2020年最初のサッカー界のトピックは、南野拓実のリバプールでのデビューになるだろう。

 元旦の天皇杯決勝におけるヴィッセル神戸も、クラブ史上初のタイトル獲得という意味ではニュースバリューがあった。しかし、現在のヨーロッパ王者にしてクラブW杯覇者でもあるイングランドの名門クラブで、日本人選手が公式戦デビューを飾ったのだ。現地時間1月5日に行われたFAカップ3回戦は、彼だけでなく日本サッカー界にとっても大きな、そして価値あるトピックだったと言っていい。

 10代の選手も多いこの日のチーム編成で、南野は3トップ中央に配置された。最前線でどっしりと構えるのではなく、微妙に下がり気味の立ち位置で中盤にポジションを移すこともある。レギュラーメンバーに当てはめれば、ロベルト・フィルミーノに似た役割だ。

 背番号18を着けた日本人アタッカーは、後半途中の70分までプレーした。見せ場は前半に一度あったドリブルでの仕掛けと、同33分のヘディングシュートぐらいだった。そのヘッドにしても、薄く当ててコースを変える意図だったのか、実際には空振りのようになってしまった。

 南野の動きが悪かった、というわけではない。

 バックアップメンバーが多いこの日のスタメンで、スムーズなコンビネーションを求めるのは難しい。実戦で練り上げた連携というものが、そもそも成立していない組み合わせが多かったからだ。
 
 各選手が存在感を示したいとの思いを、強く抱いていることもプレーににじんでいた。その結果として、加入間もない南野は欲しいところでボールを受けられない、というストレスを抱えることとなった。

 それでも、エバートンとのマージーサイドダービーという簡単でない一戦で、持ち味の一部だけでも見せることができたのだ。客観的に判断しても、好意的に受け止めることができる。ホーム公式戦での不敗記録が途切れなかったことで、チームが雑音に振り回されることがなく、南野自身も落ち着いてチームに溶け込んでいけるだろう。

 現地からは「スタメン定着は難しい」との評価も聞こえてくるが、フィルミーノ、モハメド・サラー、サディオ・マネの3人が最前線に君臨するのだ。厳しい競争は当然である。

 一方で、現時点でのリバプールはケガ人を多く抱えている。2月からはチャンピオンズリーグも再開される。チームのクオリティを担保しうる戦力は必要で、そのために南野は迎え入れられた。

 指揮官ユルゲン・クロップが基本布陣とする4−3−3では、インサイドハーフでもプレーできるはずだ。エバートン戦ではタテへの推進力に加えて、守備でのハードワークもアピールしている。複数ポジションに対応できる柔軟性は、このクラブで競争していくうえでのアピールポイントになるだろう。

 アタッカーとしての本質に立ち返れば、ゴールやアシストを記録することは絶対条件だ。もっとも、目に見える結果を残すことは、リバプールでもザルツブルクでも変わらない。これまでと違うことを、求められるわけではないのだ。

 つまりは、「自分らしさ」を見失わないことが大切になる。シーズン途中の移籍は即戦力としての働きを求められるが、だからといって焦ることはない。サッカーの母国でも飛び切りのクラブに加入したプライドと誇りを、トレーニングから表現していけばいいと思うのだ。