でもある。自身にかかる期待や特別な舞台の空気を感じ、重圧となっていたのだろう。実際、この試合の序盤には、「ちょっとふわついた部分があって、タッチが乱れたり」したと打ち明ける。

 それでもこの半年間にスコットランドで武者修行を続けるなかで、「(試合の入り方が悪くても)そこから修正できるメンタルを身につけた」と食野は語る。

「ミスをしても恐れずに行くのが僕のスタイル。タッチが悪かろうが、ひっかかろうが、関係ない」

 鼻っ柱の強さは言葉や眼差しだけでなく、パフォーマンスにも表われていた。サウジアラビアの攻勢を受けた序盤を経て、日本がリズムを取り戻していったのは、2シャドーの食野と旗手怜央がタイミングよく下がり、相手陣内の好位置でうまくボールを引き出して前を向いたことが大きい。田中駿汰と田中碧のセントラルMFから、強い縦パスを受けてターンをすると、日本の攻撃が加速する。

「そのポジションどりは自分の特長。ペナ(ルティエリア)の左斜めで持ったら、自分の得意な角度なので、カットインしてシュートを打つことを心がけています」

 前半にはその言葉どおりのシュートを放ったものの、相手に阻まれた。けれど後半には先制を許したあとに、ほとんど同じ形から右足を振り抜くと、今度は相手に当たってコースが変わり、ボールはネットを揺らした。

「角度はなかったけど、とりあえず打ってみようと思ったら入った。やっぱりシュートは打ってみるもんやな、とあらためて感じました」

 2020年の記念すべき代表初ゴールは、激戦区のポジションを勝ち抜いていくうえで、指揮官へのアピールになったはずだ。この日、2シャドーの位置に入った食野と旗手のほかに、久保建英、堂安律、三好康児、安部裕葵ら、世代随一のテクニシャン達がしのぎを削る。ゴール後に感情を爆発させたのは、一時的にとはいえ、そうしたプレッシャーを跳ね除けたからではなかったか。

「うーん、でも勝利につながるゴールを決めないと意味がないんで。そこは評価とはあまり関係ないかな」と挑戦的な視線を維持したまま食野は続ける。88分には、守備陣のミスからサウジアラビアにPKを献上し、それを決められて日本は1−2と敗れた。食野自身がそのプレーに関与していたわけではないが、アタッカーとしての責任を感じているようだった。

「今日は(小川)航基くんとの関係があまりなかったので、そこを増やせるように修正していきたい」とマンチェスター・シティからハート・オブ・ミドロシアンに期限付きで所属しているアタッカーは、攻撃陣の課題を口にする。

「(その理由は)距離感ですかね。僕と(旗手)怜央くんが、ちょっと外に出すぎていたかな。ボールが入った時に、航基くんや(上田)綺世との距離が遠かったので、自分がワンタッチで当てて中に入っていけるようなポジショニングをしないと。組織が強みの日本なので、その距離感は必要」

 巧みにボールを引き出して、攻撃を活性化させたことについても、それだけでは満足しない。

「試合前の分析とは違って、相手は5バックだった。自分はその真ん中の3枚をちょっと嫌がってしまったこともあったので(下がるプレーが多かった)。それだけではなく、もっと前で動きをつけて、中に入っていかないと。降りるだけでなく、入っていかないと話にならない」

 タイで開催されているこの大会は、東京五輪の予選を兼ねているが、日本は開催国として出場権を手にしている。それでも、本番前の最後の重要な大会であることに変わりはない。敗北を知らせる終了の笛が鳴ったあと、選手たちはみな一様にうなだれていた。敗戦そのものの悔しさだけでなく、本大会のメンバー入りに向けたそれぞれの状況なども、感じるところがあったのだろう。

 エースナンバーを背負う食野は悔しさを滲ませながらも、強気な姿勢を示していた。そして、スコットランドでの成長の跡も。

 昨年11月17日のコロンビア戦では、シュートを枠に飛ばせなかったが、「スコットランドで練習して決められるようにします」と語っていた。そして今回、しっかりとそれを果たした。まだまだ満足はしない背番号10は、「もっともっと自分にハッパをかけてやっていきたい」とあらためて決意を誓った。