2020年1月10日に『パラサイト 半地下の家族』が公開されるポン・ジュノ監督。同作品は、第72回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、公開を楽しみにしている方も多いのでは? 今回は、Filmarks内で人気のポン・ジュノ監督のおすすめ作品10本をまとめてご紹介。

『ほえる犬は噛まない』(2000)

今や世界的ヒット作を多数生み出す名監督ポン・ジュノの記念すべき劇場映画デビュー作。

中流家庭が暮らす閑静なマンションで、飼い犬が次々と失踪する事件が起こる。経理を担当するさえない女性・ヒョンナム(ペ・ドゥナ)と、出産間近の妻に虐げられながら大学教授のポストを目指すさえない男性・ユンジュ(イ・ソンジェ)二人の視点を通して、シュールな笑いを交えながら飼い犬失踪事件を描いたブラックコメディ。

本作は第19回ミュンヘン国際映画祭 新人監督賞をはじめとする多数の賞を受賞。主演のペ・ドゥナは本作が出世作となり、その後の出演作で多数の映画賞を受賞している。

『殺人の追憶』(2003)

長編作品2作目にして韓国のみならず世界的大ヒットを記録し、ポン・ジュノ監督の名を世に知らしめた一作。韓国映画の魅力を世界に広めるきっかけの作品とも評されている。韓国で実際に起きた未解決連続殺人事件に基づく戯曲を原作とし、緻密な脚本とリアルな演出、緊張感あふれる映像で実写化した。

1986年、ソウル近郊の農村で、若い女性の変死事件が発生。地元の刑事パク・トゥマン(ソン・ガンホ)は、ソウル市警から来たソ・テユン(キム・サンギョン)とウマがあわないままコンビを組んで捜査にあたり、やがて有力な容疑者にたどり着くのだが……。

韓国のアカデミー賞と称される第40回大鐘賞で最優秀作品賞を受賞したほか、数々の映画賞に輝き、複数の国際映画祭で上映された。音楽は岩代太郎が担当。

『グエムル -漢江の怪物-』(2006)

異色コメディ、本格派サスペンスと毛色の異なるヒット作を生み出したポン・ジュノ監督が次に挑んだのは、謎の巨大怪物が人々を襲うパニック・エンタテイメント。

ソウルを流れる漢江に突如謎の巨大怪物が出現、休日を楽しんでいた人々を次々に襲う。河川敷で売店を営む男性カンドゥ(ソン・ガンホ)の娘・ヒョンソ(コ・アソン)も怪物に捕まり水中へ連れ去られてしまう。頼りない父親だったカンドゥは、娘を救うために怪物と闘うこととなる。

主演は、韓国を代表する俳優の一人であるソン・ガンホ。ポン・ジュノ監督とは『殺人の追憶』に続いてのタッグとなった。妹のナムジュ役は『吠える犬は噛まない』で主演を飾ったペ・ドゥナが務めた。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどを手掛けたWETAデジタルが怪物のデザインを担当し、斬新な映像と巧みな演出で、従来のパニックムービーの常識を超越した、ポン・ジュノ監督の手腕が光る仕上がりとなっている。

『南極日誌』(2005)

南極を目指す韓国の探検隊たちが不可解な事件に見舞われるさまを壮大なスケールで描いたアドベンチャー・スリラー。監督はイム・ピルソンが務め、ポン・ジュノは共同で脚本を担当した。

チェ・ドヒョン隊長(ソン・ガンホ)率いる6人の南極探検隊たちは、南極到達不能点へ向けて必死に歩を進めていた。旅の途中で80年前に遭難した探検隊の日誌を発見するが、その後、予測不能の出来事が彼らを襲う。

ソン・ガンホ、ユ・ジテら豪華キャストが名を連ね、南極に挑む探検隊を体当たりで熱演。音楽は『めぞん一刻』『らんま1/2』などアニメ作品を多数手掛ける川井憲次が担当した。

『TOKYO!』(2008)

世界で活躍する3人の監督、ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノが、それぞれの視点で東京を描いたオムニバス作品。ポン・ジュノは『シェイキング東京』を手掛けた。

10年間引きこもり続けている男性(香川照之)は、ピザ屋の女性(蒼井優)に恋をする。彼女がピザ屋を辞めたことを知った男性が意を決して外に出ると、東京は信じられない事態に陥っていた。

三者三様の独特の世界観が味わえる本作は、第61回 カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に出品された。

『母なる証明』(2009)

ポン・ジュノの3年ぶりとなる長編作品は、息子のために奔走する母の姿を描いたサスペンス超大作。

早くに夫に先立たれたヘジャ(キム・ヘジャ)は、一人息子のトジュン(ウォンビン)と慎ましく暮らしていた。ある日女子高生が殺害される事件が起き、トジュンは殺人容疑で逮捕されてしまう。警察も弁護士も頼りにならないと悟ったヘジャは、自らの手で息子の無実を証明しようとする。

ウォンビンの兵役復帰後第1作であり、“韓国の母”と称される大女優・キム・ヘジャの出演も大きな話題となった。第4回アジア映画祭作品賞受賞のほか、第62回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で上映されるなど、各国の映画祭で好評を博した。

『スノーピアサー』(2013)

フランスのグラフィックノベルを実写化。韓国・アメリカ・フランスの合作で、ポン・ジュノ初の英語作品となった。氷河期に見舞われた近未来、人類の生き乗りを乗せた列車で繰り広げられる抗争を描いたSFエンターテインメント。

時は2031年、かつて地球温暖化防止のために使われた薬品により、地球は再び氷河期に突入していた。生き残った人々が乗り込む列車“スノーピアサー”では、前方車両の富裕層たちが列車を支配し、列車後方の貧しい人々は奴隷のような扱いを受けて辛酸をなめていた。ある日、カーティス(クリス・エヴァンス)という男性が、理不尽な支配から逃れるために反乱を起こす。

クリス・エヴァンス、ティルダ・スウィントン、ジェイミー・ベルなど、欧米の豪華キャストを迎え入れ、本編の多くが英語で撮影された。ポン・ジュノ作品の常連であるソン・ガンホもメインキャストとして出演。

『海にかかる霧』(2014)

テチャン号事件の戯曲化作品を、ポン・ジュノのプロデュースで実写化。『殺人の追憶』で脚本を担当したシム・ソンボの初監督作品となる。密航に手を染めた漁船乗組員たちの行方を描いた、極上の骨太サスペンス。

不況にあえぎ金策に走る漁船乗組員たちは、やむなく密航者たちを乗船させる。密航者を乗せて運ぶだけのはずが、捜査船や悪天候に見舞われ、予測不能の事態へと追い込まれていく。

元アイドルグループのメンバー・ユチョン(パク・ユチョン)の映画デビュー作であり、本作で第51回大鐘賞新人男優賞など多数の賞を受賞した。

『オクジャ okja』(2017)

ポン・ジュノ監督がプランBエンターテインメントとタッグを組んで手掛けたNetflixオリジナル作品。謎の巨大生物と静かに暮らす少女が、現代社会の闇と私利私欲に巻き込まれながらも奮闘していくさまを描く。

少女ミジャ(アン・ソヒョン)は、大きな謎の動物オクジャと山村で平穏な生活を送っていた。しかし、ある大企業の計画によってオクジャは連れ去れてしまう。ミジャはオクジャを救うためにニューヨークへと向かう。

欧米キャストはリリー・コリンズ、ジェイク・ギレンホールら豪華俳優陣が名を連ねる。第70回カンヌ国際映画祭でネット配信作として初めてコンペティション部門に出品され、話題と波紋を呼んだ。

『パラサイト 半地下の家族』(2019)

第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画史上初となるパルム・ドールに輝いた、ポン・ジュノ監督の待望の最新作。貧困層と富裕層との交錯を描いた予測不能の人間ドラマ。ポン・ジュノとは4度目のタッグとなるソン・ガンホが主演を務める。

家族全員が失業中で半地下の住宅で貧しい暮らしを送るキム一家。ひょんなことから裕福なパク家の家庭教師として働くことになった長男のギウ(チェ・ウシク)は、妹のギジョン(パク・ソダム)も家庭教師としてパク家に招き入れることに成功。ギジョンはある計画を企て、キム家は徐々にパク家に“パラサイト”していく……。

ネタバレ厳禁と謳われる本作、衝撃の展開から目が離せない。2020年1月10日公開予定、一部の劇場では2019年12月27日より先行上映が実施されている。

【文・ココネコ】

※本記事で紹介する映画は国内最大級の映画レビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」のデータに基づいてセレクトしたものです。