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どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)photo:Keisuke Maeda(前田恵介)

GLEクラスのライバルには何が相応か。意外と悩ましい問いである。

レクサスRXはどうか? スポーツ&ツーリング傾向が強すぎる気がする。ならばLXは? これはランクルの姉妹車でもあり、オフロード志向が強すぎるような。

エッジやラインを減らし面を強調。質実剛健なデザインが現代的ラグジュアリーを表現。

同門からGクラスは? オフロードに本気すぎて乗用車のイメージが希薄。ランクルとレクサスRXの間くらいが収まりがいいか……。

メルセデス・ベンツのSUVラインナップではGLSクラスに次ぐ上位設定となるモデルがGLEクラスである。

プラットフォームにはFR車用でも上位設定となるMHAを採用し、全車にフルタイム4WDを採用する。ハードウェア構成からも分かるようにハードクロカンでの常用を前提に開発されたSUVではないが、オンロード主体にレジャーなどでのクロカン走行にも対応。

そのカバーレンジを大きく取ったのが特徴だ。

トルク 5Lエンジン並み

外観は上級ワゴンにも似た落ち着きを感じさせるもので、5×2mに達する堂々とした体躯と合わせて正統派RVといった印象。この辺りが冒頭の云々なのだが、トレンドよりベンツ車らしさにこだわった結果と言えよう。

試乗モデルは日本に輸入されるGLEクラスではベーシック仕様となるGLE 300 d 4マティック。

メルセデス・ベンツGLE 300 d 4マティックの前席

ベーシックといってもパワートレインは5L級ガソリン・エンジン並みの最大トルクを誇る2L 4気筒ディーゼルに、上級クラスでは定番化しつつある9速ATを採用。2.3トンの車重をしても十分なスペックである。

上位グレードとは装備設定が異なるが、OP設定されたAMGラインとレザーエクスクルーシブパッケージの装備により内外装関連は上級グレードと同等にすることができる。

もっとも、両パッケージを装着すると、GLE 400 dとの価格差は約60万円でしかない。電子制御エアサスや駆動トルク可変分配型4WDの装備を考慮するならGLE 400 dを選ぶべきだろう。

なお、試乗モデルには撮影映えするAMGラインを装備している。

どんな感じ?

重量級のSUVの動力性能では滑らかな応答性が重要。動き出しのコントロールしやすさは普段使いでの扱い易さだけでなく、悪路走行時の踏破性にも関わってくる。

今回の試乗ではオフロード・ステージはなかったが、登坂発進や駐車場での取り回し等々の細かなアクセル操作を必要とする状況でも操りやすい。悪路での扱いも良さそうである。

後席はホイールベースの延長により、居住性が向上している。

車体サイズのわりに最小回転半径が小さいこともあって大型SUVに不慣れなドライバーでも戸惑うことはないだろう。

登降坂が連続する山間のワインディングロードに入っても印象は大きく変わらない。大トルクの余裕をそのままに細かなアクセルワークにもよくついてくる。長い登坂では1段低いギアを維持して変速頻度を少なくするなど、走行状況を的確に捉えた変速制御が素直で力強いエンジンを一層頼もしく感じさせる。車格を実感させる余裕とドライバビリティである。

動力性能はGLEクラスに十二分と言えるが、フットワークは微妙である。誤解なきよう付け加えるなら、出来が悪いという意味ではない。

GLE 400 dとGLE 450に採用された電子制御エアサスの出来が良すぎて、相対的にGLE 300 dが普及仕様のように思えてしまう。エアサス仕様に乗らなければそんな気分にもならなかったのだが……。

コーナリング/乗り心地

フットワークの基本はワインディング路や高速走行での安定性。高重心のSUVで車重2トン超級とすれば当然である。

神経質な挙動を徹底的に排除している。だからといって決してルーズな操縦性ではない。

新しいリア・コンビランプは、リフレクターを下部に移動。スリムなデザインで、ワイド感を引き立てる。

動き出しも収束も滑らかであり、前後の接地バランスが安定しているので細かな補正操舵もなしでコーナリングラインを維持しやすい。

コーナリング中の制動も躊躇なくできる。車体サイズや車重をあまり感じさせないハンドリングである。

乗り心地では沈み込みを抑えた硬さを意識させられる。車軸まわりの揺動感も強め。S字コーナーでの切り返しなどの挙動収束や悪路での路面当たりを配慮したサス設計が乗り心地に現れている。

高速走行での安定性、悪路での踏破性と乗り心地をうまく両立させたフットワークだが、エアサス仕様の“低速域ではしなやか” “高速域ではしっかり”という快適域の広さあるいは走りの質感を比べると見劣りする。

300 dで十分ではあるが、快適性と走行性能の両立を考えた費用対効果では悩ましい問題である。

3列目シートは?

3列シートで乗車定員は7名。サードシートに大人が座るにはセカンドシートを前方にセットする必要がある。

それでも着座姿勢は膝を抱える、いわゆる体育座りに近く、サードシートの実用性は短時間の緊急用でしかない。

標準装備される3列目シートは可倒式。フレキシブルなシートアレンジが可能。

もっとも、SUVの3列シート車で実用的なサードシートを備えるモデルはなく、GLEクラスはまだ使えるほうだ。ただ、セカンドシートのスライド機構は客室/荷室のバランスを積載量に応じて加減できるので、アウトドアレジャー趣味に使うには有り難い機能である。

GLE 300 dの走行性能やキャビン機能を総合的に判断するなら、アウトドア趣味に適した上級SUVとなる。

WLTC総合モード燃費は12.5km/L、同じく高速道路モードでは14.2km/Lであり、同クラスでは燃料コストも良好。SUVの雰囲気を楽しむにもいいが、SUVらしく使うためのバランスのよさが見所である。

ベンツらしさが魅力

ただし、アウトドア趣味のRVとして適した性能や使い勝手を求めるなら、1000万円近い予算建ては不要。

GLEクラスは適応用途としてレジャー向けの正統派SUVだが、それだけで選ぶには費用対効果は低い。

3列目シートは格納可能。2列目のバックレストも倒すことができる。荷室は最大1928L。

走りの信頼、安全&運転支援機能やインフォテインメントの先進性などのベンツ車に共通した価値へ意義を見出してこその投資効果である。

外しがないから「先ずメルセデスありき」であり、価格に見合った価値を提供するから「メルセデスに掘り出し物なし」。

結局、至極真っ当な商売をしているのだが、それも含めて信頼と良識。それをアウトドア趣味で充実したプライベートライフに展開したのがGLE 300 d。

「今流行りの……」という視点ではなく、ベンツ車らしく真面目にSUVを楽しむユーザーに向けた真面目なSUVなのである。

メルセデス・ベンツGLE 300 d 4マティック スペック

価格:940万円
全長:4940mm
全幅:2020mm
全高:1795mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:12.5km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:2350kg
パワートレイン:1949cc直4ディーゼル・ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:245ps/4200rpm
最大トルク:51.0kg-m/1600-2400rpm
ギアボックス:9速オートマティック

4世代目となる新型。最新技術と装備を搭載するプレミアムSUVとなった。