バレーボール女子日本代表の若きエースである、黒後愛と石川真佑。ふたりは高校バレーの名門・下北沢成徳高校出身で、現在は共にVリーグの東レアローズに所属している。

 Vリーグ(V.LEAGUE)はレギュラーラウンドが終わり、東レは最後の試合でスターカンファレンス2位に浮上。1月11日からのファイナルラウンドに進むことになった。まずはそこでリーグ優勝を目指すことになるが、黒後と石川には今夏の東京五輪での活躍にも期待がかかっている。そんなふたりに、ファイナルラウンドへの意気込みや、東京五輪への意識などを聞いた。


日本代表での活躍も期待される、東レの黒後(左)と石川(右)

――昨年のワールドカップ、黒後選手は大会前に右足を捻挫した影響で出場機会が限られましたが、どのような気持ちでチームメイトのプレーを見ていましたか?

黒後 昨年の目標が、ワールドカップに出てチームに貢献することだったので、すごく悔しかったです。でも、戦っているメンバーの前でそういった気持ちを出してはいけないと思っていましたし、復帰した時に100パーセントの自分が出せるよう準備をしていました。真佑がすごく活躍していたことも、「早く一緒にやりたい」とモチベーションを高めてくれましたね。

――石川選手はアンダーカテゴリーの代表で活躍し、ワールドカップ開幕の直前でシニアに初召集されましたが、その時の心境は?

石川(アンダーカテゴリーで)試合をする時は、「少しでも(シニアのレベルに)近づけるように」とは思っていましたが、先のことは意識していませんでした。そんななかで招集され、国際舞台で活躍されてきた先輩方のなかに入り、最初は不安や緊張もありました。それでも、(高校時代の先輩である)愛さんがいたこともあって徐々に楽な気持ちになれて、大会が始まる頃には「やってやろう!」という気持ちになっていました。

――ちなみに、石川選手が高校1年生の時に黒後選手は3年生でしたが、どんな存在でしたか?

石川 ……(笑)。

黒後 え、怖くなかったよね?(笑)

石川 厳しいことはありましたけど、それはチームのためにそうしていたと思っていますし、バレーに集中していたので怖いということではなかったです。

黒後 気を遣ってくれてありがとう(笑)。

――逆に、黒後選手から見た高校時代の石川選手の印象は?

黒後 最初はすごくシャイなのかな、と思いました。真佑が高校に入る前に寮の案内をしたんですけど、私がいろいろ説明している時に正座をしていて。「足を崩していいよ」と言ったら、今度はずっと体育座りをするんですよ(笑)。でも、その頃からしっかり自分を持っていましたし、こちらから話しかけた時には自分の考えを言葉にするのもすごく上手でした。真佑本人は「人見知りです」と言うんですけど、そういったコミュニケーション力があるからこそ、シニアでも活躍ができたんだと思います。


インタビュー中は笑顔が絶えなかった

――石川選手はシニアデビューの大会だったにもかかわらず、厳しい場面で起用されることが多かったですね。

石川 チームが苦しいタイミングで入った時に意識していたのは、「流れをよくしたい。勢いをつけたい」ということです。自分のことで精いっぱいだったこともあって、とにかくチームに少しでも貢献することだけを考えていました。

――おふたりは日本代表、東レアローズでもチームメイトとして戦っていますが、同じスパイカーとしての互いの印象は?

黒後 パワーもありますけど、相手のブロックに当てて出すスパイクだったり、冷静にブロックを見て得点につなげられる技術もあるスパイカーだと思っています。

石川 私と違って高さがあり(石川は173cm、黒後は180cm)、スパイクが力強いです。そして、苦しい時に1点を決めてくれるのですごく頼りになります。私もそういった場面で決められる選手になりたいです。

――石川選手は、海外のトップ選手と対戦するのがほぼ初めてだったと思いますが、そのワールドカップで感じた収穫と課題を教えてください。

石川 攻撃に関しては思いどおりにいくことも多かったんですが、試合を重ねていくうちに相手からサーブで狙われることが増えました。そこで崩れてしまって、周囲の選手にカバーしてもらった場面も多かったです。海外のトップ選手のサーブは速く、高さもあるので、それに対応できるようにならないといけません。後衛に下がった時にきっちりレシーブができないとチームが苦しくなってしまうので、守備面を向上させていきたいと思っています。

――サーブで狙われることは、黒後選手も経験してきたと思いますが、何かアドバイスはありますか?

黒後 アドバイスと言えるかわからないんですけど……ずばり、「気持ち」です(笑)。どれだけサーブで狙われても、「全部返してやる」という気持ちを持つことが大事だと思います。レシーブを失敗しても、すぐに次がくるので切り替えないといけない。私の場合は、ミスしたあとこそ「来い!」と思っています。

――Vリーグのシーズンを戦うなかで、そういったバレーの話をする機会も増えたんじゃないでしょうか。

石川 バレーの話に限ったことではないんですけど、一緒に練習や試合をする時間が増えて、自然と高校の時よりも会話することは多くなりましたね。

黒後 話をするのが普通すぎて、内容をパッと思い出せないくらいだよね。あ、真佑のサーブの話をしたことは覚えています。「真佑専門のサーブコーチになろうかな」って。

――その”コーチ”として、石川選手にどんな助言をするんですか?

黒後(Vリーグの)今季の前半はケガで試合に出られなかったので、その時にサーブを見て気づいたことを伝えていました。たとえば、後ろから見て「トスがこっちに流れてるよ」といった感じですね。

――黒後選手はレギュラーシーズンの途中に復帰しましたが、もうケガの心配はありませんか?

黒後 ケガはまったく問題ないんですが、試合勘やプレーの質に関しては全然という感じです。早くプレーも全開に戻したいです。

――チームはファイナルラウンド進出を決めましたが、レギュラーラウンドでは調子に波があるようにも思えたのですが。

黒後 本当にそのとおりで、いいときはいいんですけど、苦しくなった時に踏みとどまれない。連続失点が多いので、それを1点でも2点でも減らさないといけません。選手だけでなくスタッフを含めて全員でミーティングをするなどして、ファイナルラウンドに向けてそれを形にできるようになってきたと思います。

石川 私も愛さんと同じような印象で、苦しい時に自分たちのミスが出たりして、盛り返す雰囲気を作れていなかったなと思います。みんながそれを変えようとしたんですが、私も含めてうまくいかない部分がありました。今はいい方向に向かっていると感じますが、誰かに任せるんじゃなく、チーム全員で意識し続けなければいけないと思います。

――ファイナルラウンドの目標と、それに向けての個人の課題はありますか?

黒後 もちろん目標は優勝ですが、目の前の試合を大事に戦って、その先に優勝があればいいと思っています。個人的には、守備を安定させることが大前提。攻撃面では、今シーズンは試合が進むにつれて打数が減ってしまう場面が多いので、積極的にトスを呼ぶなど、攻撃参加への意識を高くしたいです。

石川 私も先を見ずに1試合ずつ戦っていきたいです。個人の課題としては、苦しい時に上がってきたトスを決められる強さが必要ですね。また、得点が決められなくて苦しくなった時に、全部のプレーがだめにならないようにしたい。スパイクが決まらなくなっても、レシーブやサーブなど、どんな形でもいいからチームに貢献したいです。

――少し先になりますが、東京五輪への意気込みも聞かせてください。

黒後 東京オリンピックは、正直、自分が出られるというイメージがまったくありませんでした。高校生の時も「全日本に入りたい」という夢はあったんですけど、今の自分の年齢でメンバーに入れると思っていませんでしたから。

 東京でオリンピックがあるというのは運命的なことだと思いますし、誰でも経験できることではありません。そのチャンスがあるからには、絶対に五輪の舞台でプレーしたいです。それを達成するために何が必要なのかを自身に問い続けて、毎日を大事に過ごしていきたいと思います。

石川 もちろん東京五輪を戦うメンバーに入れたらうれしいです。でも、そのためにはもっと成長しないといけません。ワールドカップでいい経験をさせてもらいましたが、今の自分には満足していないですし、リーグが終わってからの過ごし方も大切になると思います。時間を無駄にせず、五輪出場に少しでも近づけるように頑張ります。