by Inzmam Khan

自殺の原因にはさまざまな理由が挙げられますが、経済的な問題は自殺の主要な原因であると考えられています。アメリカのエモリー大学の研究チームによる調査で、「最低賃金が1ドル(約110円)上昇すると人々の自殺率が3.5〜6%減少する」ことがわかりました。

Effects of increased minimum wages by unemployment rate on suicide in the USA | Journal of Epidemiology & Community Health

https://jech.bmj.com/content/early/2020/01/03/jech-2019-212981

US$1 dollar increase in minimum wage linked to 3.5-6% fall in suicide rate | EurekAlert! Science News

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/b-1ud010320.php

expert reaction to study looking at minimum wage and suicide risk in the United States | Science Media Centre

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-minimum-wage-and-suicide-risk-in-the-united-states/

2017年のアメリカにおける自殺者数は4万7000人ほどとみられており、中でも18歳〜24歳の若者世代では、死因の20%近くが自殺だとのこと。アメリカ人の自殺率は年々上昇を続けており、1999年〜2017年にかけて全体の約半分の州で自殺率が30%以上増加したそうです。

自殺の主要な原因として経済的な問題があることは知られてきましたが、最低賃金政策などの経済的介入が自殺率に及ぼす影響については、これまであまり研究されてきませんでした。そこでエモリー大学の研究チームは1990年〜2015年の期間における、アメリカ全州の最低賃金や、18歳〜64歳の失業率および自殺率などの月次データを分析しました。

研究チームによると、1990年〜2015年の研究期間中に、アメリカ全体で478件もの最低賃金政策の変更があったそうです。アメリカでは連邦最低賃金と州ごとの最低賃金がそれぞれ定められており、いずれか高い方を実際の最低賃金にすることとなっています。1990年の時点で連邦最低賃金は3.8ドル(当時のレートで約600円)でしたが、2015年には7.25ドル(約800円)に上昇。また、2015年の時点ではワシントンD.C.と29の州において、州が定める最低賃金が連邦最低賃金を上回っているとのこと。

by nattanan23

1990年〜2015年の期間において、18歳〜64歳の高卒あるいはそれ以下の学歴を持つ人の自殺者数は39万9206人であり、大学の学位あるいはそれ以上の学歴を持つ人の自殺者数は14万176人でした。連邦最低賃金と州ごとの最低賃金の差額と、自殺率・失業率の関連を分析した結果、最低賃金が1ドル上昇するごとに、高卒やそれ以下の学歴を持つ人の自殺率が3.5〜6%減少するという関係が見いだされました。なお、最低賃金の変化は大学の学部卒やそれ以上の学歴を持つ人の自殺率には影響しなかったとのこと。

また、最低賃金と自殺率の関係は、州レベルの失業率による影響を受けていました。失業率が6.5%以上あった場合、最低賃金が高くなるにつれて自殺率が減少しましたが、失業率が低かった場合は、最低賃金と自殺率の関係は弱くなったそうです。

by lannyboy89

研究チームは分析によって求められた推定値に基づく計算により、失業率が高くなったリーマン・ショック後の2009年〜2015年における最低賃金が実際よりも1ドル高かった場合、高卒やそれ以下の学歴を持つ18歳〜64歳の年齢層の自殺者数を、合計で1万3800人減らすことができたと主張しています。さらに、最低賃金が2ドル(約220円)高かった場合、自殺者数は2万5900人減っていたとの計算になるとのこと。

また、研究期間全体の26年間で計算すると、最低賃金が1ドル高ければ自殺者数が2万7550人も減少し、2ドル高ければ5万7350人も減少していたと推定できるそうです。今回の研究はあくまでも観察結果に基づくものであり、最低賃金と自殺率の背後にあるメカニズムについては特定できていません。しかし、研究チームは失業率が高い場合、最低賃金を高くすることで自殺者数を減らすことが可能かもしれないと指摘しました。

by rebcenter-moscow

今回の研究を受けてカーディフ大学の名誉研究員であるDean Burnett氏は、財政状況が自殺の唯一の原因ではないと指摘しつつも、直接的な経済介入が自殺防止に有効であることを示唆する点で、今回の研究には意義があると述べました。