東京オリンピックで輝け!
最注目のヒーロー&ヒロイン 
バレー 古賀紗理那 編

「今シーズンは得点にフォーカスして戦いたい」

 今季のVリーグ(V.LEAGUE)女子が開幕して間もない10月下旬、古賀紗理那は試合後の記者会見の席でそう話した。


VリーグのNECで復調を期す古賀

 所属するNECレッドロケッツでも、日本代表でも「ポイントゲッターとして戦うこと」が自身の役割であることは、古賀本人がいちばんよく知っている。エースとしての得点力に加え、サーブからのブレイク力もチームになくてはならない存在だ。

 古賀は中学生時代からオリンピック有望選手に選ばれ、高校時代にはユース代表に選出。アジアユース選手権の優勝に大きく貢献してMVPを獲得するなど、将来を嘱望され、期待され続けてきた選手である。「木村沙織2世」と呼ばれた時期もあったが、これまでは好不調の波に苦しんできた。

 2015年に初出場したワールドカップでは期待を上回る大活躍を見せた。ベストスコアラーランキング5位、ベストサーバー部門4位といった攻撃面だけでなく、ベストレシーバー部門でもトップを飾るなど攻守で存在感を示し、目標とする木村を彷彿とさせた。ところが、翌年のリオ五輪最終予選と、続くワールドグランプリで不調が続き、リオ五輪の代表から外れてしまう。当時の古賀は明るさがなくなり、取材でも言葉少なであったことを覚えている。

 しかし国内では、それを払拭するように2016−17シーズンのVリーグで奮起。NECを2年ぶりの優勝に導くと、古賀自身もMVPを獲得。2017年には”中田久美ジャパン”がスタートし、中田監督も「古賀はちょっと教えたら、すぐにできるようになる」とその器用さに目を細め、期待を寄せていた。

 その年は膝の不調のため、ワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャン)に出場できなかったものの、翌2018年の世界選手権では再び輝きを放った。5歳年上の石井優希、2歳年下の黒後愛とともにエースとしての自覚を感じさせるプレーを見せ、チームの勝利に貢献。ベストスコアラー5位、ベストレシーバー4位と個人成績も申し分なかった。

 今度こそ古賀が日本のエースになる。そうファンが期待するなかで迎えた昨年のワールドカップだったが、またも精彩を欠いてしまう。勢いのあるプレーは影を潜め、守備面でも突出した活躍がないまま大会を終えた。同じアウトサイドヒッターの黒後も故障で出番が少なく、急遽代表に呼ばれた19歳の石川真佑が強豪国との対戦で出場し、古賀が格下のチーム相手にスタメンで起用されるという逆転現象も起こった。

 中田監督も東京五輪でのメダル獲得を公言するなか、自分がこのままではいけない。冒頭の「得点にフォーカスしたい」という古賀の言葉は、それを自覚しての言葉だったのだろう。

 現在の女子バレーには、かつての木村沙織(185cm)のような大型で守備も任せられるアウトサイドヒッターが少ない。そのため、古賀や石井、黒後などサーブレシーブもできる180cm台のスパイカーは貴重な存在になる。古賀が、しっかりとした守備から得点を重ねる本来の姿を取り戻すことは、東京五輪での目標達成のために不可欠だ。

 古賀の思いとは裏腹に、Vリーグで思うようなプレーができない試合が続いた。今季から新しくなった使用球との相性がよかったのか、サーブに関してはブレイクにつながるシーンは多いものの、スパイクでの攻撃に関しては能力を存分に発揮できているとは言いがたい。

 ワールドカップの疲労もあって調子が上がらないのは古賀に限ったことではないが、NECは今季加入した大卒新人セッター・澤田由佳がスタメンで起用される場面が多く、古賀とコンビを合わせる時間が短かったことも影響しているだろう。金子隆行監督も、「オフェンスはアタッカーひとりで完成できるものではなく、サーブレシーブをする選手、トスを上げる選手との連係もある」と、チーム全体の成熟度を上げる必要があることを口にした。

 レギュラーラウンド終盤の、昨年12月22日に岡山で行なわれた日立リヴァーレ戦では光明も見えた。セットカウント3−0で勝利したその試合で、久しぶりに気持ちよさそうにスパイクを打つ古賀の姿があった。試合後のヒロインインタビューでは、「タフな試合になりましたが、しっかり勝ててチームとして成長できました。ここから勝負が始まると思うので、チーム一丸となって戦いたいと思います」と話し、笑顔がこぼれた。 今季のVリーグは、東京五輪に向けた代表強化の時間を作るためにスケジュールが短縮され、すでにレギュラーラウンドは終わり、1月11日からプレーオフの「ファイナル8」が始まる。そこで古賀が「ポイントゲッター」として躍動すれば、日本代表でもその得点力を発揮できるはずだ。古賀にとって初のオリンピックとなる東京五輪で得点源となり、チームをメダルに導いてくれることを大いに期待したい。